青と春の少年タロット〜どうやら世界には異能の力があるらしい〜

柄山勇

文字の大きさ
上 下
11 / 51
第一章

十一話 不思議

しおりを挟む
「よし、今日の授業はここまで。お疲れー」 
 
 号令と共に授業が打ち止めとなった。六時間目の現代社会が終了し、やっと一日の半分ほどの時間が過ぎ去る。荷物をロッカーに入れて席にもたれ掛かると今日のビックイベントがまだ開始されてないことを再確認。 
 
 決行は今日の放課後。那覇士さんの部活が今週一週間ないことは中谷から確認済み…つまりこの期間が仲良くなる絶好のチャンス。 

―――周りの雰囲気から察して那覇士さんは友達がそこまで多くない、だから新しい人間は拒まないはず。 
 
 補足だが、篠崎さんはコミ症ではない。場のムードを握り消したとして、彼女自身から溢れる威圧的オーラを消してしまえば普通に会話が可能になる。(参考詳細は自分) 

 那覇士さんは根っからの真面目気質で一年の頃から教室の鍵を借りて単独で自習をしている。下校時間はきっかり五時三十分。水泳部は活動日が特殊で彼女が勉強をしてる時は大抵他の部活は活動中なので、放課後誰かといることはまず無い。 
 
 本日は篠崎さんが居残りを利用して、彼女たち二人しか存在しない空間を作り出させてもらう。それを俺が廊下から傍観しながら、もし何か不味い事が発生した場合、途中退場してもらう形だ。 

 篠崎さんには、両者通じ合える取っ掛かりを見つけて掘り下げろと言っており共通の話題を共有した後、一緒に下校するという考えになっている。我ながら割と良い得策だ。 

―――頼むぞ、上手く行ってくれ。 
 
 俺が願いを生じさせてから約二分。担任が、六時間目の教師と入れ違いで教卓に立った。  
 生徒を見渡し特にどうってことない連絡事項を伝える担任。マジで二年生なのに遅刻はダメだとかそんな当たり前のこと誰でもわかってるだろ。 
 
 無駄話は人をイラつかせる病原菌そのものだった。  

「気を付け、礼」 
「「「さようなら」」」 
 
 全員が帰りの挨拶をする。掃除を適当にこなし、同じく当番の中谷と雑談をしながら机を運ぶ。清掃中にナガッチが話しかけてくるため嫌気が刺して仕方なかったが、空返事を刻んでいたら拗ねてとっとと帰った。 

「なんか、色々と哀れだな」 
「何がだ」 
「いや別に」 

 変な憶測はやめてほしい。 
 
 先に中谷と別れ、疲れたように壁に立てかけた俺は、那覇志が鍵を受け取るのを見ていそいそと教室を出る。
 篠崎が上手くやれば五時半に二人は仲良く帰り道を共にすることになるが、雰囲気が悪くなったり拒否られたりした場合は俺が此処に入室して手助けするのを余儀なくされる。 
 
 廊下で見張る予定だったが、流石に厳しそうなので何か有れば連絡を入れるように促した。それまでどこで時間を潰すか悩むが結局は校内をぷらぷらと散歩することに。 

―――自習するのが適切なんだろうけどなー、勉強苦手だし。 
 
 天井に吊られた時計を見る。時刻は四時過ぎで五時半まで一時間ちょい猶予が或る。とても校内探索だけでは潰せない気がするが……篠崎さんのためだ、どうにかしよう。 
 
 図書館で時間を費やそうと別棟へ向かう。が、その数秒後、スマホのバイブ音がポケットを揺らした。 
    いくらなんでも早すぎだと、俺がスマホを取り出したところでその顔が疑惑へと変格する。 
 
 まったく交流のない相手からのメッセージ。 

―――どういうことだ……? 

『屋上まで来てくれない?』

 

 
 送信元は、

 

 

 雲斎桜莉だった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...