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異世界サバイバル
三人は自分のできることを教え合う③
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四堂が自分の能力について一通り言いたい事を言い終えると、今度は花咲が手を上げた。
「その……私も、自分の能力の事を、言っておきたくて。あの、ごめんなさい」
四堂に触発されて自分の事を話そうとした花咲だが、どうかしたのかと指導と浅利が視線を向けると、急に話す事が怖くなってとにかく頭を下げた。
四堂は元々そこそこ人と話せるほうだったが、花咲はそこまで人と喋る性質ではなく、どちらかと言えば休み時間は一人で読書をするような少女だったのである。自分が主体になって何か話すのは苦手なのだ。
今は、何か言う事で嫌われないか、馬鹿にされないか、呆れられないかと、怖くなってしまい、軽いパニックになっている。
「花咲さん。大丈夫よ。落ち着いて。
焦らなくても良いわ。ゆっくりと、落ち着いて。時間はあるもの。大丈夫よ」
花咲がテンパってしまったのを見た浅利は、小さな子供をあやすように、ゆっくりとした口調で話しかける。
四堂の時は「俺の話を聞いて欲しい」と力強く振る舞われたのが、浅利には、まるで自分が頼りなく劣る存在だと言われたようでどこか斜めに構える気持ちがあった。
だが、か弱く守るべきものとでもいうべき花咲の姿を見て、ようやく年長者としての自覚と、教師としての立場を思い出した。
守る相手を得た事で、浅利の精神は徐々に教師の形を取り戻していった。
浅利に背中を撫でられ、しばらくして花咲は落ち着きを取り戻した。
そうして、ようやく本題に入る。
「私の、能力の事です。
私のジョブ、『神域園芸家』は、花壇を作る事で、その周辺に、特殊な効果を発揮します。
お花の種類によって効果が変わって、その、モンスター除けの結界も、作れます。
あと、四堂君の近くに回復の花壇を作れば、魔力、もっと回復する、です。
だから花壇に植えるお花があれば、嬉しい、です。花を増やすのもできる、です」
コミュ障の気のある花咲は、たどたどしくも、自分の出来る事とその条件を伝えた。
花咲のジョブスキルの一つは『神域の花冠』という、花を使った結界魔法だ。
本人が説明したとおり、特定の条件を満たした花壇を作らないといけないが、出来る事は多岐にわたる。
その能力は、結界能力者に劣るものではない。
そんな彼女が役立たず扱いされていたのは、必要な花を集められなかった事、花という生き物を扱う以上、季節ごとに花壇を用意しなければ効果の維持が難しい事などが挙げられる。
一度作ってしまえば通常の結界魔法よりも管理が楽なのだが、咲いている花が無ければ何もできないという極端な特性は、見る者によってその価値を大きく変える。いなくなったクラスメイトの中には、彼女の進化を見抜ける者がいなかったようだ。
この話を聞いた四堂は喜びをあらわにしようとしたが、大きな声を上げて万歳したいほどの気持ちを何とか押さえつけた。
ここでそんな事をしようものなら、せっかく自分の能力を説明してくれた花咲が怖がってしまうかもしれないと、空気を読んだのだ。
「それなら、森に出た時に咲いている花を、周りの土ごと持ってくればいいよね?
うん。期待しているよ」
あまり大きな声を出さないように自制しながら、四堂は落ち着いた口調で語りかける。
ただ、四堂が無理をして喜びを押さえつけ格好をつけた結果、花咲は自分の能力の価値がどれぐらい凄いか正しく分からず、自身を過小評価する事になるのであった。
「その……私も、自分の能力の事を、言っておきたくて。あの、ごめんなさい」
四堂に触発されて自分の事を話そうとした花咲だが、どうかしたのかと指導と浅利が視線を向けると、急に話す事が怖くなってとにかく頭を下げた。
四堂は元々そこそこ人と話せるほうだったが、花咲はそこまで人と喋る性質ではなく、どちらかと言えば休み時間は一人で読書をするような少女だったのである。自分が主体になって何か話すのは苦手なのだ。
今は、何か言う事で嫌われないか、馬鹿にされないか、呆れられないかと、怖くなってしまい、軽いパニックになっている。
「花咲さん。大丈夫よ。落ち着いて。
焦らなくても良いわ。ゆっくりと、落ち着いて。時間はあるもの。大丈夫よ」
花咲がテンパってしまったのを見た浅利は、小さな子供をあやすように、ゆっくりとした口調で話しかける。
四堂の時は「俺の話を聞いて欲しい」と力強く振る舞われたのが、浅利には、まるで自分が頼りなく劣る存在だと言われたようでどこか斜めに構える気持ちがあった。
だが、か弱く守るべきものとでもいうべき花咲の姿を見て、ようやく年長者としての自覚と、教師としての立場を思い出した。
守る相手を得た事で、浅利の精神は徐々に教師の形を取り戻していった。
浅利に背中を撫でられ、しばらくして花咲は落ち着きを取り戻した。
そうして、ようやく本題に入る。
「私の、能力の事です。
私のジョブ、『神域園芸家』は、花壇を作る事で、その周辺に、特殊な効果を発揮します。
お花の種類によって効果が変わって、その、モンスター除けの結界も、作れます。
あと、四堂君の近くに回復の花壇を作れば、魔力、もっと回復する、です。
だから花壇に植えるお花があれば、嬉しい、です。花を増やすのもできる、です」
コミュ障の気のある花咲は、たどたどしくも、自分の出来る事とその条件を伝えた。
花咲のジョブスキルの一つは『神域の花冠』という、花を使った結界魔法だ。
本人が説明したとおり、特定の条件を満たした花壇を作らないといけないが、出来る事は多岐にわたる。
その能力は、結界能力者に劣るものではない。
そんな彼女が役立たず扱いされていたのは、必要な花を集められなかった事、花という生き物を扱う以上、季節ごとに花壇を用意しなければ効果の維持が難しい事などが挙げられる。
一度作ってしまえば通常の結界魔法よりも管理が楽なのだが、咲いている花が無ければ何もできないという極端な特性は、見る者によってその価値を大きく変える。いなくなったクラスメイトの中には、彼女の進化を見抜ける者がいなかったようだ。
この話を聞いた四堂は喜びをあらわにしようとしたが、大きな声を上げて万歳したいほどの気持ちを何とか押さえつけた。
ここでそんな事をしようものなら、せっかく自分の能力を説明してくれた花咲が怖がってしまうかもしれないと、空気を読んだのだ。
「それなら、森に出た時に咲いている花を、周りの土ごと持ってくればいいよね?
うん。期待しているよ」
あまり大きな声を出さないように自制しながら、四堂は落ち着いた口調で語りかける。
ただ、四堂が無理をして喜びを押さえつけ格好をつけた結果、花咲は自分の能力の価値がどれぐらい凄いか正しく分からず、自身を過小評価する事になるのであった。
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