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第二章
五話 嫌な予感…
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いや殺すだろ、殺さない、絶対に殺そうとするだろう、殺さないの問答を数分繰り返したのち、落ち着いた俺は爺さんの話を聞いた。
爺さんの主張によれば、俺を攻撃したのはある疑惑の真偽を図りたかったらしい。「ある疑惑?」と頭を捻る俺に爺さんは少し前の実例を持ち上げる。
「お主と篠崎が巻き込まれた騒動があったじゃろう。その後、わしとミィは西山高等学校に潜伏しておった」
「……! もしかして、黒幕を捕まえるためか?」
問いかけに対し、首を縦に振り肯定した爺さんは、文言を付け加える。
「名前はsihana=reverse。我々に相反する異能力者集団。『執行人殺し』の一人であり、お前さんのクラス担任の平良県西が黒幕じゃった」
「………はあ!? ちょっと待て!! あのクソ教師が犯人だったのかよ!!」
新しいクラスになってめっちゃはしゃいでると思ったらバレないように演じてたのか。
言われてみれば納得がいった。行方不明になって案じていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
ーーー生徒が聞いたら卒倒する事実を軽い感じで言うなよ。ってか、正体がバレたので学校から逃げ出したなんて、、言えるわけないか。
俺はたて続けに質問する。
「執行人殺しっていうのは…」
「そのまんまじゃ。わしら執行人をよく思わんやつもいる、そいつらが力を持って暴れている集団のことじゃよ」
「なんでそいつらがうちの学校に……」
爺さんの説明に懐疑をとぼすと、「それは掴めんかった」と苦渋をなめる台詞を吐きながら、彼は口説を言立てる。
「万全な準備で迎え撃った筈だったんじゃがのぉ。敵の力を見誤っておったのが原因じゃろう、魔道具で空間を乖離して敵に逃げ場を無くすつもりが、奴はそれも承知で次元を抜けて今空間に戻り姿を消した。場所が崩壊されたからわしとミィもこの空間に戻ってくるのに苦労したわい。先手を打ったつもりがやつの方が一枚上手だったのが惜しいのぉ。これなら魔道具を使って身構えるんじゃなく、先制攻撃を仕掛けるべきだった。魔道具はやっぱり使ー」
「い、一旦待ってくれ!」
ーーー長い、長過ぎるわ! 専門用語をブワッと言われても理解できるもんも理解できねんだよ!! お年寄りが話したがりって言うのもこれで納得したわ!
ピキピキ、と青筋を浮かばせて怒った俺は、「分かりやすく説明しろ」と声を荒げる。
それを聞いて爺さんは、
「んー、…………敵に逃げられた上に返り討ちに遭った、じゃな」
「そうかそうか、、ってダメじゃん! 逃したのかよ。………それが俺を襲った事とどう関係しているんだ?」
気難しい単語を並べて言い訳をしていた爺さんは、俺が肝心なことを尋ねると、今度はすんなり答えてくれた。
「お主の存在が鍵だと、奴は言っておった」
「鍵?」
「よくわからんが、『執行人殺し』の中でお主は重要な役割があるらしい。しばらく前の騒動はそのために起こしたようなのじゃ」
何も心当たりのない自身の胸の内に執行人などと言う集団との交流はない。初見の内容、初めて聞いた事柄に、疑問しか浮かばなかった。
俺の具合を予測していたらしく、爺さんは冷静に口を開く。
「お主が何者であろうともこの際どうでもいい。重要なのはお主の能力がとても価値のある能力だということ」
「俺の能力って、、」
「自身へのあらゆる異能力攻撃が無効化される、うちの執行人が調べたやつじゃがな。それ以外にも何かあるかも、と言われてかまをかけてみたが…………」
途中で黙りこくる爺さん。愉快な面貌が表立って見え君が悪くなるも「なんでもない」と言われ、何度聞き返してもはぐらかされてしまった。前もあった気がするがこの場合置いておこう。どう言っても答えてくれないのだから。
一段落したのち、俺はずっと考えていたことを突きつける。
「そういや、爺さん。あんた、本当に俺を虐めるためだけに此処に来たのか?」
「……………虐めるようなことをしたか?」
「とぼけるな。俺を殺そうとしていただろう」
「あんなの大したことではないぞ。わしら執行人は毎日死と隣り合わせと言っても過言ではないからのぉ」
「俺は執行人じゃねえよ! 同じ扱いをするな!」
冗談じゃない、執行人とか言う警察と一緒にされてたまるか。そう喚くと、爺さんは俺を宥めながら、
「わしがお主の前に現れたのは、『西岡樹を監視しろ』という命令を上層部から受けたからじゃ」
と、言った。
「なんで俺の監視を…」
「お主という人間を敵に重要視されているなら、敢えて保護せず近寄ってきた敵を捕らえて情報を吐かせてしまおう、というのが狙いらしい」
「要は、囮ってことかよ!!」
なんで俺はこう、リスクの高そうな問題に巻き込まれてしまうのか。
とてつもなく謎で、分かっているのは、今の俺は学校一の不幸な人間だということだろう。
逃亡したくなる思いを爺さんにアピールしようと……いや、こいつ大変深刻そうな顔しているんだが。
まさか、そんなまさか、、だよな……
「……まだ、ある?」
「残念ながら。わしの都合によりな」
「都合?」
爺さんの主張によれば、俺を攻撃したのはある疑惑の真偽を図りたかったらしい。「ある疑惑?」と頭を捻る俺に爺さんは少し前の実例を持ち上げる。
「お主と篠崎が巻き込まれた騒動があったじゃろう。その後、わしとミィは西山高等学校に潜伏しておった」
「……! もしかして、黒幕を捕まえるためか?」
問いかけに対し、首を縦に振り肯定した爺さんは、文言を付け加える。
「名前はsihana=reverse。我々に相反する異能力者集団。『執行人殺し』の一人であり、お前さんのクラス担任の平良県西が黒幕じゃった」
「………はあ!? ちょっと待て!! あのクソ教師が犯人だったのかよ!!」
新しいクラスになってめっちゃはしゃいでると思ったらバレないように演じてたのか。
言われてみれば納得がいった。行方不明になって案じていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
ーーー生徒が聞いたら卒倒する事実を軽い感じで言うなよ。ってか、正体がバレたので学校から逃げ出したなんて、、言えるわけないか。
俺はたて続けに質問する。
「執行人殺しっていうのは…」
「そのまんまじゃ。わしら執行人をよく思わんやつもいる、そいつらが力を持って暴れている集団のことじゃよ」
「なんでそいつらがうちの学校に……」
爺さんの説明に懐疑をとぼすと、「それは掴めんかった」と苦渋をなめる台詞を吐きながら、彼は口説を言立てる。
「万全な準備で迎え撃った筈だったんじゃがのぉ。敵の力を見誤っておったのが原因じゃろう、魔道具で空間を乖離して敵に逃げ場を無くすつもりが、奴はそれも承知で次元を抜けて今空間に戻り姿を消した。場所が崩壊されたからわしとミィもこの空間に戻ってくるのに苦労したわい。先手を打ったつもりがやつの方が一枚上手だったのが惜しいのぉ。これなら魔道具を使って身構えるんじゃなく、先制攻撃を仕掛けるべきだった。魔道具はやっぱり使ー」
「い、一旦待ってくれ!」
ーーー長い、長過ぎるわ! 専門用語をブワッと言われても理解できるもんも理解できねんだよ!! お年寄りが話したがりって言うのもこれで納得したわ!
ピキピキ、と青筋を浮かばせて怒った俺は、「分かりやすく説明しろ」と声を荒げる。
それを聞いて爺さんは、
「んー、…………敵に逃げられた上に返り討ちに遭った、じゃな」
「そうかそうか、、ってダメじゃん! 逃したのかよ。………それが俺を襲った事とどう関係しているんだ?」
気難しい単語を並べて言い訳をしていた爺さんは、俺が肝心なことを尋ねると、今度はすんなり答えてくれた。
「お主の存在が鍵だと、奴は言っておった」
「鍵?」
「よくわからんが、『執行人殺し』の中でお主は重要な役割があるらしい。しばらく前の騒動はそのために起こしたようなのじゃ」
何も心当たりのない自身の胸の内に執行人などと言う集団との交流はない。初見の内容、初めて聞いた事柄に、疑問しか浮かばなかった。
俺の具合を予測していたらしく、爺さんは冷静に口を開く。
「お主が何者であろうともこの際どうでもいい。重要なのはお主の能力がとても価値のある能力だということ」
「俺の能力って、、」
「自身へのあらゆる異能力攻撃が無効化される、うちの執行人が調べたやつじゃがな。それ以外にも何かあるかも、と言われてかまをかけてみたが…………」
途中で黙りこくる爺さん。愉快な面貌が表立って見え君が悪くなるも「なんでもない」と言われ、何度聞き返してもはぐらかされてしまった。前もあった気がするがこの場合置いておこう。どう言っても答えてくれないのだから。
一段落したのち、俺はずっと考えていたことを突きつける。
「そういや、爺さん。あんた、本当に俺を虐めるためだけに此処に来たのか?」
「……………虐めるようなことをしたか?」
「とぼけるな。俺を殺そうとしていただろう」
「あんなの大したことではないぞ。わしら執行人は毎日死と隣り合わせと言っても過言ではないからのぉ」
「俺は執行人じゃねえよ! 同じ扱いをするな!」
冗談じゃない、執行人とか言う警察と一緒にされてたまるか。そう喚くと、爺さんは俺を宥めながら、
「わしがお主の前に現れたのは、『西岡樹を監視しろ』という命令を上層部から受けたからじゃ」
と、言った。
「なんで俺の監視を…」
「お主という人間を敵に重要視されているなら、敢えて保護せず近寄ってきた敵を捕らえて情報を吐かせてしまおう、というのが狙いらしい」
「要は、囮ってことかよ!!」
なんで俺はこう、リスクの高そうな問題に巻き込まれてしまうのか。
とてつもなく謎で、分かっているのは、今の俺は学校一の不幸な人間だということだろう。
逃亡したくなる思いを爺さんにアピールしようと……いや、こいつ大変深刻そうな顔しているんだが。
まさか、そんなまさか、、だよな……
「……まだ、ある?」
「残念ながら。わしの都合によりな」
「都合?」
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