カードクリエイターの魔境ダンジョン帝国

異世界サバイバル

三人には人手が足りていない

　今の拠点の周辺は、元クラスメイト達によって資源が奪いつくされた状態だった。
　四堂たちはその事を自覚したのだが。

「けど、それって時間が経てば元に戻りますよね」
「そうね。今は私たちだけだから、問題無いと思うわ」

　それは「今」問題なだけであって、「今後」も問題かというと、そういう話ではなかった。


　現在、この拠点には四堂たち３人と、ゴブリンが３人。
　合計、たった６人の集団がいるだけだ。
　そしてこの集団には、ユニークジョブというチートが２人しかいないし、その２人も資源を荒らしまわるタイプではない。
　環境への負荷は、相当低かった。

　だから時間が経てば他から動物が流れ込んでくると思われるし、そうなれば動物が植物も一緒に運んできてくれる。
　渡り鳥が火山の噴火でできた島に植物の種などを持ち込むように、危険な地域から安全な拠点の範囲内に動植物が流れ込んでくるのは期待できる。
　あとは自然の力が環境を整える。

　それを四堂たちが何も考えず荒らしさえしなければ、鳥などが居なくなるといった状況は避けられるだろう。
　もちろん、四堂たちにそのような事をする考えは無かった。


「それじゃ、しばらくは花咲さんに頑張ってもらって、拠点の安全圏を広げていくのが良いですかね？」
「そうかしら。それだけたくさんの土地を抱えても、私たちだけでは管理しきれないし、無駄になるだけよ」
「そうですか？」
「広い土地を抱えて。じゃあ、その土地は何をするために必要なのかしら？」
「そりゃ、農業とかじゃないですか。俺たちが１年間に消費する食料を賄える畑の大きさとか、分かりませんけど。けど、今の畑菜園の大きさじゃ、全然足りないのは分かりますよ」
「その畑を、誰が耕すの？　どうやって耕すの？」
「……花咲さんの部下を用意するのが、先っすね」
「ええ。四堂君に頼る状態から花咲さんに頼る状態になっては意味が無いわ。　“みんなで頑張って”やっていくのでしょう？　土地を広げるのであれば、先にもう少し仲間を増やしましょう。私も頑張って育てるわよ」
「うっす」


　現状、たった６人で生活をしているが、その生活には足りない物だらけだ。
　６人で文明的な生活をするというのが土台無理な話で、ユニークジョブが無ければ速攻で詰んでしまうのが現実である。

　人間に必要な物と言われる「衣食住」で、自分たちだけでまともに用意できるのは何もない。

　「食」だが、これは完全に四堂頼み。調理されていない素材を用意する事でコストを抑えているが、今は６人分の食料を出して、僅かに余裕を持たせている。これ以上はリスクが大きすぎた。
　「衣」と「住」に関しては論外である。これについては、どうにかできる人間の方がおかしいとも言う。
　特に「衣」については、糸を作った頃のある日本人がどれだけいるのか、という話だった。
　「住」であれば、一部のサバイバル好きや建築業の関係者なら、まだ何とかなるのだろうが……。それでも、そういった事が出来る人間の方がレアなのは間違いない。


　そういった事が出来る人材の育成。
　それ以前の、そういった事に人材を割り振れるだけの食料生産の余裕。

　問題と課題は山積みで、地道に切り崩していくしかない。
　花咲のスキルで四堂の魔力回復速度を上げて、スキルによる食料生産を増やす事。
　花咲が育てている作物が収穫できるようになる事。
　この２つを目標にやっていくしかない。

　あと１ヶ月もあれば、最初の畑から麦などの作物が収穫できる。
　そうすれば食料に余裕ができる、かもしれない。

　まずはそこまで頑張ろうと、三人は目の前の課題に挑むのだった。