なんやかんやで蘇っちゃったので異世界でアイドルになる事にしました

氷華

文字の大きさ
上 下
14 / 61

第10話

しおりを挟む
騒がしい。

校舎に入ってまず初めに思ったことはそれだった。
みんな何かを見て声を上げている。

玄関にはクラス分けの大きなプリントが4枚貼り出されていた。ゆっくりと見ていくと、【1年A組18番 雪村ユウ】と1枚目に書かれていた。

A、か。

『これ、どんな分け方になってるのかな?』

特にないんじゃないかな?
別に、一般入試で入ったわけじゃないし気にしなくて良いよ。

『そうだね』

規則的に並べられた靴箱にはさっき見た自分の出席番号のプレートが差し込まれている。上靴を取り出して外靴を履き替える。

そしてそのまま新入生が歩く方とは違う真逆の方向に向かって歩いた。



〆◼️〆◼️〆◼️〆



「やあ、入学おめでとう」

理事長室に入ると、コー監督から出た第一声がそれだった。
優雅に紅茶を片手に持って。

「、、、朝から呼び出さないでくださいませんか?」

ここにきたのは理由がある。

朝、学園に行こうか僅かに戸惑っていたら、一体いつ登録したのか、AIパットにコー監督からメッセージが届いたのだ。

《学校に来たら理事長室に来なさい》

行かなかったら色々言われそうなのでこうして来たわけだ。

「まぁいいじゃないか。紅茶は好きかい?ミルクと砂糖は?」

話聞かないな、このジジイ。

「、、、レモンとミルクで」

「はいはい。扉の前で立ってないで座りなさい」

言われて部屋の黒革の高級ソファに身を沈める。
カチャリと目の前のテーブルにレモンの浮いたミルクティーが置かれる。

「で、今日は何の御用で?」

「何もないよ」

「は?」

「ただ単純に、君とお茶したかったからだよ。学校に来たら真っ先に屋上へ行くだろうと思ったし、私も入学式には毎年参加しないからね、どうせなら一緒にと思ってね」

「はぁ、そーですか」

「どうでも良さそうだね」

「ええ」

そんな事を言われても、何も思わないし何も感じない。
それはユキも同じだろう。

「『特に興味はないので』」

コー監督の目を見て言ってやった。

「それは、残念だ」

本当に残念そうな顔をしてコー監督は紅茶を飲む。
僕も紅茶に手を付けた。

「美味しい」

自然と溢れてしまった。
おそらくストレートで飲んでも美味しいだろうこの紅茶は、レモンの酸味とそれを壊さないミルクの滑らかさがベストマッチだった。

「この紅茶はね、海外から直接仕入れてるんだよ。昔、映画で撮影に行った時に惚れ込んでしまってね」

海外からって、規格外過ぎる。

「そういえば、クラスはどこになったんだい?」

「A組です」

「それじゃあ、野々宮先生だね」

「野々宮?」

「そう、野々宮レン先生。担当科目は演劇だよ」

よりによって、担任が演劇の先生とかついてないな。
てか、まさか!

「演劇が担任のクラスにしたのはわざとですか?」

そうだとしたら今すぐにでも退学届出してやる!

「それはない。いくらなんでもそこまで私は落ちぶれてないよ。クラス分けは学園のAIがランダムに振り分けるから私がどうとでもできる問題ではないんだよ」

『嘘、、、はついてないかな』

ユキの言葉が響いた。
コー監督の表情を見る限りはユキの言う通り嘘をついている様子はない。

あぁ。
だけど、コー監督の言動は最小限で分かりにくいから、、、。

『イチ兄、流石に勘ぐり過ぎだよ』

そう、だね。

「分かりました。すいません、疑ってしまって」

「いや、いいよ。っと、そろそろ入学式終わる頃だね。この後ホームルームがあるから全員各クラスに行くはずだよ。その間に帰りなさい」

「分かりました」

「あぁ、後」

部屋を出て行こうとして扉に手をかけた時、コー監督に呼び止められた。

「たまにお茶会をしようか。連絡したら必ず来なさい。来なかったら「私の次回作に出てもらう」」

もう、なんか慣れたな。

「わかっているならよろしい。では、また明日」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...