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episode W . エディとココの場合 / 館でデート
Edouard & Claude 008. 天使の涙
しおりを挟む「ーーーー」
ここには居ない誰かの名前。
それを言って、エドガーは泣きだした。
もうずっと前から泣きだしそうになっていたのであるが、今急に心の中で何かぷつりとちぎれたような気がしたのである。
「ーーーー」
彼は涙ながらこの終わりのことばを言った。涙は止めどなくその眼からほうり落ちるのであった。
そして、エドガーは性奴隷としてあるまじきことをしたと、
後悔の雲に呑まれてしまいそうになった最中に、
「私はあなたが呼んでくださるのを、今か今かと待ってました」
と言う、すこし甘ったるいくらい優しい男の声が聞こえた。
それがいかにも愛情に溢れた、心配らしい言い方であった。
声の主は、エディだった。
館に来る前から、エドガーを心から気に入っていたエディはネットで新聞のバックナンバーを読み、彼の事情を知っていたのだ。
「なあ、可愛い天使、」
温かな声がひとつふたつ
「誰がお前をとがめられましょう? 誰がお前の愛情を鼻にかけられましょう?」
「せっかく身も世もあらず嘆き悲しんでいるところへめぐりあわしたんです。慰めさせてくださいな」
「さあ、今、この手を接吻しますよ。外側も内側もね、」
エドガーはその手を差し出したまま、神経的で、ひびきの高い、美しい声を立てながら、泣いた。
どうやら、エドガーはそんな風に自分の手を接吻されるのが気持よさそうであった。
「もう泣かないでいらっしゃい。わたしがいいようにしてあげますからね。」
旅人が、止めていた腰の律動を再開した。
大きなペニスでぐるりとエドガーのアヌスを撫で、
どうかその性感帯から全身へ快楽の波が行き渡るようにと、やさしくやさしく。
「ぁぁ…ぁぁ…ぁぁ…」
だんだんと安心感を覚えてきたエドガーの喉は、
消魂しくアァぁぁンー!!と鳴る。
いつの間にか、ココとエディも恋人たちのセックスを始めていた。
「アァぁぁー、ぁぁ!!」
慣れ親しんだペニスを差し込まれたエディの快楽は、疑いもなくエドガーの快楽の反映であり、囚われた感覚に刺激されたものであった。
「アァぁぁー、エドガー…」
エディは柳のようにしなやかな手で隣で半ば半狂乱に喘ぐエドガーの手を握りしめた。
すると、エドガーが甘えたいみたいにエディに身を寄せてきた。
「ぁぁ…ぁぁ…、僕のような者でも、あなたはおさげすみになりませんでした。ほんとにお優しい、立派な旦那さま…」
「おいで」
エドガーとエディはそれぞれ、アヌスを逞しく頼りがいのあるペニスで満たしながら
華奢な肉体で
抱き合い形のない仕草と息と汗を分け合い、
数分間目を閉じてお祈りをした。
その後も、四人は、
真っ白な麻のシーツで相手を変え、趣を変え、
時折飲み物と果物で休憩をとり、
何度も何度も、セックスをした。
窓の外がすっかり暗くなったころに、
漸くセックスパーティーがお開きとなり、
三人の旦那さま方は、館のスパとディナーを楽しむためにガウンを整え立ち上がった。
エドガーは、仮眠をとりながら職員の迎えを待とうと、
その身を横たえたが
意識は全く確かで、
顔にはかなり疲労の色が浮かんでいたが、晴れ晴れして、ほとんど喜ばしそうにさえもうかがわれた。
ココが退室すべく、ドアノブを回す。
「さようなら、私たちのの天使、」
彼らの顔には未来に対する信仰と光明が満ち溢れていた。
夜。
ココの部屋には柔らかな灯りが灯っていた。
薄暗い部屋で、恋人たちは充実した表情で寝床につこうかといところ。
「そういえば」
寝間着姿のエディがふと思いだし、革の鞄から小さなモニターを取り出した。
それは、エドガーが精一杯に恥ずかしい姿を見せてくれたあのステージに設置されていたもので
美しい森の映像と小鳥の鳴き声、それに、アヌスを公開調教されているエドガーの動画が収録されている。
館からのちょっとしたお土産だった。
大きな顔にローションをはたき熱心にスキンケアをしているココを他所に、
エディは電源が落とされたモニターの黒い画面に反射する自分の顔を眺めながら
「あの子気に入ったなぁ。次の予約も入れよう。
幸せにしてあげたいなぁ」
と、呟いた。
性奴隷の向上の途上の過渡期に関わるというのは、どの旦那さまにも共通する幸福であるが、
恋人と共有できるとなると、それは無限の夢になる。
ココは、エディの手からモニターを剥ぎ取りソファへ無造作に置くと、
スキンケアしたての艶々の唇で恋人の頬を撫でた。
この時刻では人通りも途絶えた道を、
旅人は急ぎ足に歩いて行く。
ふと、目に留まったゴミ箱に、土産のモニターが入った薔薇色の封筒を放り投げた。
「あんなにも美しい哀しみの実体に触れたら、こんなもの、なんの役にも立たぬ」
明日は百代の過客にして、
行きかふ年も
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ーー芭蕉
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