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第二章
一話 攫われる
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お久しぶりです。第二章開幕です。一章よりは短めですが、楽しんでもらえると幸いです。
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執行人が所有する第三医療施設。軽症者から重傷者まで抱える執行人専属の最大の能力者病院。十三階建ての建築物には一フロア約三十人を保有しており、そこの三階、307号室に一人の学生が佇んでいた。
長山陽葵。本来、西山高等学校の在校生である彼女は、他の生徒同様通常の病院に入院するはずだったが、異能力者という事実がそれを拒んだ。
つい先日の「高校生徒教員暴走事件」。
その内容に深く関わっている彼女は執行人たちに連行され、異能力を封じる魔道具を病室の四隅に敷かれたままま拘束されていた。事情が事情なのだがこれでは犯罪者になった気分、と最初は悪態をつくも、時が経つにつれ事態の深刻さを理解していくこととなった。
中央のベットに横たわる長山の顔はどこか陰が差し込んでいる。今の彼女の胸の内は、とある刃に貫かれていた。
ーーーあーし、なんてことしちゃったんやろ。
思い出すのは先日の出来事。とある男に利用され、自身が主要核となって引き起こした最大の悪事。死者はゼロ。大ぴっろになってなっていないが、多くの生徒に迷惑をかけてしまった。後日聞いた話によれば、私を利用したのは事件を解決した執行人と同じ異能力者である「執行人殺し」と呼ばれる犯罪者による行いだったらしい。
隠ぺいした執行人から事情は聴いたが、異能力者なんてそんな存在を信じるのにひと悶着あり、最終的には自分が同じ存在だと聞かされて、その場で卒倒してしまうくらいの驚きがあった。
だがそんなの昔の話。問題なのは、事件解決には二人の人間が介入したことだった。
篠崎紬希、彼女が関わっているのは知っていた。それはあの状況が悪い夢だという妄想を打ち砕くものであり、一度は酷いことしたのにそれを恩で返す篠崎には感謝をしてもしきれない。
けれど西岡樹、彼がいるのは想定内だった。一部では彼が異能力者だと言う者もいるが、それを差し引いたとしても彼の活躍は賞賛されるほど。
ーーーもう、まともに話せないわな。
病室の窓から確認できる枯れ木同様、彼女の心のまた、細く途切れ欠けていた。どうしようもない、ぽっかりと空いた心臓の鼓動が無慈悲に響く中、場違いな音が部屋に広がる。
そんな時、
カラン、カラン。
ーーー鈴の音?
不審に思い音の方向に目をやると、一人の少女?が立っていた。疑問系なのは少女の金髪が成人男性くらいの長さしかなかったから。軍服を纏い腰に剣を携えた姿は、少女の幼い顔立ちがなければ確実に男と判断しただろう。
「えっと、……何か用か?」
「はい」
何処からか侵入した少女に警戒を強める長山、そうして小さな口が紡がれる。
「長山陽葵さんですね」
「そうやけど…」
「訳あって貴方を連行させていただきます」
少女はそう言うと、ポカンと形相の浮いた長山に携えていた剣を突きつける。湾曲した片刃の刀身を持ち柄の部位は丸みを帯びている。明らかに特徴の異なるそれは、片手で使うようにも見えた。
ーーーえ、ちょい待て。連行ってどういうことや?
執行人達の状況が変わったのだろうか。だとしても何の音沙汰もないのが長山は気になった。一度少女から視線をずらし、辺りを確認すると………あることを感取する。
病院の四角に置かれた魔道具が、壊れていた。
全てが瓦解する不味い局面かもしれなかった。想像のできない深刻な事態が迫っていると予想立て、彼女は少女に問いかける。
「緊急事態…なんか?」
怯えながら質問した彼女に、少女はうっすらと笑みを浮かべる。
「ええ、緊急事態です。本当ならこの瞬間もサイレンが此処を充満されているはずですから。でも貴方にその心配はありませんよ」
「あーしを保護しに来たのか?」
「一時的にですが。よかったですね、私が優秀だから貴方は余計な血を見ずに済んだのです」
会話が噛み合っていないのは明白だった。もしかすれば自分は恐ろしい勘違いを引き起こしているのかも。だが、それを受け入れられるほど彼女の心は強くなかった。
順当に会話を進めようとする長山に、少女は呆れながら動きを催す。
「まあいいです。とりあえず、眠っておいてください」
「え、」
そう言い放ち、少女が一瞬のうちに剣を振り抜く。続く刹那、少女の右腕が風と化した。
ーーーあ、意識が……
スパン、という音と共に長山の左腕に亀裂が入る。その瞬間、病室のベットの上で長山が静かに崩れ落ちた。
「あとは届けるだけ。これであの方もあいつに猶予を…」
心持ちが軽くなったのか、少女は倒れ込んだ長山に近づく。そして持ち合わせのタロットカードと共に姿を消した。
その日、第三医療施設の管理体制は疑われた。原因は執行人と似て非なる異能力者に一人の患者が連れ去られてしまったため。
かくして物語は一人の少年へと行き渡る。
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執行人が所有する第三医療施設。軽症者から重傷者まで抱える執行人専属の最大の能力者病院。十三階建ての建築物には一フロア約三十人を保有しており、そこの三階、307号室に一人の学生が佇んでいた。
長山陽葵。本来、西山高等学校の在校生である彼女は、他の生徒同様通常の病院に入院するはずだったが、異能力者という事実がそれを拒んだ。
つい先日の「高校生徒教員暴走事件」。
その内容に深く関わっている彼女は執行人たちに連行され、異能力を封じる魔道具を病室の四隅に敷かれたままま拘束されていた。事情が事情なのだがこれでは犯罪者になった気分、と最初は悪態をつくも、時が経つにつれ事態の深刻さを理解していくこととなった。
中央のベットに横たわる長山の顔はどこか陰が差し込んでいる。今の彼女の胸の内は、とある刃に貫かれていた。
ーーーあーし、なんてことしちゃったんやろ。
思い出すのは先日の出来事。とある男に利用され、自身が主要核となって引き起こした最大の悪事。死者はゼロ。大ぴっろになってなっていないが、多くの生徒に迷惑をかけてしまった。後日聞いた話によれば、私を利用したのは事件を解決した執行人と同じ異能力者である「執行人殺し」と呼ばれる犯罪者による行いだったらしい。
隠ぺいした執行人から事情は聴いたが、異能力者なんてそんな存在を信じるのにひと悶着あり、最終的には自分が同じ存在だと聞かされて、その場で卒倒してしまうくらいの驚きがあった。
だがそんなの昔の話。問題なのは、事件解決には二人の人間が介入したことだった。
篠崎紬希、彼女が関わっているのは知っていた。それはあの状況が悪い夢だという妄想を打ち砕くものであり、一度は酷いことしたのにそれを恩で返す篠崎には感謝をしてもしきれない。
けれど西岡樹、彼がいるのは想定内だった。一部では彼が異能力者だと言う者もいるが、それを差し引いたとしても彼の活躍は賞賛されるほど。
ーーーもう、まともに話せないわな。
病室の窓から確認できる枯れ木同様、彼女の心のまた、細く途切れ欠けていた。どうしようもない、ぽっかりと空いた心臓の鼓動が無慈悲に響く中、場違いな音が部屋に広がる。
そんな時、
カラン、カラン。
ーーー鈴の音?
不審に思い音の方向に目をやると、一人の少女?が立っていた。疑問系なのは少女の金髪が成人男性くらいの長さしかなかったから。軍服を纏い腰に剣を携えた姿は、少女の幼い顔立ちがなければ確実に男と判断しただろう。
「えっと、……何か用か?」
「はい」
何処からか侵入した少女に警戒を強める長山、そうして小さな口が紡がれる。
「長山陽葵さんですね」
「そうやけど…」
「訳あって貴方を連行させていただきます」
少女はそう言うと、ポカンと形相の浮いた長山に携えていた剣を突きつける。湾曲した片刃の刀身を持ち柄の部位は丸みを帯びている。明らかに特徴の異なるそれは、片手で使うようにも見えた。
ーーーえ、ちょい待て。連行ってどういうことや?
執行人達の状況が変わったのだろうか。だとしても何の音沙汰もないのが長山は気になった。一度少女から視線をずらし、辺りを確認すると………あることを感取する。
病院の四角に置かれた魔道具が、壊れていた。
全てが瓦解する不味い局面かもしれなかった。想像のできない深刻な事態が迫っていると予想立て、彼女は少女に問いかける。
「緊急事態…なんか?」
怯えながら質問した彼女に、少女はうっすらと笑みを浮かべる。
「ええ、緊急事態です。本当ならこの瞬間もサイレンが此処を充満されているはずですから。でも貴方にその心配はありませんよ」
「あーしを保護しに来たのか?」
「一時的にですが。よかったですね、私が優秀だから貴方は余計な血を見ずに済んだのです」
会話が噛み合っていないのは明白だった。もしかすれば自分は恐ろしい勘違いを引き起こしているのかも。だが、それを受け入れられるほど彼女の心は強くなかった。
順当に会話を進めようとする長山に、少女は呆れながら動きを催す。
「まあいいです。とりあえず、眠っておいてください」
「え、」
そう言い放ち、少女が一瞬のうちに剣を振り抜く。続く刹那、少女の右腕が風と化した。
ーーーあ、意識が……
スパン、という音と共に長山の左腕に亀裂が入る。その瞬間、病室のベットの上で長山が静かに崩れ落ちた。
「あとは届けるだけ。これであの方もあいつに猶予を…」
心持ちが軽くなったのか、少女は倒れ込んだ長山に近づく。そして持ち合わせのタロットカードと共に姿を消した。
その日、第三医療施設の管理体制は疑われた。原因は執行人と似て非なる異能力者に一人の患者が連れ去られてしまったため。
かくして物語は一人の少年へと行き渡る。
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