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異世界サバイバル

三人は確かな道を行く(花咲)

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「お腹すいたなぁ」

 お昼からしばらく経って、おやつの時間。
 独りで花壇の様子を見回っていた花咲は、“今日も”もの足りなかったお昼を思い出して、眉尻を下げた。


 花咲は異世界に来てから、満足に食事をとっていない。
 日本に居たときは人の倍は食べていたが、ここではずっと我慢をしていた。

 単純に、こちらの食事が口に合わないという事情もあるが、一番の理由はダイエットだ。
 この世界で肥満のままだと、命に関わると思ったからだ。置いていかれた時は「間に合わなかった」「仕方がない」と、そうとしか思えなかった。
 四堂は二人を庇っていたが、その時の花咲はあまり感謝しておらず、なんでだろうと、ただ疑問に思っていただけである。

 世の中には、命を助けてもらって即落ちる女性というのも存在するが、花咲には当てはまらない。
 現状、二人の関係は「ただの協力者」であった。


「これからどうなるのかな……」

 一人でいると、考えなくてもいい事を考えてしまう。

「四堂君は……美味しいもの、作れるようになるのかなぁ」

 思考は食欲一択だが、花咲は無意識のまま、スキルで花壇を整える。
 花が足りなければ増やせばいい。
 季節を無視して花を咲かせ、『魔力回復促進』の効果を強化していく。複数の花壇を使って陣を描き、拠点の安全圏一帯にいると、魔力の回復量が増えるようにしているのだ。


 そんな彼女の頭の中は、日本で食べたコンビニのシュークリームで一杯だ。
 もう二度と食べれないだろう、スイーツ。
 その味を思い出して、悲しそうな顔をする。また食べたいと言って、くぅ、と花咲のお腹がなった。

 シュークリームだけではない。
 ケーキ、クッキー、マカロン、プリン、タルト……。ケーキバイキングで食べた甘味たちが擬人化して、どこか遠くから花咲に手を振っている姿を幻視した。

 そんな事を考えながら、今度は花壇で、『聖域』というモンスターが忌避する空間を作り上げる。
 正確には、モンスターを寄せ付けず聖獣などが好む場を作り上げているのだが、この場に聖獣はいないので、花咲は簡単に、モンスターを寄せ付けない場を作るスキルだと四堂に説明していた。


「ハチミツ、甘いんだけど……。牛乳もあるけど……。ベーキングパウダーも、卵も無いの…………」

 小麦粉は用意できる。花咲にはそれが可能だ。
 牛乳とハチミツも、四堂が用意できる。
 ただ、卵が無いからプリンは無理。ベーキングパウダーが無いから、ホットケーキも作れない。
 重曹、ベーキングパウダーは諦めるとしても、卵は運が良ければ手に入るかもしれないので、期待してしまう。


「……期待?」

 そう、期待だ。
 この先、作れるかもしれない甘味に、花咲は期待していた。

「もう少し、頑張る」

 花咲は、色々と諦めていた。
 だけど、絶望はしていない。

 ほんの僅かな希望を胸に、作業を続けようとして。

「終わってた?」

 もう終わらせていた事に、ようやく気が付いた。
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