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スローライフ編
14話【港町ハーフェン】
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月に数回ルーイヒ村へ遊びに行くようになってから、交流への億劫感は徐々になくなりはじめていた。
とはいえ私自身が話すことはあまりなくて、クルトやシェラーの話を聞いていることがほとんど。
それでも森に引きこもっていた頃よりは、つっかえることも減ってきていた。
はじめて村を訪れてから半年後――今度は南西の港町へ行こう、と提案される。
「港町って……ハーフェンですか?」
「さすがに行ったことあるか」
「大丈夫なんでしょうか……」
「もう大分経ってるしなぁ。しかし、なんだかんだでエレノアも12歳か」
「ヒトの成長は早いなー」とのんきなトーンで語るヴァルター。
うーん、この人しっかりしているようで適当なところがかなりあるから心配。
あの町は結構人がいたはず。さすがに危ない気がする。
「それにこんなガバガバな人が同行するわけだし、今行くのは元聖女アピールしているようなものでは――」
「おい、ガバガバとか言うな」
無意識に声に出てしまっていたらしく、前方からいちだんと低い声が聞こえてくる。
見るとその顔には、やや青筋が立っていた。
「……すみません。つい本音が」
「だんだん性格悪くなってくな」
「やっぱり、一緒にいると似てしまうんだと思います」
「ほーう」
彼は腰を折ると、私の額をピンと指で弾く。
いつだかの突っつくだけのとは違ってちょっと痛い。
「暴力反対です」
「昔のエレノアの方が可愛げあったなぁ。甘えてくれんのも可愛かったし」
「『甘えんな』って言ってませんでした……!?」
「あれに限っては、お前が露骨すぎんだよ」
さっきまで仏頂面だった彼は、もう笑顔になっている。
もともと大して怒ってなかったんだろうけど、普段から私がいろいろ言ってもこんな感じだし、心が広いというか器が大きい人だなと思う。
もしかしてアイザックという人も、そんな感じだったんだろうか。どんなお義父さんだったんだろう。
「で、行かないのか?」
「だって、危ないじゃないですか……」
「別に何か起きても、オレがカバーしてやれるけど」
「できれば何も起きない方がいいんですけど」
「よし行くか」
聞いちゃいない。
***
正直、町に出るのが久しぶりすぎて気持ちが高ぶっていたのは確かだ。
だからつい、あのまま流されてしまった。
後悔は……少しだけしている。とはいえもう来てしまった。進むしかない。
何年ぶりかのハーフェンは、思った以上に心地がいい。
立ち並ぶ雪のような白い建物。人々が行き交い大型船も泊まる港の眺めから、漠然と世界の広さを感じさせられた。
両手をいっぱいに広げた私へ、潮風が広々と吹き抜ける。
「気持ちよさそうだな」
振り返るとヴァルターがいつものように、くすくすと笑っている。『来てよかったろ?』と言わんばかりの表情だ。
ふいっと私は顔を逸らした。
「も、もともと海は好きですから」
「そこは素直に頷いときゃいいのに、何で捻くれんだよ」
「ヴァルターがいつもからかってくるから、こう育ったんです……!」
「こうやって15になる頃には可愛げのかけらもなくなるんだな……やだやだ」
「もう! すぐそういうこと言う」
わざとらしく手をひらひらと振る彼に、片頬を膨らませた。
――ふと、彼が立っている背後の建物。
店前の小さな椅子に腰掛けている、愛くるしい顔が視野に入る。
ぽかんと口を開けながらその一点を凝視していると、「ん?」と怪訝な声色が降ってきた。
それを気に留めることもなく、とことこと店先へ向かって歩を進める。
「何かあるのか?」
私がじっと見下ろす先にあるのは、2頭身くらいのウシのぬいぐるみ。
「かわいい……」
「こういうのが好きなのか」
「牧場、いいですよね……」
ひとりごとのように口に出す。
前世で1度だけ行ったことのある場所を思い返していた。実物はもちろん、お土産コーナーにあったぬいぐるみも可愛かった。
あのときは特別好きだと自覚していなかったけど、今になって思えばすごく好みだったことに気がつく。
「言っとくが牛は飼えないぞ」
「わ、わかってます。ただウシとかヒツジとか、牧場にいる動物が好きで」
「ふーん……」
そっけない返事に、これ以上ここで足留めさせるのもよくないかと踵を返す。
――とその直後「店主」と呼びかける声が耳に入った。
「これ、いくらですか?」
呼びかけた店の男性と勝手に話を進めている光景に、私は呆然と立ち尽くしていた。
え、え……買ってる?
「これ、妹にあげるから。お前が持っててくれ」
――あ。そっか、今は男装してるんだった。
だからか。そういう設定か。
「わ、わかりました」
椅子からウシのぬいぐるみを抱え込む。
私の胴体と同じくらいの大きさのそれは、想像以上にふかふかしていて抱き心地がいい。
お店から離れたところで、私は小さく頭を下げた。
「あの、ありがとうございます」
「露骨にねだってたからなぁ」
「そんなつもりはなかったですけど……!」
「はは、冗談」
からかい口調で相変わらずではあるけれど、さりげなく気を配ってくれるこういうところ、すごいなと思うし嬉しい。
***
ハーフェンで一番人気だという食堂は、行列がすさまじくて入れる気がしなかった。
魚介のスープが絶品だと聞いて、せっかく来た記念に食べていきたかったけど……おなかがすきすぎて、そうも言ってられない。
その店がある場所とは別の、海に面した通りに並び立つ食堂から、同じく魚介スープがウリのところを選んだ。
お昼時なので人は多かったけれど、何席かは空いていた。
テーブル席に対面で座り、注文内容は決まっていたため店員さんにさっと伝えた。
私に魚介スープを懸命に推してきた当のヴァルターは食堂に入ってから終始、目を輝かせている。
口を結び、必死に隠しているようだがバレバレだ。こんな顔はじめて見た……。
「ヴァルターって意外と素直じゃないですよね」
小さく笑うと、彼の顔つきがムスッとしたものに変わる。
「何だよ急に。ホント失礼に育ってくな」
「すみません、そうじゃなくて……ぼくの前でくらい、隠さなくてもいいのにと思って」
「……いやだよ。あんま子供っぽいところ見たいと思うやつ、いないだろ」
さっきまでとは打って変わり、彼はどこか恥じらうように目線を逸らし、口元を手で覆う。
こ、これは……私のことを意識してくれていると。そういう解釈でいいのかな!
意気揚々と両手をテーブルに打ちつける。卓上の氷水が揺れ、涼やかな音が鳴る。
同時に彼がビクッと身体を震わせた。
「大丈夫です。ぼく、どんなヴァルターも見たいので」
「……お前のテンションの変わりようが怖いよ」
一気に項垂れ、テーブルに突っ伏す。
どうしてこういうオチがついてしまうのか、アプローチが下手すぎるのかな……。
そうこうしている間に注文した料理が運ばれてきて、それを見るなり私もヴァルターも目が輝いた。
先程までのやりとりなど、多分お互いに吹き飛んでいる。
エビや貝類が入った、赤とクリーム色が混じるトマトスープ。
ふーふーと冷ましながら、スプーンを口元へ運ぶ。
これは……おいしいっ!
その直後、隣に置かれていたセットの肉野菜炒めが視界に入った。
――あ、これは。
「ピーマン、残すなよ」
先手を打つかのように釘を刺された。
……前世から、ピーマンだけは苦手だ。子供舌だと言われようとも、苦手なものは苦手。どう頑張っても食べられない。
「ム、ムリです」
「店でくらい、残すなよ?」
笑顔で『いつまでも子供みたいなこと言うな』と圧をかけられている気がした。
視線が泳ぐ。冷や汗が頬を伝う。
「……まだ12歳ですもん」
「そういう減らず口ばっか覚えて……ったく」
彼は溜息をつき、あきらめたように再びスープを飲みはじめた。
とはいえ私自身が話すことはあまりなくて、クルトやシェラーの話を聞いていることがほとんど。
それでも森に引きこもっていた頃よりは、つっかえることも減ってきていた。
はじめて村を訪れてから半年後――今度は南西の港町へ行こう、と提案される。
「港町って……ハーフェンですか?」
「さすがに行ったことあるか」
「大丈夫なんでしょうか……」
「もう大分経ってるしなぁ。しかし、なんだかんだでエレノアも12歳か」
「ヒトの成長は早いなー」とのんきなトーンで語るヴァルター。
うーん、この人しっかりしているようで適当なところがかなりあるから心配。
あの町は結構人がいたはず。さすがに危ない気がする。
「それにこんなガバガバな人が同行するわけだし、今行くのは元聖女アピールしているようなものでは――」
「おい、ガバガバとか言うな」
無意識に声に出てしまっていたらしく、前方からいちだんと低い声が聞こえてくる。
見るとその顔には、やや青筋が立っていた。
「……すみません。つい本音が」
「だんだん性格悪くなってくな」
「やっぱり、一緒にいると似てしまうんだと思います」
「ほーう」
彼は腰を折ると、私の額をピンと指で弾く。
いつだかの突っつくだけのとは違ってちょっと痛い。
「暴力反対です」
「昔のエレノアの方が可愛げあったなぁ。甘えてくれんのも可愛かったし」
「『甘えんな』って言ってませんでした……!?」
「あれに限っては、お前が露骨すぎんだよ」
さっきまで仏頂面だった彼は、もう笑顔になっている。
もともと大して怒ってなかったんだろうけど、普段から私がいろいろ言ってもこんな感じだし、心が広いというか器が大きい人だなと思う。
もしかしてアイザックという人も、そんな感じだったんだろうか。どんなお義父さんだったんだろう。
「で、行かないのか?」
「だって、危ないじゃないですか……」
「別に何か起きても、オレがカバーしてやれるけど」
「できれば何も起きない方がいいんですけど」
「よし行くか」
聞いちゃいない。
***
正直、町に出るのが久しぶりすぎて気持ちが高ぶっていたのは確かだ。
だからつい、あのまま流されてしまった。
後悔は……少しだけしている。とはいえもう来てしまった。進むしかない。
何年ぶりかのハーフェンは、思った以上に心地がいい。
立ち並ぶ雪のような白い建物。人々が行き交い大型船も泊まる港の眺めから、漠然と世界の広さを感じさせられた。
両手をいっぱいに広げた私へ、潮風が広々と吹き抜ける。
「気持ちよさそうだな」
振り返るとヴァルターがいつものように、くすくすと笑っている。『来てよかったろ?』と言わんばかりの表情だ。
ふいっと私は顔を逸らした。
「も、もともと海は好きですから」
「そこは素直に頷いときゃいいのに、何で捻くれんだよ」
「ヴァルターがいつもからかってくるから、こう育ったんです……!」
「こうやって15になる頃には可愛げのかけらもなくなるんだな……やだやだ」
「もう! すぐそういうこと言う」
わざとらしく手をひらひらと振る彼に、片頬を膨らませた。
――ふと、彼が立っている背後の建物。
店前の小さな椅子に腰掛けている、愛くるしい顔が視野に入る。
ぽかんと口を開けながらその一点を凝視していると、「ん?」と怪訝な声色が降ってきた。
それを気に留めることもなく、とことこと店先へ向かって歩を進める。
「何かあるのか?」
私がじっと見下ろす先にあるのは、2頭身くらいのウシのぬいぐるみ。
「かわいい……」
「こういうのが好きなのか」
「牧場、いいですよね……」
ひとりごとのように口に出す。
前世で1度だけ行ったことのある場所を思い返していた。実物はもちろん、お土産コーナーにあったぬいぐるみも可愛かった。
あのときは特別好きだと自覚していなかったけど、今になって思えばすごく好みだったことに気がつく。
「言っとくが牛は飼えないぞ」
「わ、わかってます。ただウシとかヒツジとか、牧場にいる動物が好きで」
「ふーん……」
そっけない返事に、これ以上ここで足留めさせるのもよくないかと踵を返す。
――とその直後「店主」と呼びかける声が耳に入った。
「これ、いくらですか?」
呼びかけた店の男性と勝手に話を進めている光景に、私は呆然と立ち尽くしていた。
え、え……買ってる?
「これ、妹にあげるから。お前が持っててくれ」
――あ。そっか、今は男装してるんだった。
だからか。そういう設定か。
「わ、わかりました」
椅子からウシのぬいぐるみを抱え込む。
私の胴体と同じくらいの大きさのそれは、想像以上にふかふかしていて抱き心地がいい。
お店から離れたところで、私は小さく頭を下げた。
「あの、ありがとうございます」
「露骨にねだってたからなぁ」
「そんなつもりはなかったですけど……!」
「はは、冗談」
からかい口調で相変わらずではあるけれど、さりげなく気を配ってくれるこういうところ、すごいなと思うし嬉しい。
***
ハーフェンで一番人気だという食堂は、行列がすさまじくて入れる気がしなかった。
魚介のスープが絶品だと聞いて、せっかく来た記念に食べていきたかったけど……おなかがすきすぎて、そうも言ってられない。
その店がある場所とは別の、海に面した通りに並び立つ食堂から、同じく魚介スープがウリのところを選んだ。
お昼時なので人は多かったけれど、何席かは空いていた。
テーブル席に対面で座り、注文内容は決まっていたため店員さんにさっと伝えた。
私に魚介スープを懸命に推してきた当のヴァルターは食堂に入ってから終始、目を輝かせている。
口を結び、必死に隠しているようだがバレバレだ。こんな顔はじめて見た……。
「ヴァルターって意外と素直じゃないですよね」
小さく笑うと、彼の顔つきがムスッとしたものに変わる。
「何だよ急に。ホント失礼に育ってくな」
「すみません、そうじゃなくて……ぼくの前でくらい、隠さなくてもいいのにと思って」
「……いやだよ。あんま子供っぽいところ見たいと思うやつ、いないだろ」
さっきまでとは打って変わり、彼はどこか恥じらうように目線を逸らし、口元を手で覆う。
こ、これは……私のことを意識してくれていると。そういう解釈でいいのかな!
意気揚々と両手をテーブルに打ちつける。卓上の氷水が揺れ、涼やかな音が鳴る。
同時に彼がビクッと身体を震わせた。
「大丈夫です。ぼく、どんなヴァルターも見たいので」
「……お前のテンションの変わりようが怖いよ」
一気に項垂れ、テーブルに突っ伏す。
どうしてこういうオチがついてしまうのか、アプローチが下手すぎるのかな……。
そうこうしている間に注文した料理が運ばれてきて、それを見るなり私もヴァルターも目が輝いた。
先程までのやりとりなど、多分お互いに吹き飛んでいる。
エビや貝類が入った、赤とクリーム色が混じるトマトスープ。
ふーふーと冷ましながら、スプーンを口元へ運ぶ。
これは……おいしいっ!
その直後、隣に置かれていたセットの肉野菜炒めが視界に入った。
――あ、これは。
「ピーマン、残すなよ」
先手を打つかのように釘を刺された。
……前世から、ピーマンだけは苦手だ。子供舌だと言われようとも、苦手なものは苦手。どう頑張っても食べられない。
「ム、ムリです」
「店でくらい、残すなよ?」
笑顔で『いつまでも子供みたいなこと言うな』と圧をかけられている気がした。
視線が泳ぐ。冷や汗が頬を伝う。
「……まだ12歳ですもん」
「そういう減らず口ばっか覚えて……ったく」
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