継承スキルで下克上!

オリオン

文字の大きさ
上 下
17 / 22

クイーンローチ

しおりを挟む
洞窟の最奥…俺達はそこで、クイーンローチの姿を見た。
その最奥は、今までの通路よりも断然巨大で
ピンク色の液体がクイーンローチが座す場に流れている。
クイーンローチの周りには他のジャイアントローチより少々巨大な
ジャイアントローチが、まるで騎士の様に鎮座する。
デカいゴキブリだというのに、人間の様なってのがいやだな。

「これがクイーンローチ…」

クイーンローチは今までのジャイアントローチとは違う姿だった。
殆どはゴキブリにそっくりではあるが、巨大な管の様な物が
自身から何本も飛び出しており、その管からピンクの液体を垂らしている。
足下にある、ピンク色の体液は、あいつの体液か…気持ち悪いとしか言えない。

「彼女がクイーンローチ、あのピンクの液体は厄介ですよ。
 触れた物を脱力させる効果があり、食らえば立ち回りが難しくなる。
 勿論、彼女を中心に展開してるので、有効打は遠距離攻撃です」
「待って、私もノクも接近戦なんだけど…」
「えぇ、相性は悪いですね」
「なら逃げようって!」
「いえ、放置しては危険ですからね。クイーンローチが流してるあの液体。
 あの中にはいくつかの卵が混在しており、時間が経つと孵化するのです。
 放置すれば、卵がドンドン孵り、ジャイアントローチが増えて行きます。
 それに、クイーンローチは動けません。ジャイアントローチを退けてくだされば
 私が彼女へ攻撃を仕掛けます。ジャイアントローチ達は
 意地でも女王を守ろうと、私を最優先で狙ってくると思うので
 私を守り続けてください」

遠距離攻撃が出来るのはアンヌさんだけだからな。
俺達は接近さえ出来ない…だから、アンヌさんを守ることしか出来ない訳か。

「そして、あの卵は一定の温度であれば、短期間で孵化するのですよ
 通常の100倍ほどの速度で。その温度は人間の体温です」
「だから、捕まれば確実に」
「そうなりますね」

いやすぎる! それに、体温がって事は生かされたままでって訳だろう!?
冗談じゃねぇ! マジで逃げたい…

「私、今最高に逃げたい気分…」
「俺も全力で逃げたい」
「私も嫌なんですよ? あんな気持ち悪いのを相手にするとか。
 しかも、捕まったらもれなく最悪のバットエンド確定ですよ?
 そりゃいやですよ、いやすぎますとも。でも、戦います」
「……うぅ」
「私達の役目は…一般人を守ることですからね。
 放置して居れば、遅かれ速かれ卵が孵化し、悲惨なことになります。
 そうなる前に、あのクイーンローチを撃破しなくてはいけません。
 クイーンローチは危険度が異常な程に高い魔物ですからね」

それは分かってる…話を聞いただけでも危険なのは分かる。
いくらでも増える人食いゴキブリとかいやすぎるっての!

「だから、戦うしか無い。幸い、そこまで強い魔物ではないので
 全力で戦いましょう」
「もう最悪…冒険家なんかにならなきゃ良かった…」
「俺も、家で料理作り続けてたら良かった…」
「私だって、のんびりと事務仕事しておけば良かったと後悔してますよ…」

それでも、やるしか無いのか…この気持ち悪い化け物を倒さないと駄目なのか…

「さ、行きましょう。作戦はさっき説明したとおりです。
 私がクイーンを狙いますので、皆様は私の防衛を。
 作戦と言えるほど物ではありませんがね」
「普通にただの防衛戦だし…」
「防衛戦は最も難しい戦いだったりしますので油断しないように」
「わ、分かりました」
「さぁ、行きますよ!」
「もう! やってやるわよ畜生!」
「女の子が畜生などとは言ってはいけませんよ?」
「女の子がゴキブリと戦うのもやってはいけないことだと思うけどね!」
「まぁまぁ、行きますよ!」
「もう!」

アンヌさんの合図で俺達はジャイアントローチの群れへ向う。
クイーンローチを攻撃出来るようにする為に
ひとまずはジャイアントローチの殲滅が重要だ。

「もう最悪ってね!」

そんな事を呟きながらも、マリちゃんは攻撃を仕掛ける。
槍でジャイアントローチの頭部を破壊する。
そして、すぐに引き抜き次のジャイアントローチを貫く。

「後ろ!」
「うわ!」

俺は背後からマリちゃんめがけて飛びかかってきた
ローチの頭部を、召喚した剣で貫き倒す。
俺はすぐに突き刺した剣を引き抜き、目の前のジャイアントローチに投げた。
まぁ、投擲技術があるわけじゃ無いから頭部には当らないが
一応、胴体にも当てる事が出来て、動きが鈍る。

「そら! あんたは正面甘いわよ!」

動きを鈍らせたジャイアントローチが飛んで来たが
そこをマリちゃんが槍で貫いてくれて事なきを得た。

「悪い、投擲苦手で」
「だったら投げなくても良いのに」
「剣を使って戦う方が弱いからさ」
「本当、私がいないと何も出来ないんだから」
「ふふ、あなたが言います?」
「わ、私は1人でも余裕で!」
「ほら、上ですよ上」
「危! この!」

ジャイアントローチが頭上から奇襲を仕掛けてくる。
俺達2人は身を躱し、すぐに反撃を仕掛けようとするが。

「や、やっぱり蹴るのは無理! 武器で刺さない、ひ!」

不意打ちを仕掛けてきた奴はすぐにマリちゃんに飛びかかろうとする。
やっぱりマリちゃんはゴキブリが苦手らしく、直接蹴ろうとするが躊躇う。
その隙にゴキブリは飛びかかってくる。

「躊躇うなよ!」

俺はすぐにゴキブリの後ろから剣を召喚する。
剣はゴキブリを貫通し、頭部を破壊した。

「あ、ありがとう…」
「やれやれ、やっぱりあなた達は1人では何も出来ないんですね」
「守られてる立場が偉そうに言わないでよ!」
「ほら、私はクイーンローチを攻撃するという大事な役目がありますんで」

俺達が交戦している間、アンヌさんはずっとクイーンローチを攻撃していた。
ある程度のダメージが入ったのか、クイーンローチが身じろぎをする。
その身じろぎに反応してか、クイーンローチの周りに騎士の様に
鎮座していたジャイアントローチが動き始めた。

「なん! うわはや!」
「他のジャイアントローチよりも断然早いぞこいつら!」
「ここからが本番です。ナイトローチの撃破をお願いします!」
「な、ナイトローチ!? ゴキブリのくせにナイトって!」
「そんな事を言ってる暇があるんですか?
 ナイトローチは他のジャイアントローチよりも圧倒的な実力を持つので
 油断していると、私達は全滅しますよ? 脅威度が高い相手を狙うので
 まずは私を狙いますが、防衛を続けていれば優先撃破順位を変え
 恐らくはマリさんに向って行くので油断をしない様に」
「もう最悪! 何か3匹いるしウザい!」
「冷静に対処するぞ! マリちゃん!」
「分かってるわよ! あんたも私の背中を守りなさい!」
「あ、私も守ってくださいね」
「分かってるよ!」

これはかなり面倒だな…あの速さで動く3匹の頭部を狙うのは怠いぞ!
しおりを挟む

処理中です...