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異世界サバイバル
三人は動き出す「食」①
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「花咲さん。新しい花を見つけたけど、使えそう?」
「うん。だ、大丈夫、だよ」
一人一人が、自分にできる事を。
そんな気持ちを持った三人は、それぞれが行動を開始した。
四堂は基本的に外回りである。
あとどれぐらい保たれるのか分からない結界の中で、使えそうな物を片っ端から集め、「家」まで持っていく。
「家」の周りでは、花咲が花壇の整備をしている。
特殊な効果のある花壇を作るため、花を増やせる環境を作っているのだ。
そこに外回りの四堂が花を持ち込み、徐々にその規模は大きくなっていった。
「7+8は、いくつになりますか? はい、夏鈴さん。答えてください」
「15です」
「正解! よくできました」
「えへへー」
「夏鈴ちゃん、すごーい!」
そして、「家」の中では、浅利が3人のゴブリンを相手に授業をしている。
主に算数。次に国語。オマケで社会――ではなく、日本史。
算数と国語はともかく、日本史が何の役に立つのか?
それは社会や技術の発展、その流れを学ぶ事で、ものの考え方を養う訓練としてである。
なぜ、争いが起きるのか。その争いはどうやって終わったのか。解決しているのか、していないのか。
そういった事例を知る事は、物事の先を予測する基準の一つになる。
年号を詰め込むだけでは意味が無いのは確かだが、世の中の大きな流れを知る事は、けして無駄な事ではないのだ。
「みんな、ご飯にしよう!」
「わーい!!」
「ごはんー!!」
「おにくー!!」
四堂が“スマホ”を確認すると、もう少しで昼と言った時間帯だった。
少し早いけれど、キリが良いという事で、四堂はみんなに呼び掛けた。
返事が早く、元気が良いのは勉強をしていたゴブリンの三人娘である。
彼女たちは勉強が嫌いという訳ではないが、それよりもご飯、特にお肉が大好きだったのである。昼食だと呼ばれれば、何を置いても駆けつける。
授業の区切りは確かに良かったが、それを放り出され置いて行かれた浅利は微笑ましいと思いつつも、苦笑していた。
「今日は、猪肉のステーキだよ」
「「「わーい!!」」」
「ステーキだ♪」
「ステーキだ♪」
「ステーキだったらステーキだ♪」
「「「うれしいなっ!!」」」
ゴブリン三人娘は、緑色の肌をした小鬼である。身長的には、人間の10歳児ぐらい。
それがごちそうを前に、三人で歌って踊って、楽しそうにしている。
確かに微笑ましい光景であるが。
「「……」」
同じメニューが続きやや食傷気味の、人間の女性二人は困り顔である。三人ほど素直に喜べない。
四堂のカードで食事を用意している都合上、どうしてもメニューは使いまわしになる。レパートリーが全然足りていない。
それが分かっている四堂だったが、メニューの変更などはしない。無い袖は振れないのだ。
精々、二人のお肉は1枚だったものを半分と少なめにして、代わりにサラダを足すぐらいしかできない。
なお、このステーキやサラダはクラスメイトと行動している時に出されたもので、四堂が自分の食事を犠牲にしてカード化した物である。
何度も飯を抜きたくなかった、もしくはカード化するための魔力が足りていなかった。そういった事情もあり、カード化された食事の枚数はそこまで多くない。
食事事情の改善は急務であるが、レパートリーは完全に犠牲になっている。
「うん。だ、大丈夫、だよ」
一人一人が、自分にできる事を。
そんな気持ちを持った三人は、それぞれが行動を開始した。
四堂は基本的に外回りである。
あとどれぐらい保たれるのか分からない結界の中で、使えそうな物を片っ端から集め、「家」まで持っていく。
「家」の周りでは、花咲が花壇の整備をしている。
特殊な効果のある花壇を作るため、花を増やせる環境を作っているのだ。
そこに外回りの四堂が花を持ち込み、徐々にその規模は大きくなっていった。
「7+8は、いくつになりますか? はい、夏鈴さん。答えてください」
「15です」
「正解! よくできました」
「えへへー」
「夏鈴ちゃん、すごーい!」
そして、「家」の中では、浅利が3人のゴブリンを相手に授業をしている。
主に算数。次に国語。オマケで社会――ではなく、日本史。
算数と国語はともかく、日本史が何の役に立つのか?
それは社会や技術の発展、その流れを学ぶ事で、ものの考え方を養う訓練としてである。
なぜ、争いが起きるのか。その争いはどうやって終わったのか。解決しているのか、していないのか。
そういった事例を知る事は、物事の先を予測する基準の一つになる。
年号を詰め込むだけでは意味が無いのは確かだが、世の中の大きな流れを知る事は、けして無駄な事ではないのだ。
「みんな、ご飯にしよう!」
「わーい!!」
「ごはんー!!」
「おにくー!!」
四堂が“スマホ”を確認すると、もう少しで昼と言った時間帯だった。
少し早いけれど、キリが良いという事で、四堂はみんなに呼び掛けた。
返事が早く、元気が良いのは勉強をしていたゴブリンの三人娘である。
彼女たちは勉強が嫌いという訳ではないが、それよりもご飯、特にお肉が大好きだったのである。昼食だと呼ばれれば、何を置いても駆けつける。
授業の区切りは確かに良かったが、それを放り出され置いて行かれた浅利は微笑ましいと思いつつも、苦笑していた。
「今日は、猪肉のステーキだよ」
「「「わーい!!」」」
「ステーキだ♪」
「ステーキだ♪」
「ステーキだったらステーキだ♪」
「「「うれしいなっ!!」」」
ゴブリン三人娘は、緑色の肌をした小鬼である。身長的には、人間の10歳児ぐらい。
それがごちそうを前に、三人で歌って踊って、楽しそうにしている。
確かに微笑ましい光景であるが。
「「……」」
同じメニューが続きやや食傷気味の、人間の女性二人は困り顔である。三人ほど素直に喜べない。
四堂のカードで食事を用意している都合上、どうしてもメニューは使いまわしになる。レパートリーが全然足りていない。
それが分かっている四堂だったが、メニューの変更などはしない。無い袖は振れないのだ。
精々、二人のお肉は1枚だったものを半分と少なめにして、代わりにサラダを足すぐらいしかできない。
なお、このステーキやサラダはクラスメイトと行動している時に出されたもので、四堂が自分の食事を犠牲にしてカード化した物である。
何度も飯を抜きたくなかった、もしくはカード化するための魔力が足りていなかった。そういった事情もあり、カード化された食事の枚数はそこまで多くない。
食事事情の改善は急務であるが、レパートリーは完全に犠牲になっている。
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