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第一章
十七話 作戦
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『早いわね、全員揃うの』
『確かにな』
『うん』
全員の一斉メールから数秒、瞬く間にグループ通話が開始された。最初に開いたのは雲斎だが、篠崎さんが一秒もたたずにゴールインしたため、実質的に俺が入るのが遅くなったのは予想外。
『時間帯は八時ぴったり。みんなノリノリすぎ』
『それを言ったらキリが無いわ。早く始めましょう、ねえ篠崎さー』
『グス、グス』
『『!?』』
電話越しから篠崎さんが涙を流す情景が察しられた。
突然の豹変にびっくりして目がガン開きになる。
『お、おい、雲斎。お前まさかなんか脅しかけてるわけじゃあ、』
『そんなわけないでしょ! アタシにも原因はわからないわよ』
『ならどうして』
慌ててるのは雲斎も同じのようだ。理由を探ろうとするが、少しの空白の後に流れ出た篠崎の言葉に俺たちはハッとした。
『うんうん、大丈夫。二人には関係ない、ただ昔を思い出して』
『…昔?』
聞き返す雲斎とは打って変わり薄っすらと示しがついた。
―――中学生以前の過去のまだ上手くこなせていた時がフラッシュバックしたってことか。
篠崎さんの人生の全てが虐げられていたわけじゃない。その中には、色褪せない悦びに溢れた思い出だってあったはずだ。こういったありふれた行動の一つに感動して涙が流れてしまうこともある。
『大丈夫かしら、アタシ何か不味いことを知らぬ間に』
『気にしないで、心配ないから』
『雲斎、気にしなくていい。俺たちには関わりのないことだから』
『本当? でも篠崎さん泣いてー』
『それは俺たちがどうにかしてやれることじゃない。俺らが今できるのは、これからのことだ。そうだろう、篠崎さん』
返事を促すと、すぐさま相槌を打ってくれた篠崎さん。
五分ほど休憩をした後、この話は一度一区切りをさせ、俺ら三人は「篠崎さんの学校での振る舞い方」を主題の中心軸として、話を進める事とした。
『それで、まずはアタシからいいかしら』
『どうぞ』
『ん』
通話越しの雲斎の声色は些か曇っている気がした。意を決して喋る彼女の言葉に俺と篠崎さんは?マークを浮かべる。
『ナガッチに注意しろって? アイツのやりにくさは知ってるけど、一般的な評判いいじゃん。どうしてそうまでして忠告を』
『……やっぱり……、まあいいわ。篠崎さん、貴方は絶対気をつけて、不用意に彼女に近づかないで』
何か大切な事実をはぐらかすように言う雲斎。ある事柄を前提に話が関わっている予感がするが、肝心な何かが推測できない。
『ねえ、二人とも』
『『ん?』』
『ナガッチって誰?』
―――疑うどころかそれすら知らないのか。
無知すぎる言辞に呆れを持つもじっくりと説明する。
『ナガッチっていうのは、うちのクラスの長山陽葵のことだよ。出席番号一六番の弓道部で陽キャ中の陽キャ』
『そんな人いるんだ。新しいクラス人数多いから覚え切れない』
電話越しでメモを取る音が聞き取れた。
マメだなあ、と思う俺にもう一人の人間がこの場に見ない不思議じみた真相を問うてきた。
『ちょっとした疑問なんだけど、西岡くんは、ナガッチについてどう思っているの』
『なんでそんなことー』
『いいから』
ここで先日の友人の言葉が横切る。
「雲斎さんは長山グループで唯一まともな存在だよ。二年生に進級する付近で何かあったらしくて、現状一人でいること多いけど」
言っていいのか。ナガッチには注意しろって言っていたから彼女との交流はあまりないと捉えて大丈夫なのか。どうしてそんなことを聞いてくるのか理解できないが、それを探ろうとすればするほど、彼女たちの関係性に繋がる気がした。
『心配しないで。ナガッチはもう縁は切れてるから』
『縁が…切れてる?』
『そう。だから、気にせず真実だけを喋ってほしいわ』
芯の灯った話し方に、なんとなくだが嘘を吐いてはいけないと思った。
だからあくまで冷静に。
『俺とあの人じゃタイプが違う。それに上からの態度、会話のスタンスそれが嫌いだ』
『………はあ。言葉では言い表せないけど、貴方が篠崎さんと仲良くなった理由がわかった気がするわ。珍しいわよね、貴方みたいな人って』
ありがとう、そう告げて彼女は俺に的を向けなくなった。
それから時間にして約三十分。雑談もほどほどにエピローグは三つに分岐した。 雲斎は訳あって友達が減ってしまったと濁したため、都合よく学校では篠崎さんと二人で一緒に交流を深めていくことになった。学校で俺が篠崎さんと仲良くするのは禁止と言われ、挙げ句の果てに俺は後方支援という立場に成り下がる。
結論。この話し合い、絶対女子二人で良かったような気が………。
『確かにな』
『うん』
全員の一斉メールから数秒、瞬く間にグループ通話が開始された。最初に開いたのは雲斎だが、篠崎さんが一秒もたたずにゴールインしたため、実質的に俺が入るのが遅くなったのは予想外。
『時間帯は八時ぴったり。みんなノリノリすぎ』
『それを言ったらキリが無いわ。早く始めましょう、ねえ篠崎さー』
『グス、グス』
『『!?』』
電話越しから篠崎さんが涙を流す情景が察しられた。
突然の豹変にびっくりして目がガン開きになる。
『お、おい、雲斎。お前まさかなんか脅しかけてるわけじゃあ、』
『そんなわけないでしょ! アタシにも原因はわからないわよ』
『ならどうして』
慌ててるのは雲斎も同じのようだ。理由を探ろうとするが、少しの空白の後に流れ出た篠崎の言葉に俺たちはハッとした。
『うんうん、大丈夫。二人には関係ない、ただ昔を思い出して』
『…昔?』
聞き返す雲斎とは打って変わり薄っすらと示しがついた。
―――中学生以前の過去のまだ上手くこなせていた時がフラッシュバックしたってことか。
篠崎さんの人生の全てが虐げられていたわけじゃない。その中には、色褪せない悦びに溢れた思い出だってあったはずだ。こういったありふれた行動の一つに感動して涙が流れてしまうこともある。
『大丈夫かしら、アタシ何か不味いことを知らぬ間に』
『気にしないで、心配ないから』
『雲斎、気にしなくていい。俺たちには関わりのないことだから』
『本当? でも篠崎さん泣いてー』
『それは俺たちがどうにかしてやれることじゃない。俺らが今できるのは、これからのことだ。そうだろう、篠崎さん』
返事を促すと、すぐさま相槌を打ってくれた篠崎さん。
五分ほど休憩をした後、この話は一度一区切りをさせ、俺ら三人は「篠崎さんの学校での振る舞い方」を主題の中心軸として、話を進める事とした。
『それで、まずはアタシからいいかしら』
『どうぞ』
『ん』
通話越しの雲斎の声色は些か曇っている気がした。意を決して喋る彼女の言葉に俺と篠崎さんは?マークを浮かべる。
『ナガッチに注意しろって? アイツのやりにくさは知ってるけど、一般的な評判いいじゃん。どうしてそうまでして忠告を』
『……やっぱり……、まあいいわ。篠崎さん、貴方は絶対気をつけて、不用意に彼女に近づかないで』
何か大切な事実をはぐらかすように言う雲斎。ある事柄を前提に話が関わっている予感がするが、肝心な何かが推測できない。
『ねえ、二人とも』
『『ん?』』
『ナガッチって誰?』
―――疑うどころかそれすら知らないのか。
無知すぎる言辞に呆れを持つもじっくりと説明する。
『ナガッチっていうのは、うちのクラスの長山陽葵のことだよ。出席番号一六番の弓道部で陽キャ中の陽キャ』
『そんな人いるんだ。新しいクラス人数多いから覚え切れない』
電話越しでメモを取る音が聞き取れた。
マメだなあ、と思う俺にもう一人の人間がこの場に見ない不思議じみた真相を問うてきた。
『ちょっとした疑問なんだけど、西岡くんは、ナガッチについてどう思っているの』
『なんでそんなことー』
『いいから』
ここで先日の友人の言葉が横切る。
「雲斎さんは長山グループで唯一まともな存在だよ。二年生に進級する付近で何かあったらしくて、現状一人でいること多いけど」
言っていいのか。ナガッチには注意しろって言っていたから彼女との交流はあまりないと捉えて大丈夫なのか。どうしてそんなことを聞いてくるのか理解できないが、それを探ろうとすればするほど、彼女たちの関係性に繋がる気がした。
『心配しないで。ナガッチはもう縁は切れてるから』
『縁が…切れてる?』
『そう。だから、気にせず真実だけを喋ってほしいわ』
芯の灯った話し方に、なんとなくだが嘘を吐いてはいけないと思った。
だからあくまで冷静に。
『俺とあの人じゃタイプが違う。それに上からの態度、会話のスタンスそれが嫌いだ』
『………はあ。言葉では言い表せないけど、貴方が篠崎さんと仲良くなった理由がわかった気がするわ。珍しいわよね、貴方みたいな人って』
ありがとう、そう告げて彼女は俺に的を向けなくなった。
それから時間にして約三十分。雑談もほどほどにエピローグは三つに分岐した。 雲斎は訳あって友達が減ってしまったと濁したため、都合よく学校では篠崎さんと二人で一緒に交流を深めていくことになった。学校で俺が篠崎さんと仲良くするのは禁止と言われ、挙げ句の果てに俺は後方支援という立場に成り下がる。
結論。この話し合い、絶対女子二人で良かったような気が………。
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