34 / 51
第一章
三十四話 納得できない
しおりを挟む
愕然とする事実。思わず、篠崎さんに目を向ける。
「篠崎さんが能力者………だと」
「あり得ないはずがない。ここにきて比率がバグっておるが、前例なら既に証明済みじゃが。都合がよすぎる気がするが」
「都合がいいだあ?」
もう、色々とパンクを起こしながらも頑張って食らいつく俺。誰か褒めて欲しかった。爺さんは流しで見つつ説明を続ける。
「お嬢ちゃんの能力は能力者の能力だけ消滅させるという代物。事件の解決策に相応しい完璧な能力じゃから」
「そんないい能力なのか⁉︎」
どこか得体のしれない何かに絡め取られるくらいドンバチな能力。しかし爺さんの言葉は本当な筈、ということは篠崎さんの能力を使って事態を丸く抑えられるのか。
篠崎さんも気付いたらしい。
「私の能力で長山さんの暴走を止められるの?」
「その通り。妙にきな臭いがやるのみ。だが能力には制限がつく。お嬢ちゃんは消す相手能力者の同意で初めて消失する。お前さんが消すのではなく相手の意思によってだから消失、なんじゃ。平たく言えば元凶との対話が必要になる。頼む、わしらと協力してほしい」
懇願する爺さんに、体が固まる篠崎さん。
―――だめだ、篠崎さんにやらせちゃいけない。
俺の言葉と心情が一致し、爺さんを説き伏せる。
「無理だ。ナガッチが能力行使をやめて能力を捨てるなんて、、不可能だぞ。いっそ黒幕を潰すのが早いんじゃないか?」
黙りこむ篠崎さんの前で新たな案を提示、だが甘かったらしい。
「お主とわしらでは何の目的で強化してるか分からんじゃろう。素直に頼み込んで強化をやめてくれるとは思えんし、敵の場所も把握できとらんから、ナガッチを捕まえるのを優先する。交通整備までの時間もない、だからこそ頼む」
つらつら出てくる単語に苛立った。もしその能力を持ったのが俺だったら思いつく可能範囲の実行をする。たとえ上手くいかなくても最善を尽くす。
でも篠崎さんだ。彼女はただでさえ、普段の倍以上の深手を負ってる。そして会いに行くのはその元凶、ナガッチ。無理だ、というか俺がやらせたくない。
「悪い爺さん。篠崎さんには重すぎる。他の作戦をー」
「待って。西岡くん!」
意を決したのか、篠崎さんが叫んでいた。
「私にしか、できないんですね」
ぎゅっと、揺れる手を胸元に握りしめ、彼女は毅然と言い放った。
「いいです。私にやらせてください」
「…は? お、おい……?」
俺が焦燥と困惑を露わに彼女は振り返る。
「教えてください。私は何をすればー」
「篠崎さん。アンタ、何言って」
咄嗟に篠崎さんを止めようとするが………
「ありがとう。お嬢ちゃんの勇気。それ預からせて頂くことに感謝する」
本当にうれしそうに対応する爺さんに言葉が詰まった。
「……う」
「西岡くん。私いけるよ。心配してくれてありがとう」
「……………わかった」
ずっと考えていた。理由は不明だが、篠崎さんのことになると簡単に判断できなくなる。
お願いは俺が一人で受けたかった。篠崎さんを助けて俺一人の力で何とかしたかった。彼女に余計なものを背負わせたくなかった。
―――そうだ、俺は彼女の成長なんて望んでなかった。彼女が傷つくたび自力で解決して手を伸ばす。俺を一方的に頼るこの関係性がちょうどよかったんじゃないか。だから篠崎さんが自ら率先してやりたいと思うこの状況に、
「俺の出る幕なんてないのか」
「西岡くん?」
と、ここで目をつぶっていた少女が自らの場所を離れ、伝達する。
「爺じ。話の最中悪いけど、凄いことが起きてる」
「なんじゃ、もしかして、操られた人間が制御結界を破って此処に向かっておったりするのか?」
心配そうに聞くその態度に少女は首を振る。
「その逆。長山陽葵の制御下が離れたかも。彼女の姿は見えないけど、生徒と教職員が不規則な動きを始めた」
「敵の作戦……ではないか、よし、すぐに動くとするか」
準備を始める爺さん。それを尻目に、少女は篠崎さんと向き合う。
「詳しい説明は道中爺じから聞いて」
「……分かりました」
「爺じ。お願い」
「任された」
そう断言し、爺さんは篠崎さんと俺の肩に片手ずつ乗せた。
「時間がない。わしらも動き出すとしよう」
「ちょっと待て、俺はいらなくないか?」
ちらっと言えば爺さんはニヤリと笑う。
「お主には違う仕事がある」
ぐにゃりと空間が歪みー 七色の光が二度目の再来を果たした。
「篠崎さんが能力者………だと」
「あり得ないはずがない。ここにきて比率がバグっておるが、前例なら既に証明済みじゃが。都合がよすぎる気がするが」
「都合がいいだあ?」
もう、色々とパンクを起こしながらも頑張って食らいつく俺。誰か褒めて欲しかった。爺さんは流しで見つつ説明を続ける。
「お嬢ちゃんの能力は能力者の能力だけ消滅させるという代物。事件の解決策に相応しい完璧な能力じゃから」
「そんないい能力なのか⁉︎」
どこか得体のしれない何かに絡め取られるくらいドンバチな能力。しかし爺さんの言葉は本当な筈、ということは篠崎さんの能力を使って事態を丸く抑えられるのか。
篠崎さんも気付いたらしい。
「私の能力で長山さんの暴走を止められるの?」
「その通り。妙にきな臭いがやるのみ。だが能力には制限がつく。お嬢ちゃんは消す相手能力者の同意で初めて消失する。お前さんが消すのではなく相手の意思によってだから消失、なんじゃ。平たく言えば元凶との対話が必要になる。頼む、わしらと協力してほしい」
懇願する爺さんに、体が固まる篠崎さん。
―――だめだ、篠崎さんにやらせちゃいけない。
俺の言葉と心情が一致し、爺さんを説き伏せる。
「無理だ。ナガッチが能力行使をやめて能力を捨てるなんて、、不可能だぞ。いっそ黒幕を潰すのが早いんじゃないか?」
黙りこむ篠崎さんの前で新たな案を提示、だが甘かったらしい。
「お主とわしらでは何の目的で強化してるか分からんじゃろう。素直に頼み込んで強化をやめてくれるとは思えんし、敵の場所も把握できとらんから、ナガッチを捕まえるのを優先する。交通整備までの時間もない、だからこそ頼む」
つらつら出てくる単語に苛立った。もしその能力を持ったのが俺だったら思いつく可能範囲の実行をする。たとえ上手くいかなくても最善を尽くす。
でも篠崎さんだ。彼女はただでさえ、普段の倍以上の深手を負ってる。そして会いに行くのはその元凶、ナガッチ。無理だ、というか俺がやらせたくない。
「悪い爺さん。篠崎さんには重すぎる。他の作戦をー」
「待って。西岡くん!」
意を決したのか、篠崎さんが叫んでいた。
「私にしか、できないんですね」
ぎゅっと、揺れる手を胸元に握りしめ、彼女は毅然と言い放った。
「いいです。私にやらせてください」
「…は? お、おい……?」
俺が焦燥と困惑を露わに彼女は振り返る。
「教えてください。私は何をすればー」
「篠崎さん。アンタ、何言って」
咄嗟に篠崎さんを止めようとするが………
「ありがとう。お嬢ちゃんの勇気。それ預からせて頂くことに感謝する」
本当にうれしそうに対応する爺さんに言葉が詰まった。
「……う」
「西岡くん。私いけるよ。心配してくれてありがとう」
「……………わかった」
ずっと考えていた。理由は不明だが、篠崎さんのことになると簡単に判断できなくなる。
お願いは俺が一人で受けたかった。篠崎さんを助けて俺一人の力で何とかしたかった。彼女に余計なものを背負わせたくなかった。
―――そうだ、俺は彼女の成長なんて望んでなかった。彼女が傷つくたび自力で解決して手を伸ばす。俺を一方的に頼るこの関係性がちょうどよかったんじゃないか。だから篠崎さんが自ら率先してやりたいと思うこの状況に、
「俺の出る幕なんてないのか」
「西岡くん?」
と、ここで目をつぶっていた少女が自らの場所を離れ、伝達する。
「爺じ。話の最中悪いけど、凄いことが起きてる」
「なんじゃ、もしかして、操られた人間が制御結界を破って此処に向かっておったりするのか?」
心配そうに聞くその態度に少女は首を振る。
「その逆。長山陽葵の制御下が離れたかも。彼女の姿は見えないけど、生徒と教職員が不規則な動きを始めた」
「敵の作戦……ではないか、よし、すぐに動くとするか」
準備を始める爺さん。それを尻目に、少女は篠崎さんと向き合う。
「詳しい説明は道中爺じから聞いて」
「……分かりました」
「爺じ。お願い」
「任された」
そう断言し、爺さんは篠崎さんと俺の肩に片手ずつ乗せた。
「時間がない。わしらも動き出すとしよう」
「ちょっと待て、俺はいらなくないか?」
ちらっと言えば爺さんはニヤリと笑う。
「お主には違う仕事がある」
ぐにゃりと空間が歪みー 七色の光が二度目の再来を果たした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる