4 / 22
プロローグ
クラスメイトとチートメイト
しおりを挟む
四堂たちカースト最下層の仕事は採取だけではない。
キャンプ地での雑用仕事も多く回される。
「ほい。大皿運ぶのよろしく」
「食材はどうだったー?」
「丸太、運んどいてー」
「服の洗浄と修復、やるよー」
多くの仕事はチートジョブを持つ者によって処理される。
料理を作る、家や家具を造る、モンスターと戦う。キャンプ地を結界で守ったり、怪我人の治療などもジョブ持ちが活躍している。
それぞれの専門家が担当するのは当然であり、むしろそうでなければ、ただの高校生だった彼らが未開の地で生活などできはしない。
だが、細々とした作業はジョブの範囲外である。
大量の荷物を運搬するのに『収納師』というアイテムボックス持ちが呼ばれるのは当然だが、料理人が作った料理をテーブルに運ぶ、すぐに使う物を倉庫に片付けておくのは誰でもできるし、ジョブ持ちに頼るほどの事でもない。
ジョブで貢献できない人間はジョブと関係の無い仕事をより多く割り振られていた。
「仕事の量は平等にしないとな!」
活躍できるチートジョブ持ちの貢献度は高く、仕事の成果を見れば確かに平等、むしろ四堂たちは楽をさせてもらっているようにも見える。
だがジョブ補正無しの仕事の方が体への負担が大きく、そういった事情は考慮されない。
集団における「平等」という言葉は、カースト上位の人間にとって都合が良いように解釈されてしまうのである。
約一ヶ月間に及ぶ集団生活の中でルールはどんどん増えていき、上の立場の人間はより上に、下の立場の人間はより下に。
状況が安定すると、支配者は「平等」で「公平」に、「正しい行為」をしていると、自分を肯定する。
そうして搾取の構造が出来上がる。
これを覆す事は容易ではなく、相応の力が必要になるのだが……虐げられる人数が最小限になると、その「相応の力」は生まれない。
声を上げる勇気を持っていたとしても、虐げられ続ける現状が、その勇気を腐らせていく。心が折れてしまう。
そうして支配者たちは、反対の声が無いからと、より自分の行為を正当化するのだ。
そして、その行きつく先は。
「みんな、聞いてくれ! 長くこの周辺を探索していたが、近くに人里が無いのはみんなも知っての通りだ!
だが、そろそろ人のいる場所を目指すべきだと思う! このキャンプ地を出て、人里を目指して旅に出よう!
川沿いに、下流を目指せば、きっと人の居る所までたどり着けるはずだ!!」
集団にとって不要な人間の、排除である。
「だけど、先生と花咲さんは……」
「着いて来られないようなら、仕方がない。ここに残ってもらおうと思っている」
集団の利益、それを最優先にした、弱者の切り捨て。
「みんなのために」を合言葉に、「みんな」ではない、誰かを作るのだ。
キャンプ地での雑用仕事も多く回される。
「ほい。大皿運ぶのよろしく」
「食材はどうだったー?」
「丸太、運んどいてー」
「服の洗浄と修復、やるよー」
多くの仕事はチートジョブを持つ者によって処理される。
料理を作る、家や家具を造る、モンスターと戦う。キャンプ地を結界で守ったり、怪我人の治療などもジョブ持ちが活躍している。
それぞれの専門家が担当するのは当然であり、むしろそうでなければ、ただの高校生だった彼らが未開の地で生活などできはしない。
だが、細々とした作業はジョブの範囲外である。
大量の荷物を運搬するのに『収納師』というアイテムボックス持ちが呼ばれるのは当然だが、料理人が作った料理をテーブルに運ぶ、すぐに使う物を倉庫に片付けておくのは誰でもできるし、ジョブ持ちに頼るほどの事でもない。
ジョブで貢献できない人間はジョブと関係の無い仕事をより多く割り振られていた。
「仕事の量は平等にしないとな!」
活躍できるチートジョブ持ちの貢献度は高く、仕事の成果を見れば確かに平等、むしろ四堂たちは楽をさせてもらっているようにも見える。
だがジョブ補正無しの仕事の方が体への負担が大きく、そういった事情は考慮されない。
集団における「平等」という言葉は、カースト上位の人間にとって都合が良いように解釈されてしまうのである。
約一ヶ月間に及ぶ集団生活の中でルールはどんどん増えていき、上の立場の人間はより上に、下の立場の人間はより下に。
状況が安定すると、支配者は「平等」で「公平」に、「正しい行為」をしていると、自分を肯定する。
そうして搾取の構造が出来上がる。
これを覆す事は容易ではなく、相応の力が必要になるのだが……虐げられる人数が最小限になると、その「相応の力」は生まれない。
声を上げる勇気を持っていたとしても、虐げられ続ける現状が、その勇気を腐らせていく。心が折れてしまう。
そうして支配者たちは、反対の声が無いからと、より自分の行為を正当化するのだ。
そして、その行きつく先は。
「みんな、聞いてくれ! 長くこの周辺を探索していたが、近くに人里が無いのはみんなも知っての通りだ!
だが、そろそろ人のいる場所を目指すべきだと思う! このキャンプ地を出て、人里を目指して旅に出よう!
川沿いに、下流を目指せば、きっと人の居る所までたどり着けるはずだ!!」
集団にとって不要な人間の、排除である。
「だけど、先生と花咲さんは……」
「着いて来られないようなら、仕方がない。ここに残ってもらおうと思っている」
集団の利益、それを最優先にした、弱者の切り捨て。
「みんなのために」を合言葉に、「みんな」ではない、誰かを作るのだ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
セラルフィの七日間戦争
炭酸吸い
ファンタジー
世界と世界を繋ぐ次元。その空間を渡ることができる数少ない高位生命体、《マヨイビト》は、『世界を滅ぼすほどの力を持つ臓器』を内に秘めていた。各世界にとって彼らは侵入されるべき存在では無い。そんな危険生物を排除する組織《DOS》の一人が、《マヨイビト》である少女、セラルフィの命を狙う。ある日、組織の男シルヴァリーに心臓を抜き取られた彼女は、残り『七日間しか生きられない体』になってしまった。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
RiCE CAkE ODySSEy
心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。
それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。
特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。
そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。
間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。
そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。
【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】
そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。
しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。
起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。
右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。
魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。
記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
勇者の生まれ変わり、異世界に転生する
六山葵
ファンタジー
かつて、勇者と魔王が存在し激しい戦闘を繰り広げていた。
両者は互いに一歩譲らなかったが、やがて勇者は魔王に決定的な一撃を与える。
しかし、魔王もまた勇者に必殺の一撃を残していた。
残りわずかとなった命が絶たれる前に勇者はなんとか聖剣に魔王を封印することに成功する。
時は流れ、現代地球。
一人の青年が不慮の事故で突然命を失ってしまう。
目覚めた真っ白な部屋で青年が自称神を名乗る老人に言われた言葉は
「君は勇者の生まれ変わりなのじゃ」
であった。
これは特別な力をほとんど持たないただの青年が、異世界の様々なことに怯えながらも魔王を倒すために果敢に挑戦する。
そんな王道ファンタジーである。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる