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2.亮太視点
2-3.堕ちる
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高校卒業して、俺は不甲斐ない自分が申し訳なくて家を出た。たった一つの恋愛を失っただけでこのザマだ。
頭ではわかっているが、俺にとっては唯一無二の恋愛だったのだ。
行く宛もなく、行きずりの女性やオメガの家に転がり込んだ。求められるままにセックスをして、20歳になってもいないのに酒を飲んで、ずっと酔っ払っているような生活をした。それでもセックスをしていれば、酒を飲んでいれば、颯人の事を忘れられる。
そんな日々の中で、過去の知人に呼び出されて出かけたのは、その時よく世話になっていたオンナがめんどくさかったからだ。
一回り年上のソープで働いているオンナ。ちょいメンヘラ気味。自分だってホストに狂って借金を負わされて身持ちを崩したというのに、俺を養っていると言うだけで事あるごとにマウントを取り、説教してきた。
いや、俺はこんなオンナからも下に見られるくらい堕ちたのだな、と思った。だが、そんなことは表情に出さずヘラヘラと笑う。
「ダチと飲んでくるから飲み代ちょーだい♡」
俺はそのオンナに買ってもらった服を着て、お小遣いまで貰って中高の同級生に会いに行った。
本当はこんな堕ちた姿など過去の知り合いに見せたくはなかった。だが、その同級生には以前、そのオンナと喧嘩したときにしばらく泊めてもらった恩があったので断りづらかった。
そして行ってみれば、そこには幼稚園と小学校の同級生だった鈴木がいた。その同級生とは今大学が一緒で、出身校の話からたまたま俺の話になったのだという。
俺は鈴木のことをよく覚えていた。颯人をよくからかっていた相手だ。多分こいつも当時は颯人に気があったのだと思う。
相手は青春を謳歌している大学生。片や俺はヒモ。
俺は悔しくて少し話を盛った。頑張らなくても養ってくれるやつがいる。セックスで満足させればいい。俺はちゃらんぽらんでもそれなりに楽しく生きてる。
多分そんな内容。
自分のくだらないプライドを守るための話。
だが鈴木は素直にそれを信じて、羨ましがってくれた。俺はそれで少し自尊心が守られた。
そしてなんとなく話をしていたら、突然鈴木の口から颯人の名前が出た。
―― どくん
自分でも驚くほど心臓が跳ねた。手が震えた。俺は気づかれないよう平静を装って腕組みをした。
「これ、颯人のアカウントじゃね? 小さい頃と全然雰囲気違うから、連絡するか迷っててさー」
そう言って見せてきたSNSは間違いなく颯人のものだった。たいして近況もなにも書かれていないけれど、フォローしている人やタグ付けされた写真から知ってる人間には颯人だとわかる。
俺はすぐにそのアカウントを記憶した。
「東京にいるんだよね? DM送ってみよっかな? あいつ俺んとこ覚えてるかな?」
鈴木が言った。俺はその言葉に即座に反応した。
「あー、鈴木。 今度オンナとケンカしたらお前んとこ泊めてくれねぇ?」
そう言って俺は鈴木と連絡先を交換した。わずかでも颯人の近況を知りたいという、無意識の行動だった。
まさか鈴木から俺の近況を聞いた颯人が、直接俺に連絡してくるとは思ってもみなかった。
頭ではわかっているが、俺にとっては唯一無二の恋愛だったのだ。
行く宛もなく、行きずりの女性やオメガの家に転がり込んだ。求められるままにセックスをして、20歳になってもいないのに酒を飲んで、ずっと酔っ払っているような生活をした。それでもセックスをしていれば、酒を飲んでいれば、颯人の事を忘れられる。
そんな日々の中で、過去の知人に呼び出されて出かけたのは、その時よく世話になっていたオンナがめんどくさかったからだ。
一回り年上のソープで働いているオンナ。ちょいメンヘラ気味。自分だってホストに狂って借金を負わされて身持ちを崩したというのに、俺を養っていると言うだけで事あるごとにマウントを取り、説教してきた。
いや、俺はこんなオンナからも下に見られるくらい堕ちたのだな、と思った。だが、そんなことは表情に出さずヘラヘラと笑う。
「ダチと飲んでくるから飲み代ちょーだい♡」
俺はそのオンナに買ってもらった服を着て、お小遣いまで貰って中高の同級生に会いに行った。
本当はこんな堕ちた姿など過去の知り合いに見せたくはなかった。だが、その同級生には以前、そのオンナと喧嘩したときにしばらく泊めてもらった恩があったので断りづらかった。
そして行ってみれば、そこには幼稚園と小学校の同級生だった鈴木がいた。その同級生とは今大学が一緒で、出身校の話からたまたま俺の話になったのだという。
俺は鈴木のことをよく覚えていた。颯人をよくからかっていた相手だ。多分こいつも当時は颯人に気があったのだと思う。
相手は青春を謳歌している大学生。片や俺はヒモ。
俺は悔しくて少し話を盛った。頑張らなくても養ってくれるやつがいる。セックスで満足させればいい。俺はちゃらんぽらんでもそれなりに楽しく生きてる。
多分そんな内容。
自分のくだらないプライドを守るための話。
だが鈴木は素直にそれを信じて、羨ましがってくれた。俺はそれで少し自尊心が守られた。
そしてなんとなく話をしていたら、突然鈴木の口から颯人の名前が出た。
―― どくん
自分でも驚くほど心臓が跳ねた。手が震えた。俺は気づかれないよう平静を装って腕組みをした。
「これ、颯人のアカウントじゃね? 小さい頃と全然雰囲気違うから、連絡するか迷っててさー」
そう言って見せてきたSNSは間違いなく颯人のものだった。たいして近況もなにも書かれていないけれど、フォローしている人やタグ付けされた写真から知ってる人間には颯人だとわかる。
俺はすぐにそのアカウントを記憶した。
「東京にいるんだよね? DM送ってみよっかな? あいつ俺んとこ覚えてるかな?」
鈴木が言った。俺はその言葉に即座に反応した。
「あー、鈴木。 今度オンナとケンカしたらお前んとこ泊めてくれねぇ?」
そう言って俺は鈴木と連絡先を交換した。わずかでも颯人の近況を知りたいという、無意識の行動だった。
まさか鈴木から俺の近況を聞いた颯人が、直接俺に連絡してくるとは思ってもみなかった。
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