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異世界サバイバル

三人は現実を知る

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「……すまない。今日空振りだ」

 四堂たちが異世界転移仲間のクラスメイトから取り残されて、およそ一ヶ月。
 四堂は、浅利と花咲に「何も手に入れていない」と頭を下げていた。

 この一ヶ月の間に、彼らの生活はそれなりに改善していた。
 住居はマシになり、食事のレパートリーも増え、ゴブリン三人娘は足し算と引き算を覚えた。花咲の花壇がモンスターの侵入を防ぐ結界を作り、魔力回復促進効果も発揮するようになった。
 まだまだ改善の余地は大きいものの、初期状態を考えると、進歩がうかがえる。


 ただ、いくつか頭打ちになった事もある。

 その筆頭は四堂の巡回で、彼が拠点の周囲を見回っても、特に得られる物が無くなっている。ここ10日ほど、持ち帰ってきた物はゼロであった。
 初期は花咲について来てもらい、珍しくて有用な植物を見付けていたのだが、最近はそれも無い。拠点の環境が整ってきたので、花咲は拠点での仕事が優先されている。
 今では、巡回の旨味はまったく無かった。




「生活負荷の環境限界かしら?」
「先生。それはどういうことですか?」
「今の季節、この周辺で収穫できそうなものは、もう全部収穫してしまった、という事よ」

 浅利は歴史の知識を基に、おおよその現状を説明する。

 自然の恵みは有限であり、無限に収穫できるわけではない。
 古来より人は数を頼みに生活していたが、半日で歩いて行ける範囲までが彼らの生活圏であり、その生活圏で手に入る自然の恵みが、彼らが纏まって生活できる上限となっていた。
 だから人々は小さな集落をいくつも作り、ある程度の規模で散らばって生活していたのだ。

 そこに「農業」、そして「道」と「交易」の概念が「集落」を「国」に変えていくのだが、それは別の話として。

「あの子達が人里を求めて旅に出たのも、ここではもう暮らしていけないと判断したからかもしれないわ。
 だから有用な資源は、ほとんど取り尽くされてしまったかもしれないの」

 クラスメイトたちは、ユニークジョブを持っていた。
 すごい力を持ったジョブのスキルで資源を漁り尽くし、効率が悪くなったから他に行く。
 そんなバッタの大群のような行動をしていて、自分たちはそんな「資源を搾り取られた土地」に取り残された。
 浅利はそのような予想を立てた。


「有りそうだな」
「酷い……」

 全ては浅利の予想の話だが、三人はそれが真実であるように思えた。
 正解かどうかはともかく、現状はこの予想と大きく乖離しておらず、真実かどうかは関係なかった。

「そりゃ、鳥もいなくなるかー」

 クラスメイトが居た時は、鶏肉や卵料理も普通に出ていた。
 それを食べていた時は四堂もただ美味い美味いと喜んでいたが、今となってはその能天気さに過去の自分を殴りたくなる。
 現状を打破するには、結界の外に出るぐらいの勇気が必要になる。


「今はまだ、焦ってはいけないわ。ここで出切ることをやりましょう」
「うっす!」

 自分たちの置かれた環境は、あまり良くない。
 しかし、四堂と花咲のジョブは、そんな環境でも変えられる。

 これまでとは方針を変え、三人は知恵を絞っていく事になる。




 ちなみに、難しい話について行けなかったゴブリン三人娘は、話の途中で寝てしまった。
 まだ子供なので、しゃーないのである。
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