運命のアルファ

猫丸

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2.亮太視点

2-1.子供時代

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 幼稚園の入園式。
 とてもかわいい天使みたいな子がいた。名前は高木颯人。入園式後、クラスの自己紹介で、男だと知り驚いた。
 クラスの、いや、幼稚園の中の誰よりも可愛かったし、いつも良い匂いがしていた。
 友達になりたかったが、なんと言って仲良くなれば良いのか分からなかった。颯人の周りにはいつも人がいた。
 だがちらちらと様子を盗み見ていれば、お友達と遊んでいるときに時々困った表情をしていることに気がついた。
 耳を澄ませてみれば、「お前、オメガだろ?」と言われている。その意味はよくわからなかったが、颯人が泣きそうな顔をしたので俺はそいつを殴った。颯人と話しができているという嫉妬もあったかもしれない。
 それが功を奏して、俺は颯人にとっての正義のヒーローになった。
 本当は気づいていた。そいつらも本当は颯人のことが好きだったのだと。ただ幼さゆえに気になる子をからかってしまったのだ。
 俺だってヒーローにならなかったら、そちら側に回っていたかもしれない。だが、その時颯人を守ったのは俺。俺の立ち位置が決まった。
 颯人はいつも俺の側にいるようになり、俺は颯人の隣を守り続けた。
 
 ◇
 
 俺が第二の性についてちゃんと理解できたのは小学校に入ってからだった。
 幼稚園のクラスメイトが言っていた意味をその時になってやっと理解した。颯人の家は、男同士の夫夫ふうふだった。言われてみれば確かに颯人の母親を見たことはないな、と思った。参観日には男性二人が来ていたが「どちらかが父親なのだろう」とあまり気にしていなかった。
 アルファとオメガの結婚を番婚というのだというのを知ったのもその時だ。この性を持つならば男同士でも結婚は可能なのだという。

 第二の性の検査は小4と中学入学時に検査される。早すぎても不正確だし、遅すぎて年頃の子供達の中でヒート事故などが起きてもいけないからその時期と決められている。

 だから俺が第二の性について知った当時はまだ、颯人の第二の性どころか、俺の第二の性もわかってはいなかった。だが颯人は、一般的にオメガ性が持つとされる特徴を完全に持っていたし、ましてや親がアルファとオメガなのだ。きっとオメガに違いないと思われていた。
 だが、俺の両親はベータ同士。俺もきっとベータなのだろう。
 俺は奇跡を願った。颯人の隣をアルファというだけのやつに譲りたくはない。
 俺がアルファであれば俺達は恋人になれる。完全に颯人を俺のものにできる。

 そして待ちに待った小4の検査の判定。俺は家に届いた封書を開いてガッツポーズをした。奇跡が起きたのだ。
 そして翌朝、俺は颯人にいった。カバンにラッピングされたネックガードを忍ばせて。
 
「颯人がオメガだったら俺の番だからな」と。

 俺は当然颯人はオメガの判定が出たと思っていた。だって俺がアルファだったのだから。
 俺にとってそれはプロポーズのつもりだった。颯人も喜んでくれると思った。颯人が俺を好きなのは誰の目から見ても明らかだったから、ふられるはずがないと思っていた。
 だが颯人は困ったように笑った。

「嬉しい。 でも僕、この間の検査で『要観察』だったんだ。 でもきっと僕はオメガだよね?」

 不安げな颯人の顔。
 俺は一瞬戸惑った。だが、すぐに気持ちを切り替えた。クラスの大半が『ベータ』の判定が出る中、『要観察』なのだ。
 颯人は細くて小さい。きっとまだ身体が子供なのだ。次の検査の時にはきっとはっきりするだろう。
 
「当たり前だろ? 颯人は俺の番だ」

 俺の本能が『運命の番』だと言っている。だから間違いなく颯人は俺の番なのだ。
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