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2.亮太視点
2-5.クズの本性
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だが、過去のツケというのは、気を抜いた瞬間にやってくる。
颯人のアパートを出てすぐだった。ふと視線を感じてそちらを見ると見覚えのある顔があった。
「オマエ……」
あのオンナだった。
「実家帰るとかいって、私から逃げるためだったんじゃない! 別のオンナのアパート行ってたんでしょ!? あのアパートに新しいオンナがいるの!?」
オンナの目がおかしい。正気ではない。
こんなところで騒がれて、颯人に気づかれたくない。
「……ちがう。 たまたまダチのところに泊まりに来ただけだって……」
心のなかで舌打ちをしていたが、表向きは優しい声色を出し、肩を抱いてその場から離れる。
「……泣かないで。 落ち着いて……ね?」
オンナは俺にキスをねだり、ホテルへと入りたがったが、颯人とした後にこのオンナで上書きする気はさらさらなかった。朝見るにはグロテスクな厚化粧。
涙で目の周りの化粧が落ちて黒い涙が流れていた。
俺達は近くの喫茶店へと入る。
「ホントにたまたま来ただけなんだって。 ほら、今、俺マジメに予備校通っててさ……」
予備校の学生証を財布から取り出してオンナにちらりと見せた。さり気なく本名や学校名を指で隠して。これ以上つきまとわれたらたまらない。
「こうやって、やりなおそうって思ったのもオマエのおかげだよ……だからオマエも俺のこと忘れて幸せになれよ……」
さすがの俺も、心にもない言葉を口にして顔がひきつったが気づかれないように顔を伏せた。
「そんな事言って、体よく追い払おうとしてるんでしょ!? それにあのアパートから出てくるの何回も見たんだから!!」
「……はぁ? オマエ、俺ンとこ、つけてたの……?」
怒りのあまり、溢れ出るアルファの威嚇。颯人のアパートまで特定しているとか、許せない。
「ひっ……た、たまたま駅で見かけて……こ、えかけようと思ったんだけど……だ、って、リョウ、私からの連絡全部ブロックしてるし……」
俺の威嚇に周囲の客までもガタガタ震え始めた。
「これ以上俺につきまとったり、あのアパート行ったりしたら、マジで殺す。 はっきり言わないとわかんねぇ? オマエ、もう必要ねぇんだよ。 俺、オマエの虚栄心満たすために十分かわいいヒモしてやっただろ? それで満足しろよ。 引き際見極めねぇと、オマエもっと沈むよ?」
真っ青になって首を縦にふるオンナを見て、テーブルの伝票を取り上げる。
「今までのお礼にここは俺がおごるよ。 それでおしまい。 じゃぁな」
颯人のアパートを特定されて、つい素の自分が出てぶちギレてしまったが、冷静になってみると「颯人はオンナじゃねぇか」と自分の過剰な反応に笑ってしまった。
我ながら颯人のことになると見境がない。颯人に見せている顔は別の顔。優しいヒーローの俺。
俺はホストの知り合いに連絡した。
『なに、リョウちん、やっと一緒に働く気になったー?』
「いや、そうじゃなくて。 俺、アイツと別れたんだけどさ、アイツ納得してないみたいで。 お前のテクニックで落とせねぇ?」
『マジで? いいの? 彼女、すっげー貢ぐタイプでしょ? 助かるー♡ 俺、今月売上厳しかったんだよねー♡ 俺、傷ついてるお姫様慰めるの得意だしい? 薄情リョウちんの後ならやりやすそー♡』
「信用してるからな」
つくづく俺はクズだな、と思った。俺にとっては颯人が理由になれば、どんなことだってするのだ。
颯人のアパートを出てすぐだった。ふと視線を感じてそちらを見ると見覚えのある顔があった。
「オマエ……」
あのオンナだった。
「実家帰るとかいって、私から逃げるためだったんじゃない! 別のオンナのアパート行ってたんでしょ!? あのアパートに新しいオンナがいるの!?」
オンナの目がおかしい。正気ではない。
こんなところで騒がれて、颯人に気づかれたくない。
「……ちがう。 たまたまダチのところに泊まりに来ただけだって……」
心のなかで舌打ちをしていたが、表向きは優しい声色を出し、肩を抱いてその場から離れる。
「……泣かないで。 落ち着いて……ね?」
オンナは俺にキスをねだり、ホテルへと入りたがったが、颯人とした後にこのオンナで上書きする気はさらさらなかった。朝見るにはグロテスクな厚化粧。
涙で目の周りの化粧が落ちて黒い涙が流れていた。
俺達は近くの喫茶店へと入る。
「ホントにたまたま来ただけなんだって。 ほら、今、俺マジメに予備校通っててさ……」
予備校の学生証を財布から取り出してオンナにちらりと見せた。さり気なく本名や学校名を指で隠して。これ以上つきまとわれたらたまらない。
「こうやって、やりなおそうって思ったのもオマエのおかげだよ……だからオマエも俺のこと忘れて幸せになれよ……」
さすがの俺も、心にもない言葉を口にして顔がひきつったが気づかれないように顔を伏せた。
「そんな事言って、体よく追い払おうとしてるんでしょ!? それにあのアパートから出てくるの何回も見たんだから!!」
「……はぁ? オマエ、俺ンとこ、つけてたの……?」
怒りのあまり、溢れ出るアルファの威嚇。颯人のアパートまで特定しているとか、許せない。
「ひっ……た、たまたま駅で見かけて……こ、えかけようと思ったんだけど……だ、って、リョウ、私からの連絡全部ブロックしてるし……」
俺の威嚇に周囲の客までもガタガタ震え始めた。
「これ以上俺につきまとったり、あのアパート行ったりしたら、マジで殺す。 はっきり言わないとわかんねぇ? オマエ、もう必要ねぇんだよ。 俺、オマエの虚栄心満たすために十分かわいいヒモしてやっただろ? それで満足しろよ。 引き際見極めねぇと、オマエもっと沈むよ?」
真っ青になって首を縦にふるオンナを見て、テーブルの伝票を取り上げる。
「今までのお礼にここは俺がおごるよ。 それでおしまい。 じゃぁな」
颯人のアパートを特定されて、つい素の自分が出てぶちギレてしまったが、冷静になってみると「颯人はオンナじゃねぇか」と自分の過剰な反応に笑ってしまった。
我ながら颯人のことになると見境がない。颯人に見せている顔は別の顔。優しいヒーローの俺。
俺はホストの知り合いに連絡した。
『なに、リョウちん、やっと一緒に働く気になったー?』
「いや、そうじゃなくて。 俺、アイツと別れたんだけどさ、アイツ納得してないみたいで。 お前のテクニックで落とせねぇ?」
『マジで? いいの? 彼女、すっげー貢ぐタイプでしょ? 助かるー♡ 俺、今月売上厳しかったんだよねー♡ 俺、傷ついてるお姫様慰めるの得意だしい? 薄情リョウちんの後ならやりやすそー♡』
「信用してるからな」
つくづく俺はクズだな、と思った。俺にとっては颯人が理由になれば、どんなことだってするのだ。
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