なんやかんやで蘇っちゃったので異世界でアイドルになる事にしました

氷華

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第17話

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どうしてこの曲を選んだんだろうか。

それは僕自身もわからない。

ただ、いつもこの曲を聴いているアイツが。

アイツだったら、この曲を。

どんな風に演奏するのか。

純粋に疑問に思ったから。

この曲をリクエストしたのかもしれない。




〆◼️〆◼️〆◼️〆




「シュウゴが好きな曲だ。いいねぇ、久しぶりにやろうよ」

フワフワした茶髪の青年が言った。

「そうですね。アップにしては激しめですが、リクエストですしね」

メガネで制服は模範解答通り。
いかにも優等生みたいな青年も賛成していた。

「ハハッ、良いじゃぁねか」

褐色肌の青年は意気揚々にベースを構える。

「んじゃ、これでいくか。各自好きなようにアレンジしていいからな。ただし、互いの音をよく聞けよ。ぶっ壊したりしたら許さねぇから」

シュウゴもギターを構えた。

「1、2、3」

カウント終了と共に大きな音の塊が耳を震わせた。

MEで聴いた時とは違い、確かにアレンジが入っていた。
しかも、綺麗に互いの音を壊さないように。

なんだろう。
MEで聴いた時より、ずっとずっと上手く感じる。
それに、なんか。

「楽しい」




〆◼️〆◼️〆◼️〆




「おい、どうだった?」

いつのまにか曲が終わっていた。
まだ耳に残っている音はひたすらさっきまで演奏していたアレンジ曲を繰り返していた。

「、、、いい」

「本当!?ふふん、姫ちゃんに褒められタァ!」

食らいつくように顔を近づけてきたフワフワ青年は僕に笑顔を向けた。

「あ!そういえば、自己紹介してなかったね」

「そういえば、そうですね。では」

優等生はブレザーのポケットからAIパットを取り出して自己紹介をした。

「僕は1年C組の水条カズヤです。よろしくお願いしますね」

「えっ、あ、え」

「フレカー、交換しましょう」

丁寧に差し出された手にはAIパットが握られてて、フレカーの交換画面が表示されていた。

拒否したらなんかめんどくさそうなことになりそうだったから、大人しく自分もAIパットを取り出して交換する。

《フレンドカード》ーーーーーーーーーーーーーーーー

【国立楓宮芸能学園学生証】

水条 カズヤ

出席番号)1年C組8番
所属部活)第1学年学級代表委員会
所属チーム)The Crazy Owl
所属事務所)
コメント)
バンドでドラムをしております。
どうぞ宜しくお願い致します。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どうも」

「はいはーい!次は僕だよ!僕は内田ヒカル。姫ちゃんと同じクラスなんだよね。僕とも交換しよ!」

同じ様にAIパットを重ねられた。
この辺りで色々と諦めた。

《フレンドカード》ーーーーーーーーーーーーーーーー

【国立楓宮芸能学園学生証】

内田 ヒカル

出席番号)1年A組2番
所属部活)
所属チーム)The Crazy Owl
所属事務所)
コメント)
最高の音を聞かせてあげる♪

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふふふーん♪姫ちゃんのフレカー、ゲット!」

「最後は俺だな。パット借りるぜ」

強引に奪われてそのままフレカーが交換された。

《フレンドカード》ーーーーーーーーーーーーーーーー

【国立楓宮芸能学園学生証】

鳥海 ヒビキ

出席番号)1年D組11番
所属部活)
所属チーム)The Crazy Owl
所属事務所)
コメント)
ベースやってる。
よろしく。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ほらよ」

投げられて返されたパットを慌てて受け取る。

「俺は鳥海ヒビキ。まぁ、肌の色見りゃわかるかも知んねーが日本とアメリカのハーフだ。正確にはハワイアンだけどな」

手元のAIパットを見る。
フレンドリストに3つ、新しく名前が登録された。
1日に、3つも。

「終わったか?ヒカル」

「うん、終わったよ」

「そうか、じゃ次だな」

そう言うとシュウゴは僕の方をじっと見た。

「、、、何?」

そう聞き返すとニヤリとシュウゴが顔を歪ませた。

『なんかヤバイ!』

頭の中でユキの警告が聴こえて、すぐに扉に向かって逃げようとした。
けど、そんなのお見通しだったらしくアッサリとシュウゴに掴まれ、羽交い締めにされた。

「ハイハイ、逃げない逃げない」

「ヒッ!な、何す、るの」

「こうするの!」

その言葉と共にシュウゴは僕の上半身の服を脱がせた。

「うわぁ!」

「おー、こう見るとしっかり男の身体なんだな」

「返せ!」

「嫌だね。ヒビキー、パス」

パーカーとタートルネックのTシャツは見事に宙を舞い、ヒビキの腕の中に収まった。

「良い感じに改造しろ」

「任せろ」

「ちょっと!ねぇ!」

僕の声なんか届いてなくて、顔を隠せないから必死になって体を縮めていると、裸になった上半身に赤いブレザーが羽織られた。

「寒いのかい?これ着ておきなよ」

腕を通すとカズヤは笑顔を浮かべながら前のボタンを締めてくれた。

「服を改造してる間に、ヒカル」

「ほいほい!おまかあれ!」

「えっ?」

「ハイハイ、姫ちゃん。ここ座って」

椅子に座らされて、後ろにはヒカルが立つ。前には何故か三面鏡を持ったカズヤがいた。

「動かないでね」

「え?」

ヒカルの手にあったのは、銀色の髪切りバサミだった。

「ちょ、っと」

「let's start!」




〆◼️〆◼️〆◼️〆





捕まり、服を剝かれ、髪を切られ、色々とあまりに息の整ったチームワークに計画性を感じつつ、思考を放棄して何も考えない様にしていると、髪を切っていたヒカルの手が止まった。

「ふふん、ジャーン♪」

三面鏡に映っていたのはまぎれもない自分だった。
でも長かった前髪は切り揃えられて左顔を隠す様に流れていた。
カールのかかっていた後髪はストレートにされ、さらに長く肩甲骨あたりまで伸びて1つにまとめられていた。

「な、にこれ」

「せっかく綺麗な顔してんだから隠すなんて勿体ないじゃん。だから、見える様にした。あ、でもミステリアスな感じにしたかったから前髪切り揃えて左に流して顔を隠したの」

「おー、似合ってんな」

「本当にお似合いですよ」

返す言葉も見つからず、呆然としているとちょんちょんと肩を後ろから叩かれた。

「こっちも出来たぜ。着てみろよ」

渡された服はさっき剝かれたもので、パーカーはフードと前のジッパーが取られていた。しかも、無地だったはずの背中には金色の今にも羽ばたこうとしているフクロウが刺繍されていた。
タートルネックの方は逆に中央に下からへそ上ぐらいまでジッパーがつけられていた。

「ほら、着ろよ」

「えっ、あ」

「ったく、着替えも出来ないのかよ。ほらよっ」

カズヤのブレザーを脱がされ、代わりに改造された服を着せられた。

「おぉ、中々」

「これは、、、良いですね」

「姫ちゃん、カッコイイ」

「お前の持ってるヘッドホン似合う様にしたから安心しろよ」

、、、安心できるか!
ふざっけんなよ!
人になにしてんだよ!

『イチ兄が壊れた、、、』

フラリと歩いて帰ろうとすると、再び腕を掴まれる。

「何、もう、帰りたい」

「歌ってけ」

「は?」

「歌ってけよ」

何を言ってるんだか。
散々人で遊んで。

ムカつく。

ムカつくから、歌ってやるよ。

お前らへの仕返しとして、な。
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