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第二章 訪問者
「何が幼気だ」 -1-
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メイド二人はフットマンに給仕をされながら、主人と同じテーブルについて、アフタヌーンティーを楽しんだ。
薔薇の香りが広がる紅茶に、チョコチップやレーズンの入ったスコーンが各種。
焼きたてのアップルパイと、甘みの間に食べると美味しいハムとチーズのサンドイッチ。
普段は口に入ることもないような、上等な食材を使用したお菓子と、高級なお茶。
食事を満喫し、主人と他愛ない会話をしながら、時計を気にすることもなく、ゆったりとした時間を過ごす。それはメイド二人にとって夢のような出来事であると同時に、主人であるエヴァンにとっても、楽しいひと時であった。
給仕をしているネイサンはもちろん、近くに控えたギルバートも会話に混ざった。その和やかな会は、さながらロウの歓迎会めいていた。
迷惑な客を追い返した邸宅はいつもの平穏を取り戻し、アフタヌーンティーの後はディナーも終えて、エヴァンはその日一日への満足感を胸に、ベッドに潜り込む。
「ご主人様、今日は楽しかったですね」
就寝前の身の回りの世話をしてくれていたネイサンの言葉に、エヴァンは笑みを返す。
「ああ、色々と騒動はあったが楽しかったな。時々、こうして皆と共に楽しむためのアフタヌーンティーを開催するのは、良いかもしれない。今回ネイサンはお茶とお菓子は食べられなかっただろう」
「それでも十分楽しみましたよ。ロウさんがスコーンをくれましたし」
「次にやるときは、全員で席につこう」
「そうすると、給仕をする者がいなくなりますが」
「各々自分のことは自分でやれば良いさ」
ネイサンは冗談を言われたのだと思って笑ったが、エヴァンは本気の顔をしていた。
エヴァンの体にかけた布団を直し、ネイサンはベッドサイドに置かれていた燭台を手に取る。
普段、エヴァンの部屋には小さな火炎岩が設置されているのだが、今はその火炎岩はミンスイの火炎小屋に貸し出してしまっている。よって、今は他の部屋と同様に、キッチンに設置されている火炎岩から炎をもらった蝋燭で、灯りをとっていた。
「おやすみなさいませ、ご主人様」
「おやすみ、ネイサン」
返事を受けネイサンは微笑むと、燭台を持って部屋を出た。
広い窓にはカーテンがかかっているため、月明かりも入らない。唯一の光源を失った部屋には完全な暗闇が満ち、エヴァンは目を閉じると、心地よい眠りへと落ちていった。
翌朝。
「ご主人様!」
いつもは優しく朝の訪れを知らせ、暖かいお茶と共に起床を促してくれるはずのネイサンが、大声を上げて部屋に飛び込んできた。その慌ただしさは前日の迷惑千万な訪問客を思い出させる。
エヴァンは昨日の出来事がトラウマになったかのように妙な不安感を覚えながら、目を擦り、体を起こした。
「どうした、そう慌てて」
「兵士のセルゴーがやってまいりました。夜の間に、ミンスイの火炎岩を盗んだ犯人を捕まえたと」
「おお、捕まったか。さすがセルゴーだな。それで、犯人は兵舎か?」
ユレイト領内に警察は存在せず、拘置場や刑務所などというものも無い。そのため、捕らえた人間を拘束しておける場所は、常に兵士が詰めており警備ができる兵舎ぐらいしかなかった。
犯人が現在いる場所について、半ば確信して問いかけたエヴァン。だが意外にも、ネイサンは首を横に振った。
「それが、まずはどうしてもご主人様に判断いただきたいと、犯人もセルゴーが連れたまま、こちらまでやってきておりまして。今はエントランスに待たせております」
つまり、二日連続で突然の訪問者がやってきたことになる。
事情を聞くと、エヴァンは急ぎベッドから出て支度を始めた。ネイサンもエヴァンの身支度を手伝い、前日と同じようにフロックコートを身に纏うと、部屋を出る。
二階の廊下を通って吹き抜けからエントランスを見下ろし、エヴァンは疑問を抱く。そこにはギルバートと話しているセルゴーの姿はあったが、彼が連れてきたという犯人の姿が見えなかったからだ。
エヴァンは不審に思いながらも階段を降り、エントランスへと降り立った。その姿を見て、セルゴーが頭を下げる。
「エヴァン様、おはようございます。早朝に邸宅まで押しかけてしまった無礼を、お許しください」
「構わない。セルゴーこそ寝ていないのではないか。大変な役目を任せてしまったな」
「いえ、無事に犯人を捕まえることができたのも、エヴァン様の策と采配のおかげです」
「セルゴーの能力の高さあってこそのものだよ。ところで、その犯人を連れてきたと聞いたのだが。いまどこに?」
あたりに視線を向けながらエヴァンが問うと、セルゴーは自身の後ろを振り向いた。そして何か促すような仕草をすると、彼の大きな体の後ろから、ひょこりと少年が顔を覗かせた。
「エヴァン様に自分の口からご挨拶を」
セルゴーが小声で囁くと、少年はようやく彼の後ろから現れた。身長は一二〇センチほど。赤銅色の髪に、若葉色の瞳。鼻の頭のあたりに散ったそばかすが印象的だ。ヒョロリと痩せた体躯をしている。
「僕はテディです。八歳です。その……本当にごめんなさい!」
テディと名乗った少年は、深々と頭を下げた。そして、頭を下げたまま顔を上げようとしない。彼の様子に面食らい、エヴァンはセルゴーを見る。視線を向けられたセルゴーは渋い表情をして、短く説明の言葉を口にする。
「火炎岩を盗んだのは、このテディでした。親はこのことに関していっさい関与しておらず、自分だけでやったことだと」
「なるほど、それで判断に迷ってここに連れてきたのか」
犯人が大人であれば、エヴァンに報告し処分が決まるまで、兵舎の鍵のかかる部屋にでも閉じ込めておけば良い。しかし、幼い子供に、そういった懲罰的な一時処置をしても良いものかどうか、セルゴーには判断がつかなかった。
「はい。それと、他にも理由が……テディ。昨晩俺に話したことを、エヴァン様にも話しなさい」
セルゴーに促され、テディはゆっくりと顔を上げる。そして、ためらいながらも口を開くと、そこからの説明は、実に流暢なものだった。
「僕はミンスイのはずれに住む農民の子です。父の酒癖が悪く、収穫した作物のほとんどを、自分が飲む酒に変えてきてしまいます。おかげで僕たち家族は満足な食事ができないので、病弱な母はよく体調を崩していました。それでも母は教会のシスターにお世話になって、たびたび治していただいていたのですが……去年の秋から大きな病にかかりました」
テディははっきりとした言葉で語りながらも、大きな瞳に涙を溜める。エヴァンは黙ったまま、引き込まれるように少年の話を聞いていた。
「母は毎日ひどい咳を続け、会話をすることも難しいほどです。肌からは血の気がひいて、雪のように白くなってしまいました。母の病状を見て、シスターは白息病だろうと言っていました。それはシスターのお力では治すことのできない、難しい病らしく、ユニコーンの角を砕き、粉末にして飲む他に治す方法はないそうです。しかしご存知のとおり、ユニコーンの角はとても高価なもので、僕たち家族が到底手に入れられるようなものではありません」
エヴァンは思わず唸る。白息病という病は知らなかったが、ユニコーンは存在自体が希少な幻獣だ。そのユニコーン一体につき生涯に一本しか生えない角が、いかに高価なものかということは知っている。わずか一欠片であっても、ミンスイの火炎小屋に置かれていた火炎岩よりも高価なものだ。
テディは話を続ける。
「父も最近では酒を控えるようになったのですが、それでも母の病気のことは、諦めるしかない、という様子で。僕が、僕が何とかしなければと思っていました。そんなとき、火炎小屋の窯が脆くなっていることに気づきました。皆の使っている火炎岩を盗むことは大変悪いことだとわかっていたのです。しかし、火炎岩を売れば、ユニコーンの角を買えるのではないかと思うと、いてもたってもいられなくて……僕はただ、優しい母に、死んでほしくなかったのです」
そこまでを語ると、テディは声を上げて泣き始めた。大きな瞳からは、美しい涙の粒がポロポロとこぼれ落ちる。
その横では、セルゴーが指先で目頭をつまみながら、やや上を向いていた。もらい泣きをしそうになって堪えているのだ。
エヴァンの胸にもグッとくるものがあり、少年と視線の高さを合わせるように、背を屈める。
「なるほど、事情はわかった。それで、盗んだ火炎岩は今どこに?」
「市場に来ていた商人に渡してしまいました。しかし、その商人はあれだけの火炎岩だけではユニコーンの角を渡すことはできないから、他の品物を用意してくるまで預かっておくと……それで、僕はまた、領主様が皆のためにと置いて下さった火炎岩までも盗もうとして……本当にごめんなさい」
火炎岩を商人に渡してしまった、という言葉に、エヴァンは軽く眉を寄せる。町の市場に来ているような商人が、希少なユニコーンの角を扱っているとは考えにくい。もはやその商人は、渡された火炎岩を持ってユレイトを離れていると思われた。
しかしエヴァンは意識して微笑みを浮かべると、テディの俯いてしまった頭に手をやり、優しくゆっくりと撫でた。
「そうか、事情はわかった。辛い話をしてくれてありがとう。母を思っての子の行動を、咎めることなどできない。火炎岩は新しいものを手に入れるようにするので、心配しなくて良い。しかし、今度もし困ったことがあれば、自分で何かをしようとせず、初めから俺を頼ってくれ。ユニコーンの角の入手も、俺がどうにかしよう」
「はい、はいっ……ありがとうございます、りょうしゅさまぁー」
エヴァンの慈悲に溢れた言葉に、テディは感極まった様子でエヴァンに抱きつく。エヴァンも微笑みながらそんなテディの体を受け止め、彼の背を撫でた。
セルゴーが思わずと言った様子で拍手をすると、そばで見守っていたネイサンとギルバートも手を叩き、頷いている。
薔薇の香りが広がる紅茶に、チョコチップやレーズンの入ったスコーンが各種。
焼きたてのアップルパイと、甘みの間に食べると美味しいハムとチーズのサンドイッチ。
普段は口に入ることもないような、上等な食材を使用したお菓子と、高級なお茶。
食事を満喫し、主人と他愛ない会話をしながら、時計を気にすることもなく、ゆったりとした時間を過ごす。それはメイド二人にとって夢のような出来事であると同時に、主人であるエヴァンにとっても、楽しいひと時であった。
給仕をしているネイサンはもちろん、近くに控えたギルバートも会話に混ざった。その和やかな会は、さながらロウの歓迎会めいていた。
迷惑な客を追い返した邸宅はいつもの平穏を取り戻し、アフタヌーンティーの後はディナーも終えて、エヴァンはその日一日への満足感を胸に、ベッドに潜り込む。
「ご主人様、今日は楽しかったですね」
就寝前の身の回りの世話をしてくれていたネイサンの言葉に、エヴァンは笑みを返す。
「ああ、色々と騒動はあったが楽しかったな。時々、こうして皆と共に楽しむためのアフタヌーンティーを開催するのは、良いかもしれない。今回ネイサンはお茶とお菓子は食べられなかっただろう」
「それでも十分楽しみましたよ。ロウさんがスコーンをくれましたし」
「次にやるときは、全員で席につこう」
「そうすると、給仕をする者がいなくなりますが」
「各々自分のことは自分でやれば良いさ」
ネイサンは冗談を言われたのだと思って笑ったが、エヴァンは本気の顔をしていた。
エヴァンの体にかけた布団を直し、ネイサンはベッドサイドに置かれていた燭台を手に取る。
普段、エヴァンの部屋には小さな火炎岩が設置されているのだが、今はその火炎岩はミンスイの火炎小屋に貸し出してしまっている。よって、今は他の部屋と同様に、キッチンに設置されている火炎岩から炎をもらった蝋燭で、灯りをとっていた。
「おやすみなさいませ、ご主人様」
「おやすみ、ネイサン」
返事を受けネイサンは微笑むと、燭台を持って部屋を出た。
広い窓にはカーテンがかかっているため、月明かりも入らない。唯一の光源を失った部屋には完全な暗闇が満ち、エヴァンは目を閉じると、心地よい眠りへと落ちていった。
翌朝。
「ご主人様!」
いつもは優しく朝の訪れを知らせ、暖かいお茶と共に起床を促してくれるはずのネイサンが、大声を上げて部屋に飛び込んできた。その慌ただしさは前日の迷惑千万な訪問客を思い出させる。
エヴァンは昨日の出来事がトラウマになったかのように妙な不安感を覚えながら、目を擦り、体を起こした。
「どうした、そう慌てて」
「兵士のセルゴーがやってまいりました。夜の間に、ミンスイの火炎岩を盗んだ犯人を捕まえたと」
「おお、捕まったか。さすがセルゴーだな。それで、犯人は兵舎か?」
ユレイト領内に警察は存在せず、拘置場や刑務所などというものも無い。そのため、捕らえた人間を拘束しておける場所は、常に兵士が詰めており警備ができる兵舎ぐらいしかなかった。
犯人が現在いる場所について、半ば確信して問いかけたエヴァン。だが意外にも、ネイサンは首を横に振った。
「それが、まずはどうしてもご主人様に判断いただきたいと、犯人もセルゴーが連れたまま、こちらまでやってきておりまして。今はエントランスに待たせております」
つまり、二日連続で突然の訪問者がやってきたことになる。
事情を聞くと、エヴァンは急ぎベッドから出て支度を始めた。ネイサンもエヴァンの身支度を手伝い、前日と同じようにフロックコートを身に纏うと、部屋を出る。
二階の廊下を通って吹き抜けからエントランスを見下ろし、エヴァンは疑問を抱く。そこにはギルバートと話しているセルゴーの姿はあったが、彼が連れてきたという犯人の姿が見えなかったからだ。
エヴァンは不審に思いながらも階段を降り、エントランスへと降り立った。その姿を見て、セルゴーが頭を下げる。
「エヴァン様、おはようございます。早朝に邸宅まで押しかけてしまった無礼を、お許しください」
「構わない。セルゴーこそ寝ていないのではないか。大変な役目を任せてしまったな」
「いえ、無事に犯人を捕まえることができたのも、エヴァン様の策と采配のおかげです」
「セルゴーの能力の高さあってこそのものだよ。ところで、その犯人を連れてきたと聞いたのだが。いまどこに?」
あたりに視線を向けながらエヴァンが問うと、セルゴーは自身の後ろを振り向いた。そして何か促すような仕草をすると、彼の大きな体の後ろから、ひょこりと少年が顔を覗かせた。
「エヴァン様に自分の口からご挨拶を」
セルゴーが小声で囁くと、少年はようやく彼の後ろから現れた。身長は一二〇センチほど。赤銅色の髪に、若葉色の瞳。鼻の頭のあたりに散ったそばかすが印象的だ。ヒョロリと痩せた体躯をしている。
「僕はテディです。八歳です。その……本当にごめんなさい!」
テディと名乗った少年は、深々と頭を下げた。そして、頭を下げたまま顔を上げようとしない。彼の様子に面食らい、エヴァンはセルゴーを見る。視線を向けられたセルゴーは渋い表情をして、短く説明の言葉を口にする。
「火炎岩を盗んだのは、このテディでした。親はこのことに関していっさい関与しておらず、自分だけでやったことだと」
「なるほど、それで判断に迷ってここに連れてきたのか」
犯人が大人であれば、エヴァンに報告し処分が決まるまで、兵舎の鍵のかかる部屋にでも閉じ込めておけば良い。しかし、幼い子供に、そういった懲罰的な一時処置をしても良いものかどうか、セルゴーには判断がつかなかった。
「はい。それと、他にも理由が……テディ。昨晩俺に話したことを、エヴァン様にも話しなさい」
セルゴーに促され、テディはゆっくりと顔を上げる。そして、ためらいながらも口を開くと、そこからの説明は、実に流暢なものだった。
「僕はミンスイのはずれに住む農民の子です。父の酒癖が悪く、収穫した作物のほとんどを、自分が飲む酒に変えてきてしまいます。おかげで僕たち家族は満足な食事ができないので、病弱な母はよく体調を崩していました。それでも母は教会のシスターにお世話になって、たびたび治していただいていたのですが……去年の秋から大きな病にかかりました」
テディははっきりとした言葉で語りながらも、大きな瞳に涙を溜める。エヴァンは黙ったまま、引き込まれるように少年の話を聞いていた。
「母は毎日ひどい咳を続け、会話をすることも難しいほどです。肌からは血の気がひいて、雪のように白くなってしまいました。母の病状を見て、シスターは白息病だろうと言っていました。それはシスターのお力では治すことのできない、難しい病らしく、ユニコーンの角を砕き、粉末にして飲む他に治す方法はないそうです。しかしご存知のとおり、ユニコーンの角はとても高価なもので、僕たち家族が到底手に入れられるようなものではありません」
エヴァンは思わず唸る。白息病という病は知らなかったが、ユニコーンは存在自体が希少な幻獣だ。そのユニコーン一体につき生涯に一本しか生えない角が、いかに高価なものかということは知っている。わずか一欠片であっても、ミンスイの火炎小屋に置かれていた火炎岩よりも高価なものだ。
テディは話を続ける。
「父も最近では酒を控えるようになったのですが、それでも母の病気のことは、諦めるしかない、という様子で。僕が、僕が何とかしなければと思っていました。そんなとき、火炎小屋の窯が脆くなっていることに気づきました。皆の使っている火炎岩を盗むことは大変悪いことだとわかっていたのです。しかし、火炎岩を売れば、ユニコーンの角を買えるのではないかと思うと、いてもたってもいられなくて……僕はただ、優しい母に、死んでほしくなかったのです」
そこまでを語ると、テディは声を上げて泣き始めた。大きな瞳からは、美しい涙の粒がポロポロとこぼれ落ちる。
その横では、セルゴーが指先で目頭をつまみながら、やや上を向いていた。もらい泣きをしそうになって堪えているのだ。
エヴァンの胸にもグッとくるものがあり、少年と視線の高さを合わせるように、背を屈める。
「なるほど、事情はわかった。それで、盗んだ火炎岩は今どこに?」
「市場に来ていた商人に渡してしまいました。しかし、その商人はあれだけの火炎岩だけではユニコーンの角を渡すことはできないから、他の品物を用意してくるまで預かっておくと……それで、僕はまた、領主様が皆のためにと置いて下さった火炎岩までも盗もうとして……本当にごめんなさい」
火炎岩を商人に渡してしまった、という言葉に、エヴァンは軽く眉を寄せる。町の市場に来ているような商人が、希少なユニコーンの角を扱っているとは考えにくい。もはやその商人は、渡された火炎岩を持ってユレイトを離れていると思われた。
しかしエヴァンは意識して微笑みを浮かべると、テディの俯いてしまった頭に手をやり、優しくゆっくりと撫でた。
「そうか、事情はわかった。辛い話をしてくれてありがとう。母を思っての子の行動を、咎めることなどできない。火炎岩は新しいものを手に入れるようにするので、心配しなくて良い。しかし、今度もし困ったことがあれば、自分で何かをしようとせず、初めから俺を頼ってくれ。ユニコーンの角の入手も、俺がどうにかしよう」
「はい、はいっ……ありがとうございます、りょうしゅさまぁー」
エヴァンの慈悲に溢れた言葉に、テディは感極まった様子でエヴァンに抱きつく。エヴァンも微笑みながらそんなテディの体を受け止め、彼の背を撫でた。
セルゴーが思わずと言った様子で拍手をすると、そばで見守っていたネイサンとギルバートも手を叩き、頷いている。
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