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第一章
三十六話 無謀
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「ここは…、学校の校舎」
光が静まり、目を開けば見たことのある光景。俺たちが来たのは二年生になって何度も通った教室の廊下だった。
「よし、ついて来るんじゃ」
颯爽と歩きだす爺さんに俺と篠崎さんは一瞬間延びしながらも、後を追う。五メートルほど進んだ先に見慣れない教室があった。
「空き教室?」
疑問を唱える俺に、爺さんはドアに貼ってある一枚の紙を剥がし、こちらに見せる。
「とある魔道具の一種じゃ。わしら執行人がよく使っておる」
「効果は?」
「造作もないが、この教室に入ろうとする侵入者は排除されるという代物」
「なんちゅう危なっかしいもん張ってんだ! だれか来たらどうする!」
「そんな予定ないから、空き教室なんじゃろ」
吐き捨てるように言った爺さんは俺たちを部屋に招き入れる。
おそるおそる足を踏み出すと、部屋の真ん中にはサイズの合わない大型の段ボールが置いてあった。半開きになったその箱の中に入っていたのはー
「なんだ、これ…?」
その物品達を目の当たりにした俺は、目を鋭く細める。
重なる三枚のタロットカード、投げナイフ、特殊な弾頭をした拳銃、光り輝く宝石、どくろマークのついた火薬らしきもの。
犯罪の匂いがプンプンと漂う道具一式がぎっしりと詰まっていたのだ。
「執行人とは能力者の保護だけが仕事ではない。悪行を働く能力者、彼らの殺害も視野に入れておる。これらはわしが大事を思って三日前に備えた物品と魔道具じゃ」
「これを使えと?」
「話の分かるやつで助かる」
どくん、と心臓が跳ねた。
ぞくり、と背筋が震えた。
そんな躊躇いを感じ取ったのか、爺さんは安心させるように優しく諭す。
「といっても何も人殺しをしてもらうわけではない。……お主には使える範疇のものを装備してもらう」
三枚のタロットカード。まずはこれが指示された。
二匹の動物の上に人が乗った絵柄は気にはなるがこの際後回し。力を付与する効果らしい。篠崎さんのとはまた違うのだろうと察した。それらを服に忍ばせ、次の指示を聞く。
「装備できたようじゃな、次は奥の銃じゃ。ついでに細長い棒状の付属品も取れ」
「え?」
「安心しろ。特殊な弾頭をしとるじゃろう、麻酔銃じゃ。わしがお主の前で使っていたやつと同じな」
ほっと肩をなでおろす。ゆっくりと段ボールの奥に手を突っ込み銃を取った。テレビや漫画で見る拳銃とは装甲が異なっているように感じる。麻酔銃だから特別な使用になっているのかもしれない。
―――この付属品は、ちょうど銃の弾の差し込み口に入る。ごつくなって扱いづらいが弾が持続するということか。
俺の脳内を読み取ったのか爺さんは続ける。
「一般的に知られる麻酔銃とは全く違う。大きさはピストルと変わらんし、弾のつくりも拳銃と同じ。ま、能力で麻酔効果付けてるから当然か。なくしたら承知せんぞ」
「弾って何発ぐらい持つんだ?」
「ざっと十二発。切れたら一巻の終わりじゃ。逃げ回れ」
「なんて無茶苦茶な」
「さて、ここで作戦を説明するぞ」
俺が装備し終わったタイミングでパンと手を叩き、観察を向けさせる。
「長山陽葵の暴走により学校はロックダウン状態。お嬢ちゃんの力は能力者の能力を消す能力。これには長山陽葵との対話が必要となる。
そのためには長山陽葵に近づく必要があるが精確な居場所も判らんし生徒教師が徘徊する現状、わしの瞬間移動で彼女に近づこうにもいばらの道は険しすぎる」
「「なるほど」」
「ここで、西岡樹。お主の出番じゃ!」
芝居がかった演技のまま爺さんは俺を指す。
「長山陽葵単体の狙いはお主の確保。今彼女は徘徊する人間を完全に操れず、一部の奴らは不規則な動きをしておる。これは黒幕にとっても予想外のはずじゃ。
その間に、一対一でお嬢ちゃんと長山陽葵を対話させて暴走を止めればわしらの勝ち。そのために、お主には頑張って生徒教職員を引き付ける理由がある」
「んな暴論な! 俺一人で全員を引き付けろっていうのか!」
荷が重すぎる、そう叫ぶ俺に「武器渡したじゃろ」、と平然と言ってくる爺さん。このクソじじい!
「捕まるんじゃないぞ、わしとお嬢ちゃんはその間に長山陽葵を探してくるから」
「ナガッチが何人か仲間を控えさせてかもしれないんだぞ」
「障害となる存在なんて気にしてなさそうじゃし大丈夫じゃよ」
「…………………………………あの、この作戦はあまりにも西岡くんがー」
申し訳なさそうに訴える篠崎さん。その人肌優しい視線に、、
「ふうむ。すまん、わしもやりすぎたようじゃ。ほかの作戦を考えるか、」
謝るかのように教室のドアに向かっていった爺さんはそこで大きく吸って、
「西岡樹は二年生の空き教室に居るぞー!!!」
「この馬鹿ジジイが!!!!!!」
俺が怒鳴り声をまき散らすのと同時だった。すかさず俺の隣に瞬間移動した爺さんは篠崎さんに触れると、、
「アディオス」
「あ、、」
シュンっと。彼女と共に音を立てて消えていった。
「くたばっちまえ! 耄碌じじい!!!!!」
光が静まり、目を開けば見たことのある光景。俺たちが来たのは二年生になって何度も通った教室の廊下だった。
「よし、ついて来るんじゃ」
颯爽と歩きだす爺さんに俺と篠崎さんは一瞬間延びしながらも、後を追う。五メートルほど進んだ先に見慣れない教室があった。
「空き教室?」
疑問を唱える俺に、爺さんはドアに貼ってある一枚の紙を剥がし、こちらに見せる。
「とある魔道具の一種じゃ。わしら執行人がよく使っておる」
「効果は?」
「造作もないが、この教室に入ろうとする侵入者は排除されるという代物」
「なんちゅう危なっかしいもん張ってんだ! だれか来たらどうする!」
「そんな予定ないから、空き教室なんじゃろ」
吐き捨てるように言った爺さんは俺たちを部屋に招き入れる。
おそるおそる足を踏み出すと、部屋の真ん中にはサイズの合わない大型の段ボールが置いてあった。半開きになったその箱の中に入っていたのはー
「なんだ、これ…?」
その物品達を目の当たりにした俺は、目を鋭く細める。
重なる三枚のタロットカード、投げナイフ、特殊な弾頭をした拳銃、光り輝く宝石、どくろマークのついた火薬らしきもの。
犯罪の匂いがプンプンと漂う道具一式がぎっしりと詰まっていたのだ。
「執行人とは能力者の保護だけが仕事ではない。悪行を働く能力者、彼らの殺害も視野に入れておる。これらはわしが大事を思って三日前に備えた物品と魔道具じゃ」
「これを使えと?」
「話の分かるやつで助かる」
どくん、と心臓が跳ねた。
ぞくり、と背筋が震えた。
そんな躊躇いを感じ取ったのか、爺さんは安心させるように優しく諭す。
「といっても何も人殺しをしてもらうわけではない。……お主には使える範疇のものを装備してもらう」
三枚のタロットカード。まずはこれが指示された。
二匹の動物の上に人が乗った絵柄は気にはなるがこの際後回し。力を付与する効果らしい。篠崎さんのとはまた違うのだろうと察した。それらを服に忍ばせ、次の指示を聞く。
「装備できたようじゃな、次は奥の銃じゃ。ついでに細長い棒状の付属品も取れ」
「え?」
「安心しろ。特殊な弾頭をしとるじゃろう、麻酔銃じゃ。わしがお主の前で使っていたやつと同じな」
ほっと肩をなでおろす。ゆっくりと段ボールの奥に手を突っ込み銃を取った。テレビや漫画で見る拳銃とは装甲が異なっているように感じる。麻酔銃だから特別な使用になっているのかもしれない。
―――この付属品は、ちょうど銃の弾の差し込み口に入る。ごつくなって扱いづらいが弾が持続するということか。
俺の脳内を読み取ったのか爺さんは続ける。
「一般的に知られる麻酔銃とは全く違う。大きさはピストルと変わらんし、弾のつくりも拳銃と同じ。ま、能力で麻酔効果付けてるから当然か。なくしたら承知せんぞ」
「弾って何発ぐらい持つんだ?」
「ざっと十二発。切れたら一巻の終わりじゃ。逃げ回れ」
「なんて無茶苦茶な」
「さて、ここで作戦を説明するぞ」
俺が装備し終わったタイミングでパンと手を叩き、観察を向けさせる。
「長山陽葵の暴走により学校はロックダウン状態。お嬢ちゃんの力は能力者の能力を消す能力。これには長山陽葵との対話が必要となる。
そのためには長山陽葵に近づく必要があるが精確な居場所も判らんし生徒教師が徘徊する現状、わしの瞬間移動で彼女に近づこうにもいばらの道は険しすぎる」
「「なるほど」」
「ここで、西岡樹。お主の出番じゃ!」
芝居がかった演技のまま爺さんは俺を指す。
「長山陽葵単体の狙いはお主の確保。今彼女は徘徊する人間を完全に操れず、一部の奴らは不規則な動きをしておる。これは黒幕にとっても予想外のはずじゃ。
その間に、一対一でお嬢ちゃんと長山陽葵を対話させて暴走を止めればわしらの勝ち。そのために、お主には頑張って生徒教職員を引き付ける理由がある」
「んな暴論な! 俺一人で全員を引き付けろっていうのか!」
荷が重すぎる、そう叫ぶ俺に「武器渡したじゃろ」、と平然と言ってくる爺さん。このクソじじい!
「捕まるんじゃないぞ、わしとお嬢ちゃんはその間に長山陽葵を探してくるから」
「ナガッチが何人か仲間を控えさせてかもしれないんだぞ」
「障害となる存在なんて気にしてなさそうじゃし大丈夫じゃよ」
「…………………………………あの、この作戦はあまりにも西岡くんがー」
申し訳なさそうに訴える篠崎さん。その人肌優しい視線に、、
「ふうむ。すまん、わしもやりすぎたようじゃ。ほかの作戦を考えるか、」
謝るかのように教室のドアに向かっていった爺さんはそこで大きく吸って、
「西岡樹は二年生の空き教室に居るぞー!!!」
「この馬鹿ジジイが!!!!!!」
俺が怒鳴り声をまき散らすのと同時だった。すかさず俺の隣に瞬間移動した爺さんは篠崎さんに触れると、、
「アディオス」
「あ、、」
シュンっと。彼女と共に音を立てて消えていった。
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