12 / 61
第9話
しおりを挟む
入学することが決まり、まずしたのは中学校への連絡だった。
ハルキさんが連絡して、詳しく説明したらしいが、中卒予定だった僕は会ったこともない校長に呼び出された。
ウンタラカンタラと文句のようなものを聞かされた気がするが、最後には何故かサインと写真を撮られた。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
すぐにあったのが卒業式。
全員参加らしく、嫌々参加せざるおえなかった。時間ギリギリに行って、なるべく教室にいないようにした。式が終わったらホームルームの時間に出ずにすぐ帰ってきた。
、、、あの眼は、キツイな。
完璧に、ユキを嫌ってる眼だ。
気分が悪くなる。
僅かな時間でも、クラスメイトが向けたユキへの視線。
嫉妬、憤怒、それに欲情。
吐き気がするほど、わかりやすい視線だった。
ユキも卒業式の日は一言も喋らなかった。次の日、ボソリと
『、、、気持ち、悪』
と呟いたのを聞いたが、特に追求しようとは思わなかった。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
春休みに入ると、《メイプル》の住宅地区への引越し作業に追われた。
長年ユキが過ごしてきた部屋をユキと相談しながら片付けていく。
その中で、ユキの家族の写真を見つけた。僕とユキにそっくりな、母親だと思う女性と、ダンディーな色気のある父親だと思う男性。
結婚式の写真だろうか。
純白のウエディングドレスと漆黒のタキシードを見つけ身にまとっていた。
これは?持ってく?
『、、、、』
ユキ?
『も、、って、、く』
躊躇っているのだろう。
でも、写真を見てると僕もユキもなんか心が落ち着いた。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
入学の1週間前、《メイプル》の住宅地区へ引っ越した。
荷物は先に送っていたのでアキさんの用意してくれた列車のチケットを使って1人で向かった。
コー監督が用意してくれたのは、学園から徒歩と電車で15分程にある高級高層マンションだった。
部屋には何故かトレーニングルームとスタジオがある付いていて、挙げ句の果てに防音対策バッチリのカラオケ?ルームまであった。
流石にこれにはユキもビックリしたらしく、言葉を失った。
コー監督、これは流石にやり過ぎではないのでしょうか?
〆◼️〆◼️〆◼️〆
そして、入学2日前。
仕立てた制服と一緒にコー監督がやってきた。
「着て見せてくれないかい?」
ニッコリと笑えられては逆らう気も起きず、渋々と袖に腕を通した。
学園の基本制服は、襟が黒の、楓をイメージした赤のブレザーに暗めの紺色ズボン(女性はスカート)だ。ブレザーの中はワイシャツと黒ネクタイか白のタートルネックの長袖Tシャツ、黒ベストは着ても着なくても良い。
まぁ、芸能学園なので制服は好きなように着こなして良いそうだ。
改造もありらしい。
「うん、似合うよ」
僕は、白のタートルネックを選んだ。
その上にはブレザーは着ずに黒のフード付きパーカーを着ている。
顔を隠したかったからだ。
「2日後が楽しみだよ」
「僕は入学式、参加しませんよ」
「ダメだよ、それは。来ないなら次回「次回の映画に出てもらう」」
脅しに使わないでくれないかな、その言葉。
もう、うんざりするよ。
「わかってるなら良いよ。あぁ、これも渡しておかなくてはね」
渡されたのは黒い紐が通された銀色の鍵だった。
「西館の屋上の鍵だよ」
「、、、ありがとうございます」
「入学式、出なくても良いから学園には来なさい。出席登録くらいは初日からしておかないとね」
コー監督はそう言うと、部屋を後にして出て行った。
僕はブレザーの左胸に描かれた校章の楓を見つめる。
葉脈までハッキリ描かれたそれは、何か訴えるような存在感があった。
そのうち、見るのも嫌になってブレザーはタンスの奥にしまい込んだ。
ハルキさんが連絡して、詳しく説明したらしいが、中卒予定だった僕は会ったこともない校長に呼び出された。
ウンタラカンタラと文句のようなものを聞かされた気がするが、最後には何故かサインと写真を撮られた。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
すぐにあったのが卒業式。
全員参加らしく、嫌々参加せざるおえなかった。時間ギリギリに行って、なるべく教室にいないようにした。式が終わったらホームルームの時間に出ずにすぐ帰ってきた。
、、、あの眼は、キツイな。
完璧に、ユキを嫌ってる眼だ。
気分が悪くなる。
僅かな時間でも、クラスメイトが向けたユキへの視線。
嫉妬、憤怒、それに欲情。
吐き気がするほど、わかりやすい視線だった。
ユキも卒業式の日は一言も喋らなかった。次の日、ボソリと
『、、、気持ち、悪』
と呟いたのを聞いたが、特に追求しようとは思わなかった。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
春休みに入ると、《メイプル》の住宅地区への引越し作業に追われた。
長年ユキが過ごしてきた部屋をユキと相談しながら片付けていく。
その中で、ユキの家族の写真を見つけた。僕とユキにそっくりな、母親だと思う女性と、ダンディーな色気のある父親だと思う男性。
結婚式の写真だろうか。
純白のウエディングドレスと漆黒のタキシードを見つけ身にまとっていた。
これは?持ってく?
『、、、、』
ユキ?
『も、、って、、く』
躊躇っているのだろう。
でも、写真を見てると僕もユキもなんか心が落ち着いた。
〆◼️〆◼️〆◼️〆
入学の1週間前、《メイプル》の住宅地区へ引っ越した。
荷物は先に送っていたのでアキさんの用意してくれた列車のチケットを使って1人で向かった。
コー監督が用意してくれたのは、学園から徒歩と電車で15分程にある高級高層マンションだった。
部屋には何故かトレーニングルームとスタジオがある付いていて、挙げ句の果てに防音対策バッチリのカラオケ?ルームまであった。
流石にこれにはユキもビックリしたらしく、言葉を失った。
コー監督、これは流石にやり過ぎではないのでしょうか?
〆◼️〆◼️〆◼️〆
そして、入学2日前。
仕立てた制服と一緒にコー監督がやってきた。
「着て見せてくれないかい?」
ニッコリと笑えられては逆らう気も起きず、渋々と袖に腕を通した。
学園の基本制服は、襟が黒の、楓をイメージした赤のブレザーに暗めの紺色ズボン(女性はスカート)だ。ブレザーの中はワイシャツと黒ネクタイか白のタートルネックの長袖Tシャツ、黒ベストは着ても着なくても良い。
まぁ、芸能学園なので制服は好きなように着こなして良いそうだ。
改造もありらしい。
「うん、似合うよ」
僕は、白のタートルネックを選んだ。
その上にはブレザーは着ずに黒のフード付きパーカーを着ている。
顔を隠したかったからだ。
「2日後が楽しみだよ」
「僕は入学式、参加しませんよ」
「ダメだよ、それは。来ないなら次回「次回の映画に出てもらう」」
脅しに使わないでくれないかな、その言葉。
もう、うんざりするよ。
「わかってるなら良いよ。あぁ、これも渡しておかなくてはね」
渡されたのは黒い紐が通された銀色の鍵だった。
「西館の屋上の鍵だよ」
「、、、ありがとうございます」
「入学式、出なくても良いから学園には来なさい。出席登録くらいは初日からしておかないとね」
コー監督はそう言うと、部屋を後にして出て行った。
僕はブレザーの左胸に描かれた校章の楓を見つめる。
葉脈までハッキリ描かれたそれは、何か訴えるような存在感があった。
そのうち、見るのも嫌になってブレザーはタンスの奥にしまい込んだ。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる