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1.颯人視点
4.再会と謝罪
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「へー、◯◯大、行ってんだ。 すげー」
久しぶりの亮太は髪の毛が明るくなっていて、両耳にピアスがたくさんついていた。口元にも開いている。少し表情が暗いような気がするのは、彼女と喧嘩したからだろうか。
それでも亮太は鈴木と同じように、普通に軽い口調で話しかけてきた。
ホッとしたものの、時間の経過に少しさみしさも感じた。亮太の中では過去の出来事になったのだろう。
だが自分は変わらない。会ってみれば相変わらず亮太を好きな自分がいた。
亮太からほんのり漂ってくる女性ものの香水とタバコの香り。気がつけば、相手の女性に少し嫉妬している自分がいた。
コンビニで買ってきたお菓子や飲み物をテーブルに広げる。
「……うん。 でも、そんな……大した事じゃない……よ……」
ぴりっと空気が変わった。女性のことに気を取られ、深く考えずに発した言葉に亮太が眉をしかめたからだ。
―― 高校もやっと卒業したらしい。家出だって。
鈴木の言葉を思い出した。
「ごめん。 そういう意味じゃなくて、俺なんて運良くぎりぎり入れただけだから……」
「いや、颯人はすげーよ。 ちゃんと前向いて将来のこと考えて生きてんだもんな…… 同じアルファでも俺とは大違い」
亮太の顔が切なそうに歪んだ。
「ちがっ!! 俺だって……あの……今更だけど、アルファだって隠してたこと、ごめん……ずっと謝りたくて」
「……あー……いや、個人情報だしな。 俺なんかに言う必要なんてないさ。 俺がずっと勘違いしてただけだから……」
亮太が力なく笑いながら、机に置かれた炭酸飲料に手を伸ばした。プシュッと軽い音が会話の途切れた室内に響いた。
「それでも……ごめん……。 亮太はずっと俺と番になるって言ってくれてたのに……すぐに言うべきだったのに……」
沈黙が流れた。俺は正座し、うつむいたまま、顔をあげることができなかった。
「……そうだな……」
しばらくの沈黙の後、亮太がぼそっと呟いた。そのいらだちを隠さない口調に、びくりと亮太の顔色をうかがうと、亮太は俺をみながら冷たい口調で言った。
「……俺がこうなったのはお前のせいだ……って言ったらどうする?」
「え?」
「お前がそう言うってことは、俺から『颯人のせいじゃない』って言葉を言われるのを期待してるんだろ? でも俺は言ってやらない。 俺は、お前と番になるために、頑張っていたってのは事実だしな。 お前がアルファだとも知らずにな。 滑稽だろ? だからお前は俺に対して罪悪感もって生きろよ。 これからもずっと」
強い視線から逃れるように俺は俯いた。
「ごめん……俺にできることがあれば……」
「はっ!? お前にできること? 今さら何いってんの? お前は俺とは番になれないんだろ?」
「番にはなれないけど、でも俺、黙っていたこと本当に申し訳なく思っていて! 亮太は俺のヒーローだから、そんな投げやりな生き方してほしくなくて! ……本当の亮太はそんなんじゃないだろ?」
「はっ!? 本当の俺ってなんだよ? なにがヒーローだ。 何も知らないくせに。 お前になにができんの? じゃぁ罪滅ぼしに抱かせろって言ったら、ヤラせてくれんの? アルファのお前が? お前、俺のモンになってくれんの?」
「亮太の、もの?……亮太が……俺を抱く、の……?」
「ほらみろ! 口先ばっかでテキトーなこと言ってんじゃねぇよ!」
ごくりとつばを飲み込む。声が震えた。
「……い、いいよ……じゅ、準備してくる……」
久しぶりの亮太は髪の毛が明るくなっていて、両耳にピアスがたくさんついていた。口元にも開いている。少し表情が暗いような気がするのは、彼女と喧嘩したからだろうか。
それでも亮太は鈴木と同じように、普通に軽い口調で話しかけてきた。
ホッとしたものの、時間の経過に少しさみしさも感じた。亮太の中では過去の出来事になったのだろう。
だが自分は変わらない。会ってみれば相変わらず亮太を好きな自分がいた。
亮太からほんのり漂ってくる女性ものの香水とタバコの香り。気がつけば、相手の女性に少し嫉妬している自分がいた。
コンビニで買ってきたお菓子や飲み物をテーブルに広げる。
「……うん。 でも、そんな……大した事じゃない……よ……」
ぴりっと空気が変わった。女性のことに気を取られ、深く考えずに発した言葉に亮太が眉をしかめたからだ。
―― 高校もやっと卒業したらしい。家出だって。
鈴木の言葉を思い出した。
「ごめん。 そういう意味じゃなくて、俺なんて運良くぎりぎり入れただけだから……」
「いや、颯人はすげーよ。 ちゃんと前向いて将来のこと考えて生きてんだもんな…… 同じアルファでも俺とは大違い」
亮太の顔が切なそうに歪んだ。
「ちがっ!! 俺だって……あの……今更だけど、アルファだって隠してたこと、ごめん……ずっと謝りたくて」
「……あー……いや、個人情報だしな。 俺なんかに言う必要なんてないさ。 俺がずっと勘違いしてただけだから……」
亮太が力なく笑いながら、机に置かれた炭酸飲料に手を伸ばした。プシュッと軽い音が会話の途切れた室内に響いた。
「それでも……ごめん……。 亮太はずっと俺と番になるって言ってくれてたのに……すぐに言うべきだったのに……」
沈黙が流れた。俺は正座し、うつむいたまま、顔をあげることができなかった。
「……そうだな……」
しばらくの沈黙の後、亮太がぼそっと呟いた。そのいらだちを隠さない口調に、びくりと亮太の顔色をうかがうと、亮太は俺をみながら冷たい口調で言った。
「……俺がこうなったのはお前のせいだ……って言ったらどうする?」
「え?」
「お前がそう言うってことは、俺から『颯人のせいじゃない』って言葉を言われるのを期待してるんだろ? でも俺は言ってやらない。 俺は、お前と番になるために、頑張っていたってのは事実だしな。 お前がアルファだとも知らずにな。 滑稽だろ? だからお前は俺に対して罪悪感もって生きろよ。 これからもずっと」
強い視線から逃れるように俺は俯いた。
「ごめん……俺にできることがあれば……」
「はっ!? お前にできること? 今さら何いってんの? お前は俺とは番になれないんだろ?」
「番にはなれないけど、でも俺、黙っていたこと本当に申し訳なく思っていて! 亮太は俺のヒーローだから、そんな投げやりな生き方してほしくなくて! ……本当の亮太はそんなんじゃないだろ?」
「はっ!? 本当の俺ってなんだよ? なにがヒーローだ。 何も知らないくせに。 お前になにができんの? じゃぁ罪滅ぼしに抱かせろって言ったら、ヤラせてくれんの? アルファのお前が? お前、俺のモンになってくれんの?」
「亮太の、もの?……亮太が……俺を抱く、の……?」
「ほらみろ! 口先ばっかでテキトーなこと言ってんじゃねぇよ!」
ごくりとつばを飲み込む。声が震えた。
「……い、いいよ……じゅ、準備してくる……」
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