北極星(ポラリス)に手を伸ばす

猫丸

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第二章 バヤールの町

19.離脱※

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 見知らぬ宿屋のベッドの上。新しい服を着せられて寝ていた。
 ベッドの隣にはヴァレルとギーが。

 「「リュカ、気がついた!?」」

 二人の姿を確認したものの、しばらく天井を眺めて、そして目を閉じる。

「ごめん……一人にしてほしい……」

 あんな姿、ヴァレルにだけは見られたくなかった。

「リュカ…俺…」

 なにか言おうとするヴァレルをギーが止めた。
 二人が出ていって、思い切りリュカは泣いた。溢れてくる涙も嗚咽も止まらなかった。
 自分の存在全て。何もかもが忌まわしい。

 
 ◇
 
 
 アルシェに隊を離脱する旨を伝える。予定よりは早いが、冤罪であった旨を公表するように手配してもらった。
 なにも返すものがないので、せめてもと自らの持っている固形ポーションを一欠片だけ残してあとはすべて渡す。隊の支給品とは別に皆に使ってもらえたら最前線では役に立つだろう。
 
 カモフラージュのため、今いる宿を2週間押さえたまま別の宿へと移る。その後はどこかのタイミングでそっと出ていけばいい。
 
「わかった。 気をつけて行けよ」

 アルシェも疲れきっていた。例の3人を規律違反として王都へ追い返したらしい。調査隊のメンバーに選ばれていて、現地に到着する前に返されるのはとても不名誉なことだ。上官とはいえ平民出身のアルシェが、貴族相手にこのような懲罰を下すのは後々報復の対象になりかねない。しかも、リュカの名誉を守るために詳細は伏せられた状態で。だがアルシェは一歩も引かなかった。
 どんなに家門を盾に三人に凄まれようが、脅されようが、リュカを守ってくれた。

「ご迷惑をおかけしてすみません……いつか恩返しが必要な時があればどこにいても駆けつけます」

 その時リュカがどこにいるか、何をしているかは全くわからない。どこかに居を定めたとして、アルシェのアパートに連絡できるかすらあやしい。だがリュカは心の底からアルシェに感謝して、ついそう言った。

「気にするな。 俺の指導不足が原因なんだから。 それにあいつらは平民出身の俺が出世しているのが前から気に食わなくて、しょっちゅう反発してた奴らだから。 逆にお前に迷惑かけたな。 はぁ、敵は魔獣だけじゃないな。 あと、お前が移る予定の宿にはヴァレルも3日間滞在している。 表向きは謹慎だけどな。 あいつ、あの3人のことボコボコに殴って……。 本来であれば3人と一緒に送り返すところなんだが、そもそもあいつは罰として参加してるわけだから扱いが少し違ってな。 それに、これ以上戦力が減るのは俺としても避けたい。 お前としてはヴァレルも安全なところに返してほしいだろうが……」

「いえ、あの時は本当にすみませんでした……短い期間だったけど、みんなと一緒に過ごせて、みんなが誇りを持って任務にあたっているのがわかって……僕はあの時本当に失礼なことを言ってしまったんだな、と。 みんなが無事大切な人の元へ帰れるよう願っています」

「……ふん、お前も成長したな。 つーか、お前も元気でいろよ? でないとヴァレルがまったく役に立たん。 今、『自分が近くにいながらお前を守れなかった』って、自分を責めて、抜け殻みたいになってるよ。 まぁ、俺に感謝してるって言ってくれんなら、ヴァレルが謹慎明けに、しゃんとして俺たちと合流するようにしてくれれば助かるが……。 いや、お前のほうが傷ついてるんだから、それはお前に頼むことじゃないよな。 ……ずるいことを言った。 すまん、忘れてくれ。 これはアイツ自身が自分で解決することだ。 じゃぁまたどこかでな」

 ぽんぽんとリュカの頭を軽く叩いてアルシェは背を向けた。
 アルシェが扉を開けると、ギーがひょっこり顔だした。

「じゃぁまたね、リュカ。 君と仕事ができて楽しかったよ」
 
 まるで仕事終わりの挨拶かのように、軽い調子でギーも挨拶をしてそのまま二人は去っていった。
 
「ありがとう……」

 
 ◇

 
 腕に追跡阻害魔法を書き込み、認識阻害魔法を展開して宿を移る。
 扉の前に立ちノックをすれば、少し憔悴したヴァレルの顔が現れた。目が真っ赤で、クマもひどい。

「リュカっ!? リュカ!! 俺、ごめん。 アルシェ団長に嫉妬して……まさかこんなことになるなんて……本当に、俺はどうしようもなく……」

 縋りついてくるヴァレルの胸板へと飛び込んで、そのまま扉は閉められた。
 戸惑うヴァレルを無視して、そのままベッドへと押し倒す。
 あんな姿を見られたのだ。ならばもう今更じゃないか。ヴァレルが自分のことで傷ついているというのなら、そこに漬け込もう。
 精神的なショックで、リュカの理性は少しおかしくなっていたのかもしれない。正気では絶対にできないような大胆な行動を取った。
  
「リュカ……あの……話を……」


「何も言わないで!」

 唇を塞ぎ、ヴァレルの熱い唇を味わう。ヴァレルもリュカの態度になにかを感じ取ったのか、戸惑いながら口づけに応えた。
 ぴちゃぴちゃと水音だけが室内に響く。
 舌を差し出し、ヴァレルの口内を、歯列をすべてを味わうと、我慢できなくなったヴァレルの舌に絡めとられた。
 ヴァレルの両手がリュカの後頭部へと添えられ、より深く絡まり合う。
  
「んっ……」

 リュカの手がヴァレルの胸元へと伸び、服の合わせを開く。
 鍛えられた筋肉質な身体。厚い胸板。
 首には、青黒白の石が並んだネックレスがあった。そして肩には火熊に襲われた時の三本の爪痕が痛々しく残っている。

「痛くない?」

 皮膚の質感が異なるその痕に触れ、唇を何往復もさせる。そして愛おしそうに頬を擦り寄せる。
 小さな身体で自分を守ろうとしてくれた証拠。
 ずっと自分は「ヴァレルのため」に生きてきたと思っていた。何度も死にたいと思った。だがずっと、あの瞬間、とっさにリュカをかばったヴァレルの愛に生かされてきたのだ。こんなにも自分を愛してくれている存在がいた。
 
「ん……もう大丈夫……」

 ヴァレルはそんなリュカを、愛おしそうに見つめた。
 リュカにされるがまま、大人しく服を脱がされていくヴァレル。そして露わになった肌に、リュカの唇が落ちる。
 左手首にはリュカがあげたブレスレットが付けられていた。そこに頬ずりをし、祝福を落とすかのように口づけをする。
 剣で鍛えたゴツゴツとした大きな手にも、胸にも、割れた腹筋にも。そしてトラウザーズを緩め、へそにも、その下の茂みにも身体にあますことなく唇を落とす。
 その存在全てが愛おしい。
 
 ずらしたトラウザーズから、ヴァレルの大きく太いペニスがもう限界とばかりに現れる。
 血管が浮き上がり、鈴口の間からすでに透明な液体が溢れていた。リュカはその血管に舌を這わせ、先端の切れ目にちゅっと口づけをした。

 ヴァレルが自分を欲しがってくれている。嬉しくて嬉しくて、その大きなイチモツを口に含んだ。喉の奥まで入れてもまだ収まりきらないそれを、丁寧に丁寧に舐める。
 飲みきれない唾液が、陰嚢や会陰、後孔の方へと垂れ、リュカはすべてを舐めつくした。
 
「んっ……リュカっ、だめ……イッちゃうから、離してっ……」

 命令は聞かない。リュカは自らの意志で、ヴァレルを抱くのだ。
 
「んっ……リュカ、イクっ」

 喉の奥に熱い液体がかけられた。そのとろみのある液体を飲み干し、再びヴァレルのペニスをきれいに舐めた。
 一度イッただけでは萎えることなく、ヴァレルのペニスは元気だった。
 リュカはホッとして、トラウザーズを脱ぎ捨てた。起き上がろうとするヴァレルを制し、自らの穴にその切っ先を当てる。
 
 ずぶずぶと自重で飲み込まれていくペニス。
 散々蹂躙されてきた穴が限界まで拡がり、痛みを感じた。それが嬉しかった。
 自らの体内いっぱいに埋め尽くす愛おしい人のペニス。ギチギチに体内を押し広げる感覚に思わず笑みが溢れ、シャツの上から下腹に触れた。
 リュカのペニスも勃ち上がっている。

「リュカも……脱いで……」

 ヴァレルは寝たまま、リュカのシャツの裾に触れた。

「ふふ、それはダメ」

 その手を押さえ、リュカは腰を振った。ヴァレルは眉を寄せて、その刺激に耐える。気持ちが良いのだろう。リュカの腰の動きに合わせて、ヴァレルの腰も動いていた。

「ダメだって、リュカ。 すぐイッちゃう……」

「いいよ。 何回でもイッて。 気の済むまで……ううん。 一滴も出なくなるまで全部僕の中に出して」
 
 リュカも自らのペニスを扱き、共に快楽に溺れる。今だけはなにも考えず、ただこの愛おしい存在を味わい尽くすのだ。
 ヴァレルがイッても、抜かせない。
 少し柔らかくなったペニスを穴に入れたまま、自らの服のボタンを少しはずし、胸をみせる。ツンと立った乳首をこねくり回すのを見せつければヴァレルの手が伸びてくる。
 自らのペニスを扱きながら腰を振れば、後孔に収まるペニスはすぐに硬さを取り戻した。
 時にはヴァレルの乳首や脇を舐め、すべてを味わい尽くす。

 自由になるために身体まで使って相手を籠絡しようとした。逃げてきた先でも犯された。そんなどうしょうもなく忌まわしいこの身体。
 だが、ヴァレルの熱のこもった瞳で見つめられれば、そんな汚れなど、自分の忌まわしさなど忘れてしまう。ただヴァレルのその熱い瞳が見たくて、自分を見ているその瞳にただ幸せだけを感じて、込み上げてくる涙をシャツで拭いた。 
 
 リュカの体力が限界になれば、ヴァレルが上になり腰を振る。
 穴に吐き出された液体が泡立ちあふれてきても、リュカの射精でリュカのシャツも腹も、ヴァレルの腹もぐちゃぐちゃに汚れていても、その全てが愛おしくて、つかの間の貴重な時間だった。
 
 今だけは、過去も未来も何も考えず、ヴァレルを自らと同じところまで堕として、ただ欲望のままに味わい尽くす。もうこれで最後なのだ。この夢が覚めればまたヴァレルのいない生活が待っている。
 体内をかき回される痛みですら、リュカにとってはとても甘く麻薬のような恍惚感を感じた。
 
 
 

 
 
 
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