20 / 51
第一章
二十話 悪行
しおりを挟む
「……っ、ナガッチ」
きつく睨みつける雲斎にナガッチは薄ら笑いを浮かべる。学校で敵意を剥き出しにしてるその様子はとても珍しいものだった。拳を強く握りしめ対等する二人の開戦のスタートは、惜しくも嫌な方から開かれる。
「雲斎、貴方が誰かと来るなんて意外やな。あーし以外とはつるめない人間だと勝手な偏見を抱いていたことに謝らなあかんなあ」
限りなく嫌味っぽく告げるナガッチに、体が下に出てしまう雲斎。悔しそうにグッと視線を下げ彼女は後攻を開始する。
「御託はいい。それより、貴方がまだアタシに話しかけてくるなんて異様な光景ね」
「少し気になることがあってな」
そう言う彼女の視線は、俺に向いてきた。 こいつと話す内容なんて朝っぱらで終了している、そう判断する俺は不思議と顔を曇らせた。
「誰とでも喋れるのは一種の才能だと思うが、、西岡は知っとるか」
「……ああ?」
「そこにいるやつはな、私の友達にとんでもない行為を行ったんや!」
声に合わせて指差すナガッチの人差し指の先には、………キョトンとしてぼんやりと佇む篠崎さん。
ざわざわと外野がマークを付けだして、一斉に教室中が焦点を集める状況下の中、彼女だけは自分が傾注を拾っているのを看取しない。
俺が目先で促して、やっとワンテンポ遅れてそれっぽい動作を表した。
「ん、……私?」
「そうや!!」
めぼしい反応が得られなかったからか、幾ばくか覇気が抑えめになった。「なんか調子狂うな」と聞こえぬ程度呟くが、気にせず大袈裟に手振りをつけてこと顕す。
「篠崎さん。お前は最低な行いをしとる」
「まあ、どんな」
「ことをしたの、お嬢」
―――取り巻きうざい。確実にセリフを分けるないだろ。
俺のツッコミは届かない。彼女たち二人の声が聞けてホッとしたのか、仰々しくナガッチは口述する。
「あーしの親友、那覇士の家庭事情を散々馬鹿にした上泣かせたんや。残虐にも程がある!」
「ひどーい!!」
「人としてあるまじき行為ね!」
教室全体に響く声量で言った彼女たちの文言に、クラス中が困惑した空気に取り憑かれる。
「え、嘘。篠崎さんがそんなことするなんてー」
「マジかよ、いつもあんな静かな人が」
「でもあれじゃね、 ナガッチの言う話だし」
「確かにあり得ない話じゃないな。雲斎の時といい不運すぎるだろ」
「雲斎もそうだったからな。一緒に来てることだし篠崎さんだって嫌がらせでもしてるんじゃないか」
「篠崎さんサイテー、ナガッチと那覇士さん可哀想!」
じわじわと音波の如く広がるマイナス意見に俺は唖然とする。
―――まずい、このままじゃ、、
篠崎さんがクラスに馴染めなくなる。
『雲斎さんは長山グループで唯一まともな存在だよ。二年生に進級する付近で何かあったらしくて現状一人でいることが多いけど』
雲斎さんは訳あって友達が減ったと濁していた。中谷のこのセリフが鍵となるならナガッチ関係で何かしらの問題を生んだのではないだろうか。恐らく、その節もこうやってクラスメイトにばら撒いたのかもしれない。あれだけ、印象の良いナガッチのことだ、疑いなく大勢が信じるだろう。
「なるほど、見事な計略だな」
「……中谷」
耳元で優しく話すのは俺の一番の友人、中谷。おちゃらけな態度とは裏腹に頭は決して悪くない。
「ここで篠崎さんを潰し、付き従う理由の読めない雲斎さんをだしにして二人の一般的な好感度を格下げする。そうすることで、ライバルを減らす。なるほど、うまい具合の強硬手段だな」
「何の為にこんなことを…?」
「そりゃあ自分一人を見てほしいからなあ」
「誰に?」
「はぁ、だめだこりゃ」
両手でやれやれと形容する中谷に、俺は意味が分からないため一度視線を外す。強硬手段と言いつつ、中谷がナガッチに対して悪感情を抱いていないのも納得できない。
俺は未だに黙ったまま立ち尽くす一人の女子生徒に立ち寄る。
「大丈夫か…?」
「………うん」
泣きそうな篠崎さんの頭に手を置き、俺は深く息を吐く。
嘘八百もいいところ。那覇士の家庭事情を馬鹿にしたと言っていたが、知らなかっただけでそれに気付かず泣かせたのは仕方ないはずだ。それに謝る予定だってあったのに、此処でクラス大っぴらに暴露して誰が得をする?
面倒くさく拗らせただけ。って言うよりどうしてナガッチが知っているんだ。もしかして朝話してた辺り那覇士さんが言ったのか。
―――俺のせいか? 俺が篠崎さんと教室で会話したから、いやでも会話しただけでなんでこんなことになるんだ?
少し離れた席に方向を一致させる。クラスメイトがひそひそと情報を共有する取り組み最中、那覇士はポツンと単独で、頭を俯けていた。
ナガッチは篠崎さんと俺を拝見しながら不機嫌そうに留まっている。
「どうして……」
キンコーン、カンコーン。
ホームルームのチャイムが長い間、耳にこびり付いていた。
*****
〈謎の二人組〉
「あの空間、…少々厄介じゃな」
「人を貶めることに使ってる時点でもう確保していいんじゃない?」
「これ以上行動を起こすのならのぉ。今日の下校あたりにでも持ちかけるか」
「強硬手段は?」
「…上からの指示がないからのぉ」
きつく睨みつける雲斎にナガッチは薄ら笑いを浮かべる。学校で敵意を剥き出しにしてるその様子はとても珍しいものだった。拳を強く握りしめ対等する二人の開戦のスタートは、惜しくも嫌な方から開かれる。
「雲斎、貴方が誰かと来るなんて意外やな。あーし以外とはつるめない人間だと勝手な偏見を抱いていたことに謝らなあかんなあ」
限りなく嫌味っぽく告げるナガッチに、体が下に出てしまう雲斎。悔しそうにグッと視線を下げ彼女は後攻を開始する。
「御託はいい。それより、貴方がまだアタシに話しかけてくるなんて異様な光景ね」
「少し気になることがあってな」
そう言う彼女の視線は、俺に向いてきた。 こいつと話す内容なんて朝っぱらで終了している、そう判断する俺は不思議と顔を曇らせた。
「誰とでも喋れるのは一種の才能だと思うが、、西岡は知っとるか」
「……ああ?」
「そこにいるやつはな、私の友達にとんでもない行為を行ったんや!」
声に合わせて指差すナガッチの人差し指の先には、………キョトンとしてぼんやりと佇む篠崎さん。
ざわざわと外野がマークを付けだして、一斉に教室中が焦点を集める状況下の中、彼女だけは自分が傾注を拾っているのを看取しない。
俺が目先で促して、やっとワンテンポ遅れてそれっぽい動作を表した。
「ん、……私?」
「そうや!!」
めぼしい反応が得られなかったからか、幾ばくか覇気が抑えめになった。「なんか調子狂うな」と聞こえぬ程度呟くが、気にせず大袈裟に手振りをつけてこと顕す。
「篠崎さん。お前は最低な行いをしとる」
「まあ、どんな」
「ことをしたの、お嬢」
―――取り巻きうざい。確実にセリフを分けるないだろ。
俺のツッコミは届かない。彼女たち二人の声が聞けてホッとしたのか、仰々しくナガッチは口述する。
「あーしの親友、那覇士の家庭事情を散々馬鹿にした上泣かせたんや。残虐にも程がある!」
「ひどーい!!」
「人としてあるまじき行為ね!」
教室全体に響く声量で言った彼女たちの文言に、クラス中が困惑した空気に取り憑かれる。
「え、嘘。篠崎さんがそんなことするなんてー」
「マジかよ、いつもあんな静かな人が」
「でもあれじゃね、 ナガッチの言う話だし」
「確かにあり得ない話じゃないな。雲斎の時といい不運すぎるだろ」
「雲斎もそうだったからな。一緒に来てることだし篠崎さんだって嫌がらせでもしてるんじゃないか」
「篠崎さんサイテー、ナガッチと那覇士さん可哀想!」
じわじわと音波の如く広がるマイナス意見に俺は唖然とする。
―――まずい、このままじゃ、、
篠崎さんがクラスに馴染めなくなる。
『雲斎さんは長山グループで唯一まともな存在だよ。二年生に進級する付近で何かあったらしくて現状一人でいることが多いけど』
雲斎さんは訳あって友達が減ったと濁していた。中谷のこのセリフが鍵となるならナガッチ関係で何かしらの問題を生んだのではないだろうか。恐らく、その節もこうやってクラスメイトにばら撒いたのかもしれない。あれだけ、印象の良いナガッチのことだ、疑いなく大勢が信じるだろう。
「なるほど、見事な計略だな」
「……中谷」
耳元で優しく話すのは俺の一番の友人、中谷。おちゃらけな態度とは裏腹に頭は決して悪くない。
「ここで篠崎さんを潰し、付き従う理由の読めない雲斎さんをだしにして二人の一般的な好感度を格下げする。そうすることで、ライバルを減らす。なるほど、うまい具合の強硬手段だな」
「何の為にこんなことを…?」
「そりゃあ自分一人を見てほしいからなあ」
「誰に?」
「はぁ、だめだこりゃ」
両手でやれやれと形容する中谷に、俺は意味が分からないため一度視線を外す。強硬手段と言いつつ、中谷がナガッチに対して悪感情を抱いていないのも納得できない。
俺は未だに黙ったまま立ち尽くす一人の女子生徒に立ち寄る。
「大丈夫か…?」
「………うん」
泣きそうな篠崎さんの頭に手を置き、俺は深く息を吐く。
嘘八百もいいところ。那覇士の家庭事情を馬鹿にしたと言っていたが、知らなかっただけでそれに気付かず泣かせたのは仕方ないはずだ。それに謝る予定だってあったのに、此処でクラス大っぴらに暴露して誰が得をする?
面倒くさく拗らせただけ。って言うよりどうしてナガッチが知っているんだ。もしかして朝話してた辺り那覇士さんが言ったのか。
―――俺のせいか? 俺が篠崎さんと教室で会話したから、いやでも会話しただけでなんでこんなことになるんだ?
少し離れた席に方向を一致させる。クラスメイトがひそひそと情報を共有する取り組み最中、那覇士はポツンと単独で、頭を俯けていた。
ナガッチは篠崎さんと俺を拝見しながら不機嫌そうに留まっている。
「どうして……」
キンコーン、カンコーン。
ホームルームのチャイムが長い間、耳にこびり付いていた。
*****
〈謎の二人組〉
「あの空間、…少々厄介じゃな」
「人を貶めることに使ってる時点でもう確保していいんじゃない?」
「これ以上行動を起こすのならのぉ。今日の下校あたりにでも持ちかけるか」
「強硬手段は?」
「…上からの指示がないからのぉ」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる