運命のアルファ

猫丸

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1.颯人視点

9.執着と独占欲

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(しないのか。 俺が亮太をつなぎとめておくには身体しかないのに)

 しゅんとしながら、亮太の前に正座で座る。
 亮太はバッグから紙を一枚出した。俺は首を傾げながら、その書類に目を通す。

「これ……? え? マジで? 亮太、すごい!! おめでとう!!」

 その紙は、大学の合格通知書だった。しかも俺の大学よりも遥かに難しいところだ。

「ブランクがあったから、1年以上かかっちゃったけど、ずっと行きたかった大学に受かった……」

「そっか、亮太。 すごい頑張ったんだな……さすが亮太だ……」

 亮太に会えないこの期間、俺はずっと亮太のことだけを思ってうじうじしていたというのに、亮太はちゃんと前を向いて歩いていたのだ。
 
 再会したときに言われた「颯人は前を向いて歩いていたんだ」という言葉を思い出した。
 違う。あの時の俺は自分の行動を後悔して、惰性で生きていた。そして今はずっと亮太を思って、ただ思い出にすがって生きているだけだ。
 本来の自分を取り戻した亮太には輝かしい未来が待っているだろう。もう俺は必要ないのだろう。

「ずっと連絡できなくてごめん。 どうしても合格しようって決めてたからさ。 颯人に会うと、甘えちゃうから」

「ううん。 大丈夫……」

「俺、受かったら颯人に言いたいことあって……」
 
「うん……」
 
 これで俺たちは終わるのだろう。そう思ったら、ぽろりと涙が出てきた。

「まだなにも言ってねぇのに、なんで泣いてんの?」

「……ごめ……」

 我慢しなきゃと思えば思うほど、ぽろぽろと涙が出てきた。

「まぁ、いいや。 そのまま聞いて。 颯人、俺と番婚して?」

 予想していなかった言葉に、しばらく理解が追いつかなかった。
 
「…………え? つがい、こん? 俺も亮太もアルファ……」

 思わず涙が引っ込む。

「うん。 知ってる。 でも俺は小さな頃からずっと、颯人は俺の『運命の番』だと思っていたし、その気持ちは今でも変わらない。 颯人がアルファだって知って、忘れようとして、色んなオンナやオメガと付き合ったり、セックスしてみたけど、やっぱり颯人しかいなかった。 もうそれは性別とかじゃなくて、俺は高木颯人じゃないとダメなんだ、ってずっと思ってた。 けど性別のせいでその感情に蓋してた。 俺、ちゃんと颯人の隣りにいてふさわしい人間になるから、お願い。 俺を拒まないで?」

 今まで見たことのない必死な亮太に俺は驚いた。俺の知っている亮太はいつも余裕で、いつもなんでも簡単にこなす俺のヒーローだ。
 だが、その顔を俺だけに見せるのなら、それは悪くない。いや、むしろ嬉しい。俺だって亮太しかダメなのだ。

「俺だって、ずっと亮太しかいない。 こんなに成長しちゃって可愛げもなくなっちゃったけど、いいの?」

「小さいときのかわいい颯人も、大きくなった颯人も、これから年を取っていく颯人も全部俺のものだ」

「ふふ、それは俺も一緒だよ。 亮太のすべてを俺にちょうだい?」

 どちらからともなく重なる唇。
 亮太の手が服の裾から侵入してきて、指先が乳首を刺激し始めた。

「はふ……ま、って……準備、してくる、から……」

「一緒にシャワー浴びよ?」

 ◇
 
 互いの身体を笑いながら洗い合う。

「やめっ、くすぐったいって!!」

 俺が触る隙がないくらい、亮太が泡だらけの俺の身体を触ってくる。

「あー、幸せすぎて我慢できない。 早くベッドいこ?」

 俺の泡を流しながら、亮太が言った。俺も同じ気持ちだった。

 1年以上なにも受け入れることのなかった穴は、久しぶりの刺激に歓喜した。

「あっ、あっ、気持ちい、い……」

 中から亮太に侵食されていく。奥の壁までトントンと刺激されるイタ気持ちよさに頭が真っ白になりながら、俺は潮を吹いた。

「今度は後ろから入れたい」
 
 俺も亮太も何度もイッて、それでも相手を求める気持ちのほうが強かった。
 潮や精液でびちゃびちゃになった腹を、タオルで拭いて、亮太は俺を四つん這いにさせた。
 奥の扉がこじ開けられるような感覚がした。

「あ、亮太!! だめっ、それ以上は!! だめっ!!」

「颯人の全部を俺にちょうだい?」
 
 両腕の力が抜け、尻を高くした状態で俺のすべてを亮太に明け渡す。どうせ俺は亮太がいないとダメなのだ。亮太が女性でもなく、オメガでもなく、俺という存在を選んでくれた。もうそれだけで今なら死んでも良いと思えるくらい幸せだった。
 亮太が求めてくれるなら、何でもしたい。
 こくこくと頷くと、亮太は俺の腰を強く掴んで、ぐりぐりと最奥をえぐった。

「うぅっ、うぐぅっ……!!」

 眼の前がチカチカと星が舞うような刺激の後に、『ぐぽぉ』という音が体内から聞こえた。一瞬頭の中が真っ白になる。
 
「あ、あ……いやぁ……見ないで……」

 俺はあまりの強い刺激に漏らしていた。しょろしょろと黄色い液体が、ペニスの先端から漏れ、亮太が笑いながらバスタオルで押さえた。

「はは、最高にかわいすぎる……」

 液体が止まったのを確認して、亮太は俺の背中に軽くキスをすると、抽挿を再開した。動く度に体内がぐぽぐぽと音を立て、亮太のちんこに吸い付く。

「あ、だめ……だめ……おかしくなる……おかしくなっちゃうからぁ……」

「いいよ。 俺と一緒におかしくなろう? 俺はずっと昔から颯人におかしくなってるんだから……」

(俺がどれだけお前を好きか知らないから、そんな事言えるんだ……)
 そう思ったが、言い返すだけの余裕はなかった。体内のちんこが更に固くなり、質量が増した。射精の時が近い。
 気を失いそうなほど強い刺激の後に、熱い液体が体内の更に奥にぶちまけられた。

「あぁ……あぁ……」

 力尽きて、うわ言のようにしか声の出ない俺の首筋に亮太が唇を近づけてきた。
 そして、思い切り噛んだ。

「うわぁぁぁ!?」

 反射的に仰け反る身体。
 少し血の出た首筋を、亮太はぺろりと舐め「俺のもの……」と抱きしめた。
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