運命のアルファ

猫丸

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1.颯人視点

10.運命のアルファ

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 世の中には『ビッチング』という、アルファが噛みつくことによって、第二の性をオメガに変える方法があると噂で聞いていたが、俺はアルファのままだった。
 試しに俺も亮太を噛んでみたが、どちらも今のところ性別に変更はない。
 あの時、亮太が俺を噛んでしまったのはアルファの本能と独占欲だったらしい。正気に戻って謝られたが、それでも興奮した時の噛み癖はなかなか治らない。
 
「てかさ、アルファだろうが、オメガだろうがお前らが付き合うことは、昔から知ってる俺としちゃ、収まるところに収まったなー、くらいなもんで、なんとも思わねぇけどよ? ……けどよ? さすがにアルファ二人が揃ってうなじに噛み跡あるとか、それはマジ引くわー」

 俺達の引っ越し祝いと、鈴木の失恋を慰める会を兼ねて3人で飲んでいた。
 亮太と俺はまだ学生という身分だけれど、一緒に住むことにした。
 鈴木は始めのうちこそ、告白されて付き合って、一週間でフラレた自分の不幸を散々愚痴っていたのだが、俺達の甘い雰囲気を見て、バカバカしくなってきたらしい。話は俺達のうなじ周辺の噛み跡になっていた。

「てかさ、お前ら番になれるわけじゃないんだろ? それって、ただの変態プレイだからな!! へ・ん・た・い!!」

「鈴木ひどいなぁ、そう言うデリカシーのないことを言うからフラレるんだよ。 俺達は『運命の番』だよ? ね? 亮太?」
  
 俺は笑いながら、同意を求めるように亮太に向かって微笑んだ。亮太は「だな」といって俺に軽く口づけをした。
 うなじの噛み傷が他人にどう思われても、亮太が俺に執着を見せてくれるのは嬉しい。俺は亮太がいればそれでいいのだ。
 俺達は性別など関係なく、互いにずっと好きだったのだ。そんな相手を『運命の番』と呼ばなくてなんというのか。

 ◇

「俺達はアルファ同士だけど、颯人は俺の番なんだよな……」

 居酒屋からの帰り道、俺の項の噛み跡にやさしく触れ、しみじみと亮太は言った。
 
「だね。 亮太以外には噛ませないから、亮太も噛まれないでね?」

 そうふざけると亮太は顔をくちゃくちゃにして笑った。その表情は幼いときヒーローだった頃の亮太を思い出させた。そして今も変わらない俺の大切なヒーロー。
 
「……あ、そう言えば亮太が昔くれたネックガード、俺、まだ持ってるよ? 今回の引っ越しのときも持ってきた」

 結局使うことはなかったが、小さい頃から俺を好きでいてくれた亮太の思いが詰まった大切な宝物。

「あれってまだ入る?」

 亮太の指が、俺の首の前を半周移動した。俺はくすぐったくて、身体をよじりながら答える。

「どうかな? 多分入ると思うけど?」

 帰宅後、ネックガードをつけられた俺は「やば。このまま鎖つけて閉じ込めておきたい」と、そのまま服を脱がされ、亮太に抱かれまくった。
 
 全裸に首輪のみをつけた状態で喘ぎながらも、(俺だって亮太に同じことをしたい)って思うのは、やはり俺が本質的にアルファだからなのかもしれない。
 お願いしたら亮太は俺の下でかわいく鳴いてくれるかな?今度聞いてみよう。
 俺は亮太を抱きしめ、にんまり笑った。
 
 
 

 
(おしまい)

===

本編はこれで終了ですが、明日(2024/1/31)亮太視点の話を16:00~21:00の毎時間更新で公開いたします。
そちらもぜひよろしくお願いします!
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