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第4話
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車から降りるとそこには立派なマンションが聳え立っていた。
奥村さんの後に続いて中へと入るとそのままエレベーターに乗り込む。
ボタンを見れば、13階まである事がわかった。
奥村さんは11階を押す。
「部屋は11階ね」
「あ、はい」
「これ、部屋の鍵」
渡されたのは黒い紐が括り付けられた銀色の鍵だった。
「僕の部屋は最上階だから、取り敢えず着替えて、シャワーを浴びてからおいで。慌てなくていいからね」
チン、と音がして扉が開く。
「じゃ、また後で」
そう奥村さんは言うと、エレベーターの扉は閉まった。
部屋?
周りを見ると、エレベーターの前に扉が1つあるだけでだった。
恐る恐る鍵を差し込み、中へ入ると、僕は言葉を失った。
「、、、嘘、でしょ、」
広いのだ、とにかく。
広いリビングに、アイルランドキッチンがあり正面の壁は一面が窓になっていた。
更に部屋は4つほどあり、その1つは寝室になっていた。
ベットの上にはノリの効いた綺麗なシーツが敷かれてある。
これ全部、雪村ユウの物なのか?
まだ、中学生なのに?
いや、恐らく、2年前より前までは家族で暮らしていたんだろう。
そんな形跡がない程片付いているが、家の中の空気がそう言っている。
「、、、、、あ」
1つ思い出した事があった。
車の中で奥村さんに言われた事。
「シリウス、起動」
雪村ユウのAI、シリウス。
家に置いてあると言っていた。
〈おはようございます、マスター〉
声の聞こえてくる方に視線をやると恐らく充電器を兼ね備えてあるだろうスピーカーに刺さっている奥村さんも持っていた薄いスマホがあった。
「、、おはよう、シリウス」
〈元気そうで何よりです〉
「ありがとう」
〈本当に憑依が何事も無く出来て〉
、、、なんだって?
〈全てをお話しいたしましょう〉
〈城崎ユウイチ〉
なんで、知っている?
〈それは簡単な事です〉
「貴方は心が読めるのですか?」
〈ええ〉
〈私はこの世界の創造神です〉
〈私には実体は存在しませんので、今現在はこのシリウスのAIをお借りしています〉
〈この度は私のミスに巻き込んでしまい、大変申し訳ございません〉
ミス?
どれの事だ?
〈初めからご説明させていだだきますので落ち着いてお聞きください〉
〈貴方はこの世界ではない世界からやって来たと思っているでしょう〉
「、、えぇ、まぁ」
〈それは違います〉
は?
何を言ってるんだ?
〈貴方はこの世界で産まれる予定でしたが私のミスで【Hー267太陽系】、、つまり地球のある太陽系におくってしまったのです〉
〈本来なら、貴方は雪村ユウと双子で産まれてくるはずだったのです〉
双子だって!?
その言葉に僕は驚いた。
〈貴方は鏡で自分の顔をご覧になりましたか?〉
「いや、多分そんなには」
入院中も鏡を見る機会があまりなかったしな。
あたりを見るとリビングテーブルに手鏡があったので覗き込む。
茶色の混じった長めの黒髪。
サラサラとしていて甘い香りがする。
白い肌に、女の子見たいな顔立ち。
青が少し入った瞳。
、、、そっくりだ。
まだ、幼さを感じ取れるが基本的はパーツはそっくりだった。
僕、城崎ユウイチに。
瓜二つだった。
この顔は僕はあまり好きじゃない。
初対面の人には必ず女の子に間違われるし、それに色々と危ない目にもあってきた。いつも、大きめのパーカーを着てフードを目元まで深くかぶっていたぐらいだ。
〈理解してくれましたか?〉
「、、、はい」
でも、なんで僕が雪村ユウに?
〈雪村ユウは事故に遭いました〉
〈それは彼を恨んだ他の子役によって引き起こされたものです〉
なんだって?!
単なる偶然じゃないってことか。
〈角材を止めていたチェーンを取り外したのです〉
〈まさか直撃するとは思ってもいなかったのでしょう〉
〈雪村ユウは他の子役や学校のクラスメイトからいじめを受けていました〉
〈その為、いつも心を閉ざして自分を押し殺していました〉
〈彼はそれに力を使い過ぎて、魂をすり減らしていたのです〉
〈意識が戻らなかったのは魂が小さくなり過ぎてしまったからです〉
〈その時、貴方も事故に遭いました〉
〈貴方は元々こちら側の魂〉
〈魂だけがこちらに戻ってきた〉
僕は黙って神の話を聞いた。
〈そこですり減って小さくなってしまった雪村ユウの魂と事故で欠けてしまった貴方の魂を混ぜ合わせたのです〉
〈貴方とユウは双子〉
〈魂は酷似していました〉
〈その合わさった魂をユウの身体に戻したのです〉
聞いていて、納得した。
僕には両親がいなかった。
孤児として育てられた。
引き取り手もいなく、孤児院で名をつけられて人生を過ごした。
「混ぜ合わせたって事は雪村ユウの魂は僕の中にあるって事ですよね」
〈はい〉
〈ですが、言ったように小さな魂ですので長い時間話せるわけではありませんので注意してください〉
「わかりました」
〈最後になりますが、巻き込んでしまった謝罪としまして何か希望はございますか?〉
〈できる範囲でならお答えできます〉
何か希望か。
なんだろうな。
、、、あっ、そうだ。
「じゃあ、前の世界で使ってたMEをください」
ME、【MUSIC every】と言われる小型音楽プレイヤーだ。
孤児院で15の誕生日に貰った。
院にあった曲は片っ端から入れてそれこそ名前の通り毎日聞いていた。
〈わかりました〉
へぇ、出来るのか。
〈この型はこの世界では最新版の2つ前のものです〉
〈4年前に販売されています〉
〈現在は販売されていません〉
まじか。
壊れたらおしまいって事?
〈耐久性を付けておきます〉
〈壊れる事はまずありません〉
〈中の曲は全て削除させて頂きます〉
〈その代わり、この世界の存在する曲全てを入れておきます〉
〈新しい曲が出る度に自動でインストールするようにもしておきます〉
えっ、そんなチート級にしてくれるんですか?!
すると僕の前に光の球体が出来て形を作り、やがて見慣れた青いフォルムのMEに姿を変えた。
「ありがとうございます」
僕は神様に丁寧にお礼をした。
〈いえ〉
〈では、貴方の人生が良いものとなりますように〉
奥村さんの後に続いて中へと入るとそのままエレベーターに乗り込む。
ボタンを見れば、13階まである事がわかった。
奥村さんは11階を押す。
「部屋は11階ね」
「あ、はい」
「これ、部屋の鍵」
渡されたのは黒い紐が括り付けられた銀色の鍵だった。
「僕の部屋は最上階だから、取り敢えず着替えて、シャワーを浴びてからおいで。慌てなくていいからね」
チン、と音がして扉が開く。
「じゃ、また後で」
そう奥村さんは言うと、エレベーターの扉は閉まった。
部屋?
周りを見ると、エレベーターの前に扉が1つあるだけでだった。
恐る恐る鍵を差し込み、中へ入ると、僕は言葉を失った。
「、、、嘘、でしょ、」
広いのだ、とにかく。
広いリビングに、アイルランドキッチンがあり正面の壁は一面が窓になっていた。
更に部屋は4つほどあり、その1つは寝室になっていた。
ベットの上にはノリの効いた綺麗なシーツが敷かれてある。
これ全部、雪村ユウの物なのか?
まだ、中学生なのに?
いや、恐らく、2年前より前までは家族で暮らしていたんだろう。
そんな形跡がない程片付いているが、家の中の空気がそう言っている。
「、、、、、あ」
1つ思い出した事があった。
車の中で奥村さんに言われた事。
「シリウス、起動」
雪村ユウのAI、シリウス。
家に置いてあると言っていた。
〈おはようございます、マスター〉
声の聞こえてくる方に視線をやると恐らく充電器を兼ね備えてあるだろうスピーカーに刺さっている奥村さんも持っていた薄いスマホがあった。
「、、おはよう、シリウス」
〈元気そうで何よりです〉
「ありがとう」
〈本当に憑依が何事も無く出来て〉
、、、なんだって?
〈全てをお話しいたしましょう〉
〈城崎ユウイチ〉
なんで、知っている?
〈それは簡単な事です〉
「貴方は心が読めるのですか?」
〈ええ〉
〈私はこの世界の創造神です〉
〈私には実体は存在しませんので、今現在はこのシリウスのAIをお借りしています〉
〈この度は私のミスに巻き込んでしまい、大変申し訳ございません〉
ミス?
どれの事だ?
〈初めからご説明させていだだきますので落ち着いてお聞きください〉
〈貴方はこの世界ではない世界からやって来たと思っているでしょう〉
「、、えぇ、まぁ」
〈それは違います〉
は?
何を言ってるんだ?
〈貴方はこの世界で産まれる予定でしたが私のミスで【Hー267太陽系】、、つまり地球のある太陽系におくってしまったのです〉
〈本来なら、貴方は雪村ユウと双子で産まれてくるはずだったのです〉
双子だって!?
その言葉に僕は驚いた。
〈貴方は鏡で自分の顔をご覧になりましたか?〉
「いや、多分そんなには」
入院中も鏡を見る機会があまりなかったしな。
あたりを見るとリビングテーブルに手鏡があったので覗き込む。
茶色の混じった長めの黒髪。
サラサラとしていて甘い香りがする。
白い肌に、女の子見たいな顔立ち。
青が少し入った瞳。
、、、そっくりだ。
まだ、幼さを感じ取れるが基本的はパーツはそっくりだった。
僕、城崎ユウイチに。
瓜二つだった。
この顔は僕はあまり好きじゃない。
初対面の人には必ず女の子に間違われるし、それに色々と危ない目にもあってきた。いつも、大きめのパーカーを着てフードを目元まで深くかぶっていたぐらいだ。
〈理解してくれましたか?〉
「、、、はい」
でも、なんで僕が雪村ユウに?
〈雪村ユウは事故に遭いました〉
〈それは彼を恨んだ他の子役によって引き起こされたものです〉
なんだって?!
単なる偶然じゃないってことか。
〈角材を止めていたチェーンを取り外したのです〉
〈まさか直撃するとは思ってもいなかったのでしょう〉
〈雪村ユウは他の子役や学校のクラスメイトからいじめを受けていました〉
〈その為、いつも心を閉ざして自分を押し殺していました〉
〈彼はそれに力を使い過ぎて、魂をすり減らしていたのです〉
〈意識が戻らなかったのは魂が小さくなり過ぎてしまったからです〉
〈その時、貴方も事故に遭いました〉
〈貴方は元々こちら側の魂〉
〈魂だけがこちらに戻ってきた〉
僕は黙って神の話を聞いた。
〈そこですり減って小さくなってしまった雪村ユウの魂と事故で欠けてしまった貴方の魂を混ぜ合わせたのです〉
〈貴方とユウは双子〉
〈魂は酷似していました〉
〈その合わさった魂をユウの身体に戻したのです〉
聞いていて、納得した。
僕には両親がいなかった。
孤児として育てられた。
引き取り手もいなく、孤児院で名をつけられて人生を過ごした。
「混ぜ合わせたって事は雪村ユウの魂は僕の中にあるって事ですよね」
〈はい〉
〈ですが、言ったように小さな魂ですので長い時間話せるわけではありませんので注意してください〉
「わかりました」
〈最後になりますが、巻き込んでしまった謝罪としまして何か希望はございますか?〉
〈できる範囲でならお答えできます〉
何か希望か。
なんだろうな。
、、、あっ、そうだ。
「じゃあ、前の世界で使ってたMEをください」
ME、【MUSIC every】と言われる小型音楽プレイヤーだ。
孤児院で15の誕生日に貰った。
院にあった曲は片っ端から入れてそれこそ名前の通り毎日聞いていた。
〈わかりました〉
へぇ、出来るのか。
〈この型はこの世界では最新版の2つ前のものです〉
〈4年前に販売されています〉
〈現在は販売されていません〉
まじか。
壊れたらおしまいって事?
〈耐久性を付けておきます〉
〈壊れる事はまずありません〉
〈中の曲は全て削除させて頂きます〉
〈その代わり、この世界の存在する曲全てを入れておきます〉
〈新しい曲が出る度に自動でインストールするようにもしておきます〉
えっ、そんなチート級にしてくれるんですか?!
すると僕の前に光の球体が出来て形を作り、やがて見慣れた青いフォルムのMEに姿を変えた。
「ありがとうございます」
僕は神様に丁寧にお礼をした。
〈いえ〉
〈では、貴方の人生が良いものとなりますように〉
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