吾輩は元大王である。

猫丸

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第一章 一年生

11.

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 学期が終わり、吾輩は逃げるように実家の男爵領へと戻った。
 だがエヴァレインのやつは、王族の権力を振りかざし、すぐに吾輩を追って、婚約届と大量の贈り物とともに、実家へ押しかけてきた。
 当然ながら何も知らない今生の両親は大慌て。エヴァレインの口八丁に乗せられ、両親同意欄にサインをさせられてしまったらしい。だが、吾輩は今のところ逃げている。
「ちなみに、婚約期間すっとばしたいなら、婚届もあるけど?」と、これまた両親のサインのそろっている紙をちらつかされれば恐怖しかない。
 吾輩を溺愛している兄は「だからアカデミーなんかに行かせたくなかったんだ!! うちのかわいいセラがこんなヤツと……!! こんなヤツと……!!」と発狂。不敬罪に問われかねない物言いをしていたが、エヴァレインはドヤ顔で笑っていた。

 もうすぐ収穫を迎える金色の畑を見ながら、吾輩が作ったサンドイッチを食べていた。
 屋敷にいると、ところかまわずキスをし、吾輩に抱きついてくるので、外へ連れ出したのだ。
 吾輩が昼夜問わず抱かれていることは、屋敷の者達にもバレているとは思うのだが、少しでも見られる頻度を減らしたい。吾輩にもまだ恥じらいはある。
「それにしても、エヴァ、そなた、なぜ吾輩がダクヴァルだとわかったんだ? 前世と今生じゃ見た目も全然違うだろう?」 
「え? 見た目……ですか? 昔とそっくりですけど? ダクヴァル様は、そのかわいらしい見た目だと他国から舐められるっておっしゃって、画家たちに筋骨隆々に描かせていたじゃないですか。影武者を描かせたりして。……画家たちも貴方に気に入られたいがために、ますます迫力ある絵を描いていったから、最後は全然似ても似つかなくなってしまったじゃないですか!」
「そ、そうだったか?」
「貴方の姿は私の記憶の中にだけ留めておけば良いと思っていたので、私の著書にはあの画家たちの絵を使いましたが、私はアカデミーで一目貴方をみたときから『あぁ私の愛する大王様だ』ってすぐに気づきましたよ? 逆に記憶があるのに、私に気づいてくれなかったなんてショックで、ショックで……。やはり、もっと私の痕跡を刻み込まなきゃ、って思ってます!」
 エヴァレインが拗ねる表情を浮かべながら、吾輩にキスしたかと思うと下唇に噛みついてきた。
「痛っ! ま、待て! か、顔は似ているなーとは思っていたぞ!?」
「ふふ。でも、必死に猫かぶっている貴方もかわいかったですし、変わらず人が良いところも愛おしかったです。何より今生では貴方と結ばれて、私は幸せです。これから何百年分の想いをしっかり受け止めてもらいますから。一生離しませんからね?」
「そ、そうか。だが吾輩が学生の間は、婚約とかそういったものはまだは、早いかと……それにエヴァはアカデミーを卒業したし、王都と学園都市は離れているから、たまにしか会えなくなるしな……」
「そうですね……。だから一緒にいる時だけは貴方を補給させてくださいね」
 婚約は保留にしている吾輩だが、身体は既にエヴァレインに堕ちていた。
 わかっている。只の時間稼ぎに過ぎぬことを。だが婚約して、対外的にもこやつに束縛されるのは怖いじゃないか!!
 それに吾輩、今生、まだ女の子としてないもん!! このままこやつ捕まる前に、一度くらいはかわいい女の子といちゃいちゃしたい!!

 もうすぐ新学期が始まる、という日。
 吾輩達は男爵領からアカデミーのある都市まではエヴァレインと同じ馬車で向かっていた。
「吾輩のことは気にせず、まっすぐ王都へ戻れ」と言ったのだが、「送る」と言って聞かなかったのだ。
 別れ際、両親は赤い顔をしながらエヴァレインに「セラフィンの身体を労ってあげてください」とお願いしていたし、兄は終始睨んでいた。両親にしてみれば、もう言っても無駄だから、せめて……と思ったのだろう。本当に人の良い両親だ。婚約届と婚姻届にサインしたことはまだ許してないけども!
 外の景色を眺めながら、吾輩はつぶやいた。
「次会えるのはいつかな……」
「寂しいんですか? 貴方にそんなことを言ってもらえるなんて……!!」
 エヴァレインは、目を潤ませながら吾輩を抱きしめ、口づけをした。
 いや、違うぞ? 貴様が近くにいなければ吾輩は自由だという開放感なのだが!! だが、エヴァレインは感動して吾輩の身体を弄り始めた。
「ち、ちが!! お、おい、だめだ!! ば、馬車の中だぞ?」
「大丈夫だから……ね? 貴方の中に入りたい……」
 スラックスの前を緩められ、尻をむき出しにされる。吾輩は手を向かいの座席に付いて、エヴァレインに背を向けた。尻たぶを開かれ、穴が空気にさらされる。領地滞在中、閉じる間もないほど開かれていた穴は簡単にエヴァレインの剛直を受け入れた。
「う、あっ……あっ……あっ……んんっ……あぁっ!!」
 時折馬車の揺れで与えられる予想外の突き上げ。ごりっと奥までえぐられれば、思わず膝から落ちそうになる。触れてもいないのに吾輩のちんこの先からはぽたぽたと液体が溢れていた。本当にエヴァレインのちんこに慣らされている。
 寮に戻ったら今日からは一人で寝るのだ。自由は楽しみだが、後孔は少し寂しく感じるかもしれない。
「あっ! んんっ……もうっ、イ、イクっ!!!!」
 
「セラ、着きましたよ」
 馬車の中でイッた後、どうやら吾輩は疲れて寝ていたらしい。
「……ここ、は?」
「私達の家です」
「は? え?」
 吾輩は寮に戻るし、エヴァレインは王宮へ戻るのではないのか?
「あぁ、貴方が寂しがってくれるのが嬉しくて、言ってなかったんですけどね? 私、アカデミーの研究棟が勤務先なんです。ですのでここに一緒に住みますよ?」
「……は? 聞いてないぞ!?」
「婚前同居になりますけど、陛下にも、セラのご両親にもちゃんと許可をもらってあるので大丈夫です。寮の荷物も既に持ってきてありますよ? ……ってなんですか? その表情は? 嫌なんですか?」
「嫌に決まっとるわ!! 吾輩の自由時間がっ!!」
 もうすぐ離れ離れになると思っていたから、少々のわがままに付き合っていたが、これからもずっと一緒だと!?
「浮気する気ですか? まだまだ身体に教え込まないと、私の愛の深さを理解できないようですね?」
「ち、ちがっ!」
「浮気したら、本当に監禁しますよ? 800年分ですから覚悟してくださいね? 私のかわいい大王様♡」

 かつて大王だった吾輩が、まさかお姫様抱っこをされて屋敷に入る日が来るとは、人生とは本当に何が起こるかわからぬものだ。

「……って、ちがぁぁぁう!!!! 貴様っ!! 下ろせ!! 自分の足で歩けるわっ!!」
「ダメだよ? セラ知らないの? 新居にこうやって入ったカップルは未来永劫幸せに暮らせるんだって!!」
「なっ!? なっ!? ならば、余計下ろせ~~~!!!!」
 暴れる吾輩は、エヴァレインによって、荷物のように肩に担ぎ上げられ、新居へと運びこまれた。
「こ、これは、お姫様抱っこじゃないから……セー……フ……?」
 がっくりとうなだれる吾輩の問は、浮かれまくっているエヴァレインや屋敷の者の声にかき消され、誰の耳にも届かなかった。



(了)

=====
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!
一応、1年生は一旦これで完結となりますが、不定期更新で、2年生、3年生も書きたいな、と思っております。
 ええ、できれば女体化まではっ!!なんとしてもっ!!笑
 再開の際はまた、大王様をどうぞよろしくお願いします!!!!
改めまして、最後までお読みいただいた皆様に感謝!!ありがとうございました!!

 
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感想 17

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みんなの感想(17件)

明和里苳
2024.11.29 明和里苳

萌え死にました。
続きが楽しみです!
ご馳走様でした!ヾ(*´∀`*)ノ

猫丸
2024.11.29 猫丸

明和里苳さーん、いつもありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ👑
偉大だったはずなのに、どこか抜けてる大王様♡
続きもがんばりますっ(๑ •̀ω•́)۶

解除
蒼空
2024.11.19 蒼空
ネタバレ含む
猫丸
2024.11.19 猫丸

蒼空さん、こんにちは!
お読みいただいて、感想までくださって本当にありがとうございます!!!!めちゃくちゃ嬉しいです😭😭😭
あの乱闘シーンは、何度も書き直した場面なので、喜んでもらえてすごくホッとしています😭😭😭
次の章は最終学年となる三年生。相変わらず周りに振り回されながらも大王様、頑張ります!
引き続き応援よろしくお願いいたしますヽ(=´▽`=)ノ👑

解除
まめ
2024.11.17 まめ
ネタバレ含む
猫丸
2024.11.18 猫丸

まめさーん、ありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ👑
並走&感想励みになりました!本当にありがとうございます!
決めゼリフのシーンは4,000文字以上をボツって書き直した箇所だったので、まめさんや他の方にも喜んでもらえてとてもほっとしているし、嬉しいっっっ😭😭😭
三年生編もがんばります!!!!ぜひぜひ引き続きよろしくお願いします!!!!

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