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異世界サバイバル
三人は自分のできることを教え合う②
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まずは不安を取り除くように、食料事情に問題が無い事を説明した四堂。
次に花咲へ課題を与え、そこまでは同意を得た。
浅利のやる事は既に依頼済みなので、当面の話は一区切り付いた。
その『当面の課題』をするためのモチベーションとして、四堂は自分の能力を説明し、やる気アップを図る事にする。
「花咲さんが小麦の栽培に成功してパンとか作れるようになると、パンを作る分の魔力が他に回せるよね。
もっといえば、小麦がたくさん作れるなら、豆とかも作って、牛とかの飼育をゴブリンにやらせて、ミルクも手に入るように出来るよ。そうしたら、ミルクの分の魔力も要らなくなる。
その余った魔力で、生活をどんどん改善していけるようになるよ」
四堂は自分の能力を説明するのを兼ねて、先ほども見せた『砂混じりの塩パン』のカードを取り出した。
一度に複数枚見せられた時は気にしていなかったが、花咲と浅利は”砂混じりの”という部分に注目し、わずかに眉をひそめる。
日本人であり、少し前まではユニークジョブのチートスキルで調理された食事をとっていた人間にしてみれば、砂混じりの塩パンなど、下の下の食料として映るのは当然だ。
四堂はカードバインダーの最初のページを開き、場の空気を読まないような明るめの声で説明を続ける。
「例えばこのカード。最初に貰ったカードだけあって、ランクの低い、酷いカードだよね。砂混じりなんて書いてあるとか、嫌がらせじゃないかって思ったし。
でも、まぁ、俺のジョブは『カードクリエイター』なわけで。これをベースに自力でどうにかしろって話みたいなんだよ」
バインダーの開いたページには、9枚分のポケットが付いている。
うち左上には1枚のカードがセットされていて、中段と下段はポケットが黒くなっていた。
四堂は空いている上段の真ん中のポケットに先ほどのカードを入れると、ジョブ専用のスキルを発動する。
「≪カードクリエイト≫No.2『砂混じりの塩パン』、変化、コストを支払い砂を消去」
スキルが発動すると、『砂混じりの塩パン』はカードの枠が黒く変化すると同時に、カード名が『塩パン』に変化した。
また、カードの下に緑のゲージが現れ、じりじりと遅いペースで緑色の部分が減少していく。
「これが俺のスキルの一つ、≪カードクリエイト≫。文字通り、カードを創る能力なんだけど、今回は手持ちのカードの内容変更になるかな。あんまり大きな変更を一度にする事は出来ないし、コストに魔力を使うし、バインダーの枠を使っちゃうから一度に何枚も処理できないとか、面倒な制約は多いけどね。魔力に余裕があれば、結構色々と出来るよ。ご馳走とかも作れるようになるよ。
他にも、その辺にあるものをカードにしたり、複数のカードを合成したり、手持ちのカードをコピーしたりとか、まぁ、細かい話は追々と。
でも正直、三人分の食事やらなんやらを作るのに魔力を使うと、そこまで余裕もないんだ。
これまでの生活の中でチマチマと増やしたカードもあるけど、保険の為に魔力を使い過ぎるのも怖いからさ。今はあんまり気にしないで」
希望を与えて、そこから落とす。
ただ、這い上がれれば再び希望に手が届く。
四堂の話の組み立てには、そういう意図がある。
凄い事が出来ると教えた上で、不明点をわざと作り、やっぱり今は無理となかった事にする。
そして最後に、明言しなかったが「二人が頑張ってくれれば出来るようになるよ」と含みを持たせた。
上手くいくかは分からないが、ただの高校生の四堂は、なんとか自分の能力の説明を終えるのだった。
次に花咲へ課題を与え、そこまでは同意を得た。
浅利のやる事は既に依頼済みなので、当面の話は一区切り付いた。
その『当面の課題』をするためのモチベーションとして、四堂は自分の能力を説明し、やる気アップを図る事にする。
「花咲さんが小麦の栽培に成功してパンとか作れるようになると、パンを作る分の魔力が他に回せるよね。
もっといえば、小麦がたくさん作れるなら、豆とかも作って、牛とかの飼育をゴブリンにやらせて、ミルクも手に入るように出来るよ。そうしたら、ミルクの分の魔力も要らなくなる。
その余った魔力で、生活をどんどん改善していけるようになるよ」
四堂は自分の能力を説明するのを兼ねて、先ほども見せた『砂混じりの塩パン』のカードを取り出した。
一度に複数枚見せられた時は気にしていなかったが、花咲と浅利は”砂混じりの”という部分に注目し、わずかに眉をひそめる。
日本人であり、少し前まではユニークジョブのチートスキルで調理された食事をとっていた人間にしてみれば、砂混じりの塩パンなど、下の下の食料として映るのは当然だ。
四堂はカードバインダーの最初のページを開き、場の空気を読まないような明るめの声で説明を続ける。
「例えばこのカード。最初に貰ったカードだけあって、ランクの低い、酷いカードだよね。砂混じりなんて書いてあるとか、嫌がらせじゃないかって思ったし。
でも、まぁ、俺のジョブは『カードクリエイター』なわけで。これをベースに自力でどうにかしろって話みたいなんだよ」
バインダーの開いたページには、9枚分のポケットが付いている。
うち左上には1枚のカードがセットされていて、中段と下段はポケットが黒くなっていた。
四堂は空いている上段の真ん中のポケットに先ほどのカードを入れると、ジョブ専用のスキルを発動する。
「≪カードクリエイト≫No.2『砂混じりの塩パン』、変化、コストを支払い砂を消去」
スキルが発動すると、『砂混じりの塩パン』はカードの枠が黒く変化すると同時に、カード名が『塩パン』に変化した。
また、カードの下に緑のゲージが現れ、じりじりと遅いペースで緑色の部分が減少していく。
「これが俺のスキルの一つ、≪カードクリエイト≫。文字通り、カードを創る能力なんだけど、今回は手持ちのカードの内容変更になるかな。あんまり大きな変更を一度にする事は出来ないし、コストに魔力を使うし、バインダーの枠を使っちゃうから一度に何枚も処理できないとか、面倒な制約は多いけどね。魔力に余裕があれば、結構色々と出来るよ。ご馳走とかも作れるようになるよ。
他にも、その辺にあるものをカードにしたり、複数のカードを合成したり、手持ちのカードをコピーしたりとか、まぁ、細かい話は追々と。
でも正直、三人分の食事やらなんやらを作るのに魔力を使うと、そこまで余裕もないんだ。
これまでの生活の中でチマチマと増やしたカードもあるけど、保険の為に魔力を使い過ぎるのも怖いからさ。今はあんまり気にしないで」
希望を与えて、そこから落とす。
ただ、這い上がれれば再び希望に手が届く。
四堂の話の組み立てには、そういう意図がある。
凄い事が出来ると教えた上で、不明点をわざと作り、やっぱり今は無理となかった事にする。
そして最後に、明言しなかったが「二人が頑張ってくれれば出来るようになるよ」と含みを持たせた。
上手くいくかは分からないが、ただの高校生の四堂は、なんとか自分の能力の説明を終えるのだった。
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