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第二章
三話 面識
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一風変わった少女と立ち話をした後、目的地の便利屋に歩み入った。そういや、昔コンビニでアルバイトしてた奴が売れ残りを持って帰れなくなったと嘆いていたことがあったな。
そいつと遭遇したのはちょうど此処の飲料水コーナーだった。いやはや、全くもって懐かしい。
涼みながらお目当ての場所に行き着いた俺は、陳列する商品に目を向ける。
130円のレモンティー。120円のコ○・コーラ。それぞれが税抜きであり、その隣には税込み100円の水がある。可もなく不可もなしのコンビニの飲料水コーナに文句を言うわけではないが、なんとまあ微妙なチョイスだろうか。
俺がコンビニに飲み物を買いに来てる理由は、溜めておいたお茶を全て飲み干してしまったため。修学旅行から帰宅して、速攻家に引きこもる妹は頼りにならんから、一人で買いに来てるわけだが、これだと家族分買っておくのが適切なのかもしれない。
ーーーいや、面倒だな。後で母さんに作っておくよう頼んでおくか。
そうなると、自分一人の分で事足りる計算なので早いとこ3択を選んでしまいたい。この若干の暑さには潤いのあるレモンティーか、喉に刺激を与える炭酸水か、安さ第一で水という手もある。
と、思考を巡らせていれば…
「随分と長い間、悩むのね」
何だか、後ろから聞き覚えのある高音が流れてきた。
振り返ると、肩まで伸びた黒髪の俺を怪しむ同じ高校の女子生徒が立っている。説明なんてする必要のない、雲斎桜莉という名のクラスメイト。彼女の私服姿にお目にかかったのは、意外にも今日が初だった。
「お前の家ってこの辺りだっけ?」
ふとした疑問。今までの接点が皆無だったので、お互いの事情なんて知らぬ存ぜぬ我関せずな上、こういった場合の対処に困る。
オロオロとする俺に、「こういう時は変わらないのね」と失礼な小言を呟かれる。失敬な!
「はあ、従兄弟の家がこの辺りなの。この前差し入れ貰ったからお返しをしに来ただけ。此処にきたのは昼飯を頼まれたからよ」
「怪我は大丈夫なのか?」
「つい此間まで療養中だったんだけど、最近になってお医者さんびっくりの回復スピードで普通より早く退院できたのよ」
「なるほど」
何故だろう。百パーセント確信に迫る勘だが、執行人が一枚絡んでる予感がする。
事件に重点的に巻き込まれた人は仮にも執行人の施しを受理する権利があると聞いている。あくまであのじじいから聞いた話であるものの、彼らが手を出していてもおかしくは無さそう。
俺が物思いに更けていると、雲斎が話題を切り出した。
「ねえ西岡、知ってる? 担任の平良県西が行方不明って話よ」
「は? なんでまた……」
ーーーもしやあの騒動に巻き込まれたのか?、いやでも聞かされた被害者の中に平良先生の名前はなかったし。
新年早々、ちょっと可笑しいくらい張り切っていた先生だった。今回の騒動で疲労が溜まったのだろう。正直、ハイテンションな態度に嫌気が差していたので本音を言えば悦びの感情があるのは、あながち間違いではない。
「大変だな、学校も」
「ええ。新しい先生も連れてこなきゃいけないしね」
大変だわ、と小声で投げる彼女を容認していたわけだが、ここで思い出したようにポンっと手を打った。
「それより聞いたわ。西岡、また新しいお願いを紬希から頼まれたそうね」
自然にそう話す雲斎に、俺は相槌を打つ。その情報をどこで……などと凡庸な話はしない。最近になって露呈した篠崎さんと雲斎の仲の良さを鑑みれば、納得できる事実だった。
「どう思う? 篠崎さんの頼み」
「思うこと……ね。アタシ個人的な主観によるものなら一つ言いたいのだけど、」
なんだ、という俺の問いかけに、雲斎は疲れを表していた。
「空いた口が塞がらない、まさにこれね。優しい紬希のことだから仲直りしたいとでも思っているんでしょうけど、ナガッチはそんな人格をしていない」
「だろうな」
「言っておくけど、ナガッチが暴れん坊程度の認識なら改めた方がいいわよ。あれは暴走機関車と言っても安すぎなくらい」
ーーーどっちも暴走してんじゃねえか。
冷静にツッコミを入れる自分。バーサーカーと思った俺は間違えてなかった。
「でもなー、微量の可能性でナガッチが自分の意思とは別に行動してたかもしんねえぞ」
「どういう意味?」
「あーだから、あれだあれ。盲点を突かれてた場合も」
「盲点……、貴方がそれを言う?」
「え? 俺が言っちゃいけないのか」
異能力者に操られてた事情を示唆しただけなんだが、色々と噛み合ってない気がする。俺、ナガッチに何かしたっけ? 俺に対する印象も悪いような……
煩う俺の模様を雲斎は「まあいいわ」と話を逸らした。
「コンビニでする話でもないだろうし。あ、那覇士さんなら心配ないわよ。学校始まる前に、三人で出かける予定を立てたから」
「そうか」
順調に篠崎さんが輪の中に溶け込めている。このまま学校が開始されても、クラスにも馴染めそうな感じがした。
「にしても、信用されてるわね。西岡って」
「なんだ急に」
「だって篠崎さんがナガッチのこと相談してるの、西岡にだけだもの。アタシだって聞かなきゃ教えてもらえなかったはずよ」
「……はは、そうだな」
多分、信用ではない。迷惑を掛けたくないという気持ちが雲斎や那覇士に伝えるのを拒んだんだろう。男子は女子に基本的に干渉しないので、唯一の友人である俺に告示したといったところか。
ーーー難しいな。人間関係って。
「雲斎。お前ナガッチのお見舞い、行った?」
「まだよ。というか会っても話せるかどうか……」
「…もしあいつの病院に行くのであれば、予約制だから簡単に入れないらしいぞ」
らしい、と言ってる俺も未だ出向いてないのだが、執行人が管理してると聞いていたので、どうするか悩んでいた。訪ねてないのはナガッチ限り、心情的には足を運ばなきゃ不味い。
「気を付けておくわ」と言う応答を傾聴して、俺は雲斎と別れた。
因みに……飲み物選抜の終着点は、俺が百円ポッキリしか持ってないことが相まって、水となった。
ーーークソッタレが!!
そいつと遭遇したのはちょうど此処の飲料水コーナーだった。いやはや、全くもって懐かしい。
涼みながらお目当ての場所に行き着いた俺は、陳列する商品に目を向ける。
130円のレモンティー。120円のコ○・コーラ。それぞれが税抜きであり、その隣には税込み100円の水がある。可もなく不可もなしのコンビニの飲料水コーナに文句を言うわけではないが、なんとまあ微妙なチョイスだろうか。
俺がコンビニに飲み物を買いに来てる理由は、溜めておいたお茶を全て飲み干してしまったため。修学旅行から帰宅して、速攻家に引きこもる妹は頼りにならんから、一人で買いに来てるわけだが、これだと家族分買っておくのが適切なのかもしれない。
ーーーいや、面倒だな。後で母さんに作っておくよう頼んでおくか。
そうなると、自分一人の分で事足りる計算なので早いとこ3択を選んでしまいたい。この若干の暑さには潤いのあるレモンティーか、喉に刺激を与える炭酸水か、安さ第一で水という手もある。
と、思考を巡らせていれば…
「随分と長い間、悩むのね」
何だか、後ろから聞き覚えのある高音が流れてきた。
振り返ると、肩まで伸びた黒髪の俺を怪しむ同じ高校の女子生徒が立っている。説明なんてする必要のない、雲斎桜莉という名のクラスメイト。彼女の私服姿にお目にかかったのは、意外にも今日が初だった。
「お前の家ってこの辺りだっけ?」
ふとした疑問。今までの接点が皆無だったので、お互いの事情なんて知らぬ存ぜぬ我関せずな上、こういった場合の対処に困る。
オロオロとする俺に、「こういう時は変わらないのね」と失礼な小言を呟かれる。失敬な!
「はあ、従兄弟の家がこの辺りなの。この前差し入れ貰ったからお返しをしに来ただけ。此処にきたのは昼飯を頼まれたからよ」
「怪我は大丈夫なのか?」
「つい此間まで療養中だったんだけど、最近になってお医者さんびっくりの回復スピードで普通より早く退院できたのよ」
「なるほど」
何故だろう。百パーセント確信に迫る勘だが、執行人が一枚絡んでる予感がする。
事件に重点的に巻き込まれた人は仮にも執行人の施しを受理する権利があると聞いている。あくまであのじじいから聞いた話であるものの、彼らが手を出していてもおかしくは無さそう。
俺が物思いに更けていると、雲斎が話題を切り出した。
「ねえ西岡、知ってる? 担任の平良県西が行方不明って話よ」
「は? なんでまた……」
ーーーもしやあの騒動に巻き込まれたのか?、いやでも聞かされた被害者の中に平良先生の名前はなかったし。
新年早々、ちょっと可笑しいくらい張り切っていた先生だった。今回の騒動で疲労が溜まったのだろう。正直、ハイテンションな態度に嫌気が差していたので本音を言えば悦びの感情があるのは、あながち間違いではない。
「大変だな、学校も」
「ええ。新しい先生も連れてこなきゃいけないしね」
大変だわ、と小声で投げる彼女を容認していたわけだが、ここで思い出したようにポンっと手を打った。
「それより聞いたわ。西岡、また新しいお願いを紬希から頼まれたそうね」
自然にそう話す雲斎に、俺は相槌を打つ。その情報をどこで……などと凡庸な話はしない。最近になって露呈した篠崎さんと雲斎の仲の良さを鑑みれば、納得できる事実だった。
「どう思う? 篠崎さんの頼み」
「思うこと……ね。アタシ個人的な主観によるものなら一つ言いたいのだけど、」
なんだ、という俺の問いかけに、雲斎は疲れを表していた。
「空いた口が塞がらない、まさにこれね。優しい紬希のことだから仲直りしたいとでも思っているんでしょうけど、ナガッチはそんな人格をしていない」
「だろうな」
「言っておくけど、ナガッチが暴れん坊程度の認識なら改めた方がいいわよ。あれは暴走機関車と言っても安すぎなくらい」
ーーーどっちも暴走してんじゃねえか。
冷静にツッコミを入れる自分。バーサーカーと思った俺は間違えてなかった。
「でもなー、微量の可能性でナガッチが自分の意思とは別に行動してたかもしんねえぞ」
「どういう意味?」
「あーだから、あれだあれ。盲点を突かれてた場合も」
「盲点……、貴方がそれを言う?」
「え? 俺が言っちゃいけないのか」
異能力者に操られてた事情を示唆しただけなんだが、色々と噛み合ってない気がする。俺、ナガッチに何かしたっけ? 俺に対する印象も悪いような……
煩う俺の模様を雲斎は「まあいいわ」と話を逸らした。
「コンビニでする話でもないだろうし。あ、那覇士さんなら心配ないわよ。学校始まる前に、三人で出かける予定を立てたから」
「そうか」
順調に篠崎さんが輪の中に溶け込めている。このまま学校が開始されても、クラスにも馴染めそうな感じがした。
「にしても、信用されてるわね。西岡って」
「なんだ急に」
「だって篠崎さんがナガッチのこと相談してるの、西岡にだけだもの。アタシだって聞かなきゃ教えてもらえなかったはずよ」
「……はは、そうだな」
多分、信用ではない。迷惑を掛けたくないという気持ちが雲斎や那覇士に伝えるのを拒んだんだろう。男子は女子に基本的に干渉しないので、唯一の友人である俺に告示したといったところか。
ーーー難しいな。人間関係って。
「雲斎。お前ナガッチのお見舞い、行った?」
「まだよ。というか会っても話せるかどうか……」
「…もしあいつの病院に行くのであれば、予約制だから簡単に入れないらしいぞ」
らしい、と言ってる俺も未だ出向いてないのだが、執行人が管理してると聞いていたので、どうするか悩んでいた。訪ねてないのはナガッチ限り、心情的には足を運ばなきゃ不味い。
「気を付けておくわ」と言う応答を傾聴して、俺は雲斎と別れた。
因みに……飲み物選抜の終着点は、俺が百円ポッキリしか持ってないことが相まって、水となった。
ーーークソッタレが!!
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