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プロローグ
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三日月の晩。月光の弱さを補うように、夜空には満天の星が広がる。
その、いまにも降り出しそうな星の下に、石造りの美しい邸宅が建っている。敷地は、同じく石造りの塀によって囲われていた。牧歌的な領地を治める、若き領主の在所である。
そして、星空の下にはもう一つ。領主邸近くの草原を横切る、怪しい人影があった。闇にとけこむ黒尽くめの服を着て、フードを目深にかぶっている。
その者は周囲を警戒しながらも、ためらう様子はなく邸宅へと接近。腰につけていた鉤爪ロープを取り出し、手慣れた投擲で鉤爪部分を塀の上へと放る。
手元に残したロープの端を引きながら、鉤爪がたしかに塀にかかったのを確認した。
そのとき頭上から、低い男の声がした。
「こんなところまで追ってくるんじゃねぇよ。主人に迷惑がかかるだろうが」
声を頼りに見上げれば、三日月の光を背に、声の主のシルエットが浮かび上がる。男はいつの間にか高い塀の上に平然と立ち、腰に手を当て、怪しい人影を見下ろしていた。
男は軽い身のこなしで塀から飛び降りる。その動きに合わせて、彼のまとう豊かな布地がなびいた。
彼は着地と同時に、慣れた様子でロングスカートをさばく。そして、ガーターベルトに挟み、隠し持っていたナイフを二本取り出し、両手に構えた。
弱い月光が、かろうじて声の主の姿を闇夜に照らし出す。
男は、メイド服を着ていた。
その、いまにも降り出しそうな星の下に、石造りの美しい邸宅が建っている。敷地は、同じく石造りの塀によって囲われていた。牧歌的な領地を治める、若き領主の在所である。
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その者は周囲を警戒しながらも、ためらう様子はなく邸宅へと接近。腰につけていた鉤爪ロープを取り出し、手慣れた投擲で鉤爪部分を塀の上へと放る。
手元に残したロープの端を引きながら、鉤爪がたしかに塀にかかったのを確認した。
そのとき頭上から、低い男の声がした。
「こんなところまで追ってくるんじゃねぇよ。主人に迷惑がかかるだろうが」
声を頼りに見上げれば、三日月の光を背に、声の主のシルエットが浮かび上がる。男はいつの間にか高い塀の上に平然と立ち、腰に手を当て、怪しい人影を見下ろしていた。
男は軽い身のこなしで塀から飛び降りる。その動きに合わせて、彼のまとう豊かな布地がなびいた。
彼は着地と同時に、慣れた様子でロングスカートをさばく。そして、ガーターベルトに挟み、隠し持っていたナイフを二本取り出し、両手に構えた。
弱い月光が、かろうじて声の主の姿を闇夜に照らし出す。
男は、メイド服を着ていた。
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