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1.颯人視点
8.運命の番
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「じゃあ……」
あまり付きまとわれたくなくて、逃げるようにその場を立ち去ろうとすると、そのオメガの男性は腕を絡ませてきた。
「ホテル、行かない? ヒート近くてさぁ。 僕、あまり薬効かなくて、きついんだよねー」
「いや……ごめん……俺は……」
やんわり断ろうとするが、男は強引だった。媚びるように、甘えるようにグイグイ自分の要求を伝えてくる。
かつての自分も亮太に対してこうだったのか、と思うと、気持ち悪さに恥ずかしさが加わり、早くその場を立ち去りたくてたまらなかった。
「人助けだと思ってさぁ。 お願い! せっかくヒートセックスするんだったら好みの男のほうが断然楽しいからさ。 オニーサン、ヒートセックス経験ない? すごいよ?」
「いや……その……」
「オニーサン、アルファなのに及び腰なんて珍しいね。 慣れてないなら僕が手取り足取り教えてあげるよ?」
そう言って首元を触られれば、ぞくっと鳥肌が立った。叫び声を上げそうになったのをかろうじて我慢する。
俺はおかしいのだろうか?性的欲求を誘発されるどころか、恐怖を感じている。俺は亮太でなければ本当にだめなんだ……。
今すぐ振りほどきたい気持ちを抑えて、拘束される腕をなんとか抜こうとする。
「なにやってんだ?」
背後から怒気を含んだ低い声がした。絶対に聞き間違えるはずのないこの声。
「亮太!?」
振り返れば、髪が黒くなって、ピアスの数も減った亮太がいた。久しぶりに会えた嬉しさよりも、その不機嫌そうな表情に血の気が引いた。
高校の文化祭に突然現れた亮太。見た目が少し落ち着いたこともあって、あの時のことがフラッシュバックしてきた。俺は不安で立ちすくむ。
「お前、俺の目がねぇからって、絡まれてんじゃねぇよ」
怒りゆえの無意識で発されたアルファの威嚇。頭がくらっとして、膝から力が抜けそうになった。
亮太は今の状況を誤解しているにちがいない。なにか言わなければ。
「亮太、これは、ちが……その……」
焦れば焦るほど、浮気がバレたような言葉しか出てこない。
「こいつ、俺のだから。 悪いけど、他のアルファ当たってくんねぇ?」
そう言うと亮太が俺の二の腕を掴み、その男性から引き離した。
「は? 何いってんの? オニーサンもアルファだよね? アルファ同士でどういうこと?」
「性別とかかんけーねーよ。 こいつは俺の運命だって小さい頃から決まってんの」
「は? 何言ってんの? アルファ同士でそんなことあるわけないじゃん。 本当の運命の番が現れたら? オメガのフェロモンに当てられて裏切ったら? それでもそんなこと言える?」
「そ・れ・で・も!! それでも俺の運命の番はこいつなの!! 悪ぃな」
「亮太……」
そっと亮太の腕に手を伸ばせば、手首を掴まれ、俺達はその場をあとにした。
「んだよ、くそっ」とオメガの男性の吐き捨てるような声が背後から聞こえたが、初対面の相手だったし、気にすることはないだろう。それよりも亮太だ。
1年と数カ月ぶりの亮太にやはり心がときめく。
それに、さっき亮太は俺を『運命の番』と言った。あのオメガから引き離すためだったとしても、嬉しかった。どんな関係であろうと、俺は亮太がいないとダメなのだ。
「悪かったな……」
引きずられるようにして、俺のアパートへと着いた。
「いや、大丈夫。 助けてくれてありがとう……」
感謝の気持を伝えるように、唇を近づける。軽く触れるだけのキス。
亮太がすんっと鼻を鳴らして、眉をひそめた。
「あ、ごめん。 俺、臭かった? さっき鈴木と居酒屋にいて……お酒かな? 料理ににんにく入っていたのかな?」
思わず亮太から身体を離す。
「違う。 さっきのオメガのやつのニオイがついてる……」
「あ!! ごめん!! そ、そっか。 俺、シャワー浴びてくる。 すぐ準備もしてくるから、待ってて。 その……してく、だろ?」
「いや、いい。 それより話がある」
あまり付きまとわれたくなくて、逃げるようにその場を立ち去ろうとすると、そのオメガの男性は腕を絡ませてきた。
「ホテル、行かない? ヒート近くてさぁ。 僕、あまり薬効かなくて、きついんだよねー」
「いや……ごめん……俺は……」
やんわり断ろうとするが、男は強引だった。媚びるように、甘えるようにグイグイ自分の要求を伝えてくる。
かつての自分も亮太に対してこうだったのか、と思うと、気持ち悪さに恥ずかしさが加わり、早くその場を立ち去りたくてたまらなかった。
「人助けだと思ってさぁ。 お願い! せっかくヒートセックスするんだったら好みの男のほうが断然楽しいからさ。 オニーサン、ヒートセックス経験ない? すごいよ?」
「いや……その……」
「オニーサン、アルファなのに及び腰なんて珍しいね。 慣れてないなら僕が手取り足取り教えてあげるよ?」
そう言って首元を触られれば、ぞくっと鳥肌が立った。叫び声を上げそうになったのをかろうじて我慢する。
俺はおかしいのだろうか?性的欲求を誘発されるどころか、恐怖を感じている。俺は亮太でなければ本当にだめなんだ……。
今すぐ振りほどきたい気持ちを抑えて、拘束される腕をなんとか抜こうとする。
「なにやってんだ?」
背後から怒気を含んだ低い声がした。絶対に聞き間違えるはずのないこの声。
「亮太!?」
振り返れば、髪が黒くなって、ピアスの数も減った亮太がいた。久しぶりに会えた嬉しさよりも、その不機嫌そうな表情に血の気が引いた。
高校の文化祭に突然現れた亮太。見た目が少し落ち着いたこともあって、あの時のことがフラッシュバックしてきた。俺は不安で立ちすくむ。
「お前、俺の目がねぇからって、絡まれてんじゃねぇよ」
怒りゆえの無意識で発されたアルファの威嚇。頭がくらっとして、膝から力が抜けそうになった。
亮太は今の状況を誤解しているにちがいない。なにか言わなければ。
「亮太、これは、ちが……その……」
焦れば焦るほど、浮気がバレたような言葉しか出てこない。
「こいつ、俺のだから。 悪いけど、他のアルファ当たってくんねぇ?」
そう言うと亮太が俺の二の腕を掴み、その男性から引き離した。
「は? 何いってんの? オニーサンもアルファだよね? アルファ同士でどういうこと?」
「性別とかかんけーねーよ。 こいつは俺の運命だって小さい頃から決まってんの」
「は? 何言ってんの? アルファ同士でそんなことあるわけないじゃん。 本当の運命の番が現れたら? オメガのフェロモンに当てられて裏切ったら? それでもそんなこと言える?」
「そ・れ・で・も!! それでも俺の運命の番はこいつなの!! 悪ぃな」
「亮太……」
そっと亮太の腕に手を伸ばせば、手首を掴まれ、俺達はその場をあとにした。
「んだよ、くそっ」とオメガの男性の吐き捨てるような声が背後から聞こえたが、初対面の相手だったし、気にすることはないだろう。それよりも亮太だ。
1年と数カ月ぶりの亮太にやはり心がときめく。
それに、さっき亮太は俺を『運命の番』と言った。あのオメガから引き離すためだったとしても、嬉しかった。どんな関係であろうと、俺は亮太がいないとダメなのだ。
「悪かったな……」
引きずられるようにして、俺のアパートへと着いた。
「いや、大丈夫。 助けてくれてありがとう……」
感謝の気持を伝えるように、唇を近づける。軽く触れるだけのキス。
亮太がすんっと鼻を鳴らして、眉をひそめた。
「あ、ごめん。 俺、臭かった? さっき鈴木と居酒屋にいて……お酒かな? 料理ににんにく入っていたのかな?」
思わず亮太から身体を離す。
「違う。 さっきのオメガのやつのニオイがついてる……」
「あ!! ごめん!! そ、そっか。 俺、シャワー浴びてくる。 すぐ準備もしてくるから、待ってて。 その……してく、だろ?」
「いや、いい。 それより話がある」
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