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第10話
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騒がしい。
校舎に入ってまず初めに思ったことはそれだった。
みんな何かを見て声を上げている。
玄関にはクラス分けの大きなプリントが4枚貼り出されていた。ゆっくりと見ていくと、【1年A組18番 雪村ユウ】と1枚目に書かれていた。
A、か。
『これ、どんな分け方になってるのかな?』
特にないんじゃないかな?
別に、一般入試で入ったわけじゃないし気にしなくて良いよ。
『そうだね』
規則的に並べられた靴箱にはさっき見た自分の出席番号のプレートが差し込まれている。上靴を取り出して外靴を履き替える。
そしてそのまま新入生が歩く方とは違う真逆の方向に向かって歩いた。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
「やあ、入学おめでとう」
理事長室に入ると、コー監督から出た第一声がそれだった。
優雅に紅茶を片手に持って。
「、、、朝から呼び出さないでくださいませんか?」
ここにきたのは理由がある。
朝、学園に行こうか僅かに戸惑っていたら、一体いつ登録したのか、AIパットにコー監督からメッセージが届いたのだ。
《学校に来たら理事長室に来なさい》
行かなかったら色々言われそうなのでこうして来たわけだ。
「まぁいいじゃないか。紅茶は好きかい?ミルクと砂糖は?」
話聞かないな、このジジイ。
「、、、レモンとミルクで」
「はいはい。扉の前で立ってないで座りなさい」
言われて部屋の黒革の高級ソファに身を沈める。
カチャリと目の前のテーブルにレモンの浮いたミルクティーが置かれる。
「で、今日は何の御用で?」
「何もないよ」
「は?」
「ただ単純に、君とお茶したかったからだよ。学校に来たら真っ先に屋上へ行くだろうと思ったし、私も入学式には毎年参加しないからね、どうせなら一緒にと思ってね」
「はぁ、そーですか」
「どうでも良さそうだね」
「ええ」
そんな事を言われても、何も思わないし何も感じない。
それはユキも同じだろう。
「『特に興味はないので』」
コー監督の目を見て言ってやった。
「それは、残念だ」
本当に残念そうな顔をしてコー監督は紅茶を飲む。
僕も紅茶に手を付けた。
「美味しい」
自然と溢れてしまった。
おそらくストレートで飲んでも美味しいだろうこの紅茶は、レモンの酸味とそれを壊さないミルクの滑らかさがベストマッチだった。
「この紅茶はね、海外から直接仕入れてるんだよ。昔、映画で撮影に行った時に惚れ込んでしまってね」
海外からって、規格外過ぎる。
「そういえば、クラスはどこになったんだい?」
「A組です」
「それじゃあ、野々宮先生だね」
「野々宮?」
「そう、野々宮レン先生。担当科目は演劇だよ」
よりによって、担任が演劇の先生とかついてないな。
てか、まさか!
「演劇が担任のクラスにしたのはわざとですか?」
そうだとしたら今すぐにでも退学届出してやる!
「それはない。いくらなんでもそこまで私は落ちぶれてないよ。クラス分けは学園のAIがランダムに振り分けるから私がどうとでもできる問題ではないんだよ」
『嘘、、、はついてないかな』
ユキの言葉が響いた。
コー監督の表情を見る限りはユキの言う通り嘘をついている様子はない。
あぁ。
だけど、コー監督の言動は最小限で分かりにくいから、、、。
『イチ兄、流石に勘ぐり過ぎだよ』
そう、だね。
「分かりました。すいません、疑ってしまって」
「いや、いいよ。っと、そろそろ入学式終わる頃だね。この後ホームルームがあるから全員各クラスに行くはずだよ。その間に帰りなさい」
「分かりました」
「あぁ、後」
部屋を出て行こうとして扉に手をかけた時、コー監督に呼び止められた。
「たまにお茶会をしようか。連絡したら必ず来なさい。来なかったら「私の次回作に出てもらう」」
もう、なんか慣れたな。
「わかっているならよろしい。では、また明日」
校舎に入ってまず初めに思ったことはそれだった。
みんな何かを見て声を上げている。
玄関にはクラス分けの大きなプリントが4枚貼り出されていた。ゆっくりと見ていくと、【1年A組18番 雪村ユウ】と1枚目に書かれていた。
A、か。
『これ、どんな分け方になってるのかな?』
特にないんじゃないかな?
別に、一般入試で入ったわけじゃないし気にしなくて良いよ。
『そうだね』
規則的に並べられた靴箱にはさっき見た自分の出席番号のプレートが差し込まれている。上靴を取り出して外靴を履き替える。
そしてそのまま新入生が歩く方とは違う真逆の方向に向かって歩いた。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
「やあ、入学おめでとう」
理事長室に入ると、コー監督から出た第一声がそれだった。
優雅に紅茶を片手に持って。
「、、、朝から呼び出さないでくださいませんか?」
ここにきたのは理由がある。
朝、学園に行こうか僅かに戸惑っていたら、一体いつ登録したのか、AIパットにコー監督からメッセージが届いたのだ。
《学校に来たら理事長室に来なさい》
行かなかったら色々言われそうなのでこうして来たわけだ。
「まぁいいじゃないか。紅茶は好きかい?ミルクと砂糖は?」
話聞かないな、このジジイ。
「、、、レモンとミルクで」
「はいはい。扉の前で立ってないで座りなさい」
言われて部屋の黒革の高級ソファに身を沈める。
カチャリと目の前のテーブルにレモンの浮いたミルクティーが置かれる。
「で、今日は何の御用で?」
「何もないよ」
「は?」
「ただ単純に、君とお茶したかったからだよ。学校に来たら真っ先に屋上へ行くだろうと思ったし、私も入学式には毎年参加しないからね、どうせなら一緒にと思ってね」
「はぁ、そーですか」
「どうでも良さそうだね」
「ええ」
そんな事を言われても、何も思わないし何も感じない。
それはユキも同じだろう。
「『特に興味はないので』」
コー監督の目を見て言ってやった。
「それは、残念だ」
本当に残念そうな顔をしてコー監督は紅茶を飲む。
僕も紅茶に手を付けた。
「美味しい」
自然と溢れてしまった。
おそらくストレートで飲んでも美味しいだろうこの紅茶は、レモンの酸味とそれを壊さないミルクの滑らかさがベストマッチだった。
「この紅茶はね、海外から直接仕入れてるんだよ。昔、映画で撮影に行った時に惚れ込んでしまってね」
海外からって、規格外過ぎる。
「そういえば、クラスはどこになったんだい?」
「A組です」
「それじゃあ、野々宮先生だね」
「野々宮?」
「そう、野々宮レン先生。担当科目は演劇だよ」
よりによって、担任が演劇の先生とかついてないな。
てか、まさか!
「演劇が担任のクラスにしたのはわざとですか?」
そうだとしたら今すぐにでも退学届出してやる!
「それはない。いくらなんでもそこまで私は落ちぶれてないよ。クラス分けは学園のAIがランダムに振り分けるから私がどうとでもできる問題ではないんだよ」
『嘘、、、はついてないかな』
ユキの言葉が響いた。
コー監督の表情を見る限りはユキの言う通り嘘をついている様子はない。
あぁ。
だけど、コー監督の言動は最小限で分かりにくいから、、、。
『イチ兄、流石に勘ぐり過ぎだよ』
そう、だね。
「分かりました。すいません、疑ってしまって」
「いや、いいよ。っと、そろそろ入学式終わる頃だね。この後ホームルームがあるから全員各クラスに行くはずだよ。その間に帰りなさい」
「分かりました」
「あぁ、後」
部屋を出て行こうとして扉に手をかけた時、コー監督に呼び止められた。
「たまにお茶会をしようか。連絡したら必ず来なさい。来なかったら「私の次回作に出てもらう」」
もう、なんか慣れたな。
「わかっているならよろしい。では、また明日」
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