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第二章 バヤールの町
15.濡れ衣
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目が覚めると取り調べが始まった。
貴族扱いになっているからだろうか?窓はなく、ドアの前に鉄格子があったが、部屋自体はリュカの寮の部屋より豪華だった。
エロアに捕まればこんな扱いではすまないだろう。エロアではないことに少しほっとしつつも、全く予想のつかない事態に油断はできない。リュカは再び魔力封じの手錠を付けられていた。
(あっちでも、こっちでも…)
ため息しかでてこない。一度掴みかけた自由。やはりあのまますべてを捨てて逃げるべきだったのだ。後悔してももう遅い。
だが、なぜギーは自分にあんなことをしたのだろう。
ギーから派閥の話は聞いたことがない。リュカがエロアの弟子だから、周りからはギーもエロア寄りに見られている様子ではあったが、本人はいつもあの調子で気にしている様子もなかった。
だが誰かに協力し、リュカを拘束したということは、確実に誰かの命令もしくは脅しで動いたということだ。
エロアなのか、反エロアの勢力なのかリュカには全くわからない。ただわかるのは、今の危機を乗り越えなくてはというだけ。
ごくりとつばを飲んで今自分が置かれている状況を確認する。
正面に座るのは尋問官2人。他にはリュカの逃亡を妨げるためかテーブルの両側と、窓とドアの前とに第一騎士団の制服を着た男たちがいた。
「これは、君のマジックバッグだね?」
「…はい、多分」
すり替えられていたらわからない、という意味も込めて少し投げやりな声が出た。
「ロックを解除してくれるかい?」
マジックバッグの中身は自分しか取れないように魔法がかかっている。尋問官が一度手を入れて取り出せないことを確認してから、リュカの手錠が一時的に外され、ロックを解除させられた。尋問官がバッグの中身を取り出して机に並べる。
いちいち「これは君のもの?」と確認しながら。
服といくつかの本と生薬が出てきたところで、あの絵本が出てきた。
「これも君のもの?」
「はい。 あ、でもその絵本の作者の先生にもらったものなんですけど…」
その本を他の人に触れられたくなかったし、中を見られたくなかった。少し眉を寄せて答えると尋問官は顔を見合わせてうなずいた。
「ありがとう。 部屋にもどっていいよ」
(なんだ? あの絵本に問題があるのか? やはりあの禁忌魔法が描かれているのが問題なのか?)
「どういうことですか!?」
リュカの質問に答えてくれる人物は誰もいない。
この尋問の意味がわかったのは、翌日すぐだった。
◇
「リュカがこの間の城への侵入者だったって、どういうことですか、陛下!? そんなことあり得ない!!」
謁見の間に響き渡るヴァレルの声。謹慎中なのに出廷して、周りから苦虫を噛み潰したような顔をされているが、気にする素振りはない。
「ヴァレル、控えなさい」
「父上!! 父上もなにか仰ってください!」
そんなヴァレルを穏やかな顔で見ているフレデリック王。リュカの罪を断罪する場とは思えない表情だった。
玉座にフレデリック王が座り、その両脇に大臣たちが並んでいる。その中にはリュカの尋問をした人物もいた。
玉座の前で手錠に繋がれ、第一騎士団の団員2人に脇を抱えられ、立ち尽くすリュカ。もともと白い肌から更に血の気が抜け青白くなっていた。
こんな事が起こるはずがない。エロアに監禁されている間に自分の身に一体なにが起きたというのか。
頭の中でそう繰り返すが、誰も答えてはくれない。
ただただ呆然とその場に立たされているだけ。
続けて謁見の間の扉が大きな音を立てて開かれ、エロアが飛び込んできた。
「陛下!! リュカを逮捕したって、一体どういうことですか!? リュカが、この間の盗人の犯人だなんてそんな馬鹿なこと絶対にありえないと何度も申し上げたはずです!!」
エロアの姿を見た途端、リュカの顔が恐怖でゆがむ。全身がガタガタ震え始め、背中に冷たい汗が流れた。足に力が入らず、崩れ落ちそうになる体を両脇の騎士が支えた。
やはりなにを犠牲にしても逃げなくてはいけなかった。屋敷に連れ戻されるのか、それともここで罪人として処罰されるのか。どちらにしても地獄しか待っていない。
だが、もう会えないと思っていたヴァレルを一目見れたのだ。しかも、自分が何を言っても誰も信じてくれないのに、ヴァレルだけが無条件に自分を信じてくれている。それだけで十分だった。
もともと死ぬ覚悟して脱走したのだ。怖いものなんてなにもない。せめて、ヴァレルの前では気丈な姿を見せたい。
呼吸を落ち着けて、足に力を入れる。顔を上げてヴァレルを見た。
ヴァレルとの視線が絡まる。身体の震えは収まらない。泣きそうな顔で、精一杯の笑顔を向けた。
「リュカ……」
リュカの元へ一歩踏み出したヴァレルをバージルが制した。
「おや、エロア師団長? 今日は体調不良で休むと言っていなかったかね? もう身体は大丈夫なのか?」
裁判の場だというのに相変わらずのんびりとしたフレデリック王の声。
「陛下! 私がいない間にリュカを捕まえようとしたのでしょうが、そうはさせません! 体調不良なんて言っていられない事態だから駆けつけたんです!! 何度もお伝えしているように、リュカはずっと屋敷にいたんです!! それを不当逮捕するなんて!! 陛下はエティエンヌを敵に回すおつもりですか?」
顔を真っ赤にして怒鳴ったあと、かすかにエロアの身体が揺れた。昨日のリュカの反撃が効いているのだろう。
「エティエンヌを敵に回すだなんてとんでもない。 私にとっても思い出深い、大切な家門だ。 だが、それとこれとは別だろう? 罪は罪。 きちんと裁かなくては。
そして、リュカが屋敷にいたという唯一の証人はお前しかいない。 だが、城内の警備の者が何人も城でリュカを見たと言っているのだ。 証拠も本人のマジックバッグから出てきた」
「誰がそんなことを!?」
エロアが怒鳴る。
リュカ自身も戸惑った。自分によく似た人物が他にもいるのだろうか?それに絵本はもらったものなのに。
「しかも被告はまだヴェルマンドの者だ。 お前の家門に迷惑がかかることもないから安心しろ」
「そういうことではないっ!! 絶対にっ!! 絶対にあり得ないっ!! 屋敷からでられたはずがないっ!!」
「おや、奇妙なことを言う。 それではまるでヴェルマンドの人間をお前が監禁していたみたいではないか。 病気で寝ていたのではないのか? そして、病気だと言って、お前が連れてこなかったリュカ=ヴェルマンドはここにいる。 その日だってお前の目を盗んで忍びこんでいたのかもしれないぞ?」
「絶対にありえない!! どうやって……? はっ、もしかしてリュカ、貴様……」
冷たい汗が背を伝わった。命令されれば、リュカはすべてを話してしまう。
「エロア、もうよい。 そこまでにしろ。 始めろ」
フレデリック王はエロアの言葉を遮り、右手を上げて大臣に合図をした。
「こほん……では、陛下、エロア師団長、始めさせていただきます」
大臣の一人、リュカの尋問をした人物が一歩前にでた。
そこからはリュカの記憶ない罪が述べられていく。王城に侵入してその絵画集を盗んだというもの。
「それは…もらったもので…あ、その本の作者さん、チェイスさんを探して下さい! そうすれば……」
「僕もリュカを見ました」
リュカの声に被せて、ギーの明るい声が広間に響いた。
「貴様! 魔塔勤務のくせに、貴様まで謀る気か!?」
エロアの怒鳴り声がギーに向けられた。
「ふむ、ギーよ。 述べよ」
「僕の部屋はリュカの部屋の隣ですしね。 盗難があった日、僕はリュカを城と寮で見ました」
「そんな……ギー、なんでそんな嘘を? 僕は何も知らない……」
か細い声は却下された。そんなことはありえないのに。自分はずっとエロアの屋敷に監禁され、一人で苦しんでいた。だがそれすらも口にすることはできない。
外堀を固められ、本人が認めないままリュカの罪が確定された。
「リュカ=ヴェルマンド、窃盗の罪で北の森で3年間の奉仕活動を命ずる。 虚偽の報告をして、リュカの罪を隠蔽しようとしたエロア=エティエンヌは、一ヶ月の謹慎。 あと家門から罪人を出した罰だが、バージルよ。 どう落とし前をつける? リュカを家門から追い出すか?」
もともと養子縁組が解消されるのは時間の問題だったのだ。聞かなくてもわかる答えにリュカは目をつむった。わかっていても耳にしたくない言葉がある。
だがバージルは、意外なことを言った。
「ふむ…そうですな。 リュカの刑については陛下のご意見に賛同いたしますのでこれ以上は不要でしょう。 あと、もう一人の愚息の方ですが、先日エロア殿に不躾な振る舞いをした件といい、今回謹慎中にもかかわらず出廷し、かつ、なんの根拠もなく罪人をかばい、法廷を混乱させた罪がありますね。 こちらの馬鹿息子についても、しばらく北方の奉仕活動にあたらせましょう」
「ふむ…そうなると、お前の下の息子の名誉も傷つくがかまわないのか? この間首席で騎士団に入団したばかりだろう?」
「そんな! それはだめです!」
思わず叫ぶが誰もリュカの言葉になど耳を傾けない。
「浅慮な者が家門を率いても、周りが不幸になる。 息子にはよい反省の機会となるでしょう。 それに今、北の方は魔獣被害がひどい。 息子は考えなしではあるが、多少腕はたつ。 実践で揉まれてくるのも良い経験となるでしょう」
「ふむ……では、それで決まりだな」
フレデリック王はあごひげをなでながら言った。
リュカは驚きのあまり、不躾にも王の顔をまじまじと見つめた。
北の森は王都からは遠い。3年間とはいえ、エロアから完全に離れられる。
エロアが「そんなの許さない! もう一度ちゃんと調査しろ! 私とリュカを離すための策略だ」と怒鳴りながら兵士に連れて行かれるエロアの言葉も耳に入ってはこなかった。
貴族扱いになっているからだろうか?窓はなく、ドアの前に鉄格子があったが、部屋自体はリュカの寮の部屋より豪華だった。
エロアに捕まればこんな扱いではすまないだろう。エロアではないことに少しほっとしつつも、全く予想のつかない事態に油断はできない。リュカは再び魔力封じの手錠を付けられていた。
(あっちでも、こっちでも…)
ため息しかでてこない。一度掴みかけた自由。やはりあのまますべてを捨てて逃げるべきだったのだ。後悔してももう遅い。
だが、なぜギーは自分にあんなことをしたのだろう。
ギーから派閥の話は聞いたことがない。リュカがエロアの弟子だから、周りからはギーもエロア寄りに見られている様子ではあったが、本人はいつもあの調子で気にしている様子もなかった。
だが誰かに協力し、リュカを拘束したということは、確実に誰かの命令もしくは脅しで動いたということだ。
エロアなのか、反エロアの勢力なのかリュカには全くわからない。ただわかるのは、今の危機を乗り越えなくてはというだけ。
ごくりとつばを飲んで今自分が置かれている状況を確認する。
正面に座るのは尋問官2人。他にはリュカの逃亡を妨げるためかテーブルの両側と、窓とドアの前とに第一騎士団の制服を着た男たちがいた。
「これは、君のマジックバッグだね?」
「…はい、多分」
すり替えられていたらわからない、という意味も込めて少し投げやりな声が出た。
「ロックを解除してくれるかい?」
マジックバッグの中身は自分しか取れないように魔法がかかっている。尋問官が一度手を入れて取り出せないことを確認してから、リュカの手錠が一時的に外され、ロックを解除させられた。尋問官がバッグの中身を取り出して机に並べる。
いちいち「これは君のもの?」と確認しながら。
服といくつかの本と生薬が出てきたところで、あの絵本が出てきた。
「これも君のもの?」
「はい。 あ、でもその絵本の作者の先生にもらったものなんですけど…」
その本を他の人に触れられたくなかったし、中を見られたくなかった。少し眉を寄せて答えると尋問官は顔を見合わせてうなずいた。
「ありがとう。 部屋にもどっていいよ」
(なんだ? あの絵本に問題があるのか? やはりあの禁忌魔法が描かれているのが問題なのか?)
「どういうことですか!?」
リュカの質問に答えてくれる人物は誰もいない。
この尋問の意味がわかったのは、翌日すぐだった。
◇
「リュカがこの間の城への侵入者だったって、どういうことですか、陛下!? そんなことあり得ない!!」
謁見の間に響き渡るヴァレルの声。謹慎中なのに出廷して、周りから苦虫を噛み潰したような顔をされているが、気にする素振りはない。
「ヴァレル、控えなさい」
「父上!! 父上もなにか仰ってください!」
そんなヴァレルを穏やかな顔で見ているフレデリック王。リュカの罪を断罪する場とは思えない表情だった。
玉座にフレデリック王が座り、その両脇に大臣たちが並んでいる。その中にはリュカの尋問をした人物もいた。
玉座の前で手錠に繋がれ、第一騎士団の団員2人に脇を抱えられ、立ち尽くすリュカ。もともと白い肌から更に血の気が抜け青白くなっていた。
こんな事が起こるはずがない。エロアに監禁されている間に自分の身に一体なにが起きたというのか。
頭の中でそう繰り返すが、誰も答えてはくれない。
ただただ呆然とその場に立たされているだけ。
続けて謁見の間の扉が大きな音を立てて開かれ、エロアが飛び込んできた。
「陛下!! リュカを逮捕したって、一体どういうことですか!? リュカが、この間の盗人の犯人だなんてそんな馬鹿なこと絶対にありえないと何度も申し上げたはずです!!」
エロアの姿を見た途端、リュカの顔が恐怖でゆがむ。全身がガタガタ震え始め、背中に冷たい汗が流れた。足に力が入らず、崩れ落ちそうになる体を両脇の騎士が支えた。
やはりなにを犠牲にしても逃げなくてはいけなかった。屋敷に連れ戻されるのか、それともここで罪人として処罰されるのか。どちらにしても地獄しか待っていない。
だが、もう会えないと思っていたヴァレルを一目見れたのだ。しかも、自分が何を言っても誰も信じてくれないのに、ヴァレルだけが無条件に自分を信じてくれている。それだけで十分だった。
もともと死ぬ覚悟して脱走したのだ。怖いものなんてなにもない。せめて、ヴァレルの前では気丈な姿を見せたい。
呼吸を落ち着けて、足に力を入れる。顔を上げてヴァレルを見た。
ヴァレルとの視線が絡まる。身体の震えは収まらない。泣きそうな顔で、精一杯の笑顔を向けた。
「リュカ……」
リュカの元へ一歩踏み出したヴァレルをバージルが制した。
「おや、エロア師団長? 今日は体調不良で休むと言っていなかったかね? もう身体は大丈夫なのか?」
裁判の場だというのに相変わらずのんびりとしたフレデリック王の声。
「陛下! 私がいない間にリュカを捕まえようとしたのでしょうが、そうはさせません! 体調不良なんて言っていられない事態だから駆けつけたんです!! 何度もお伝えしているように、リュカはずっと屋敷にいたんです!! それを不当逮捕するなんて!! 陛下はエティエンヌを敵に回すおつもりですか?」
顔を真っ赤にして怒鳴ったあと、かすかにエロアの身体が揺れた。昨日のリュカの反撃が効いているのだろう。
「エティエンヌを敵に回すだなんてとんでもない。 私にとっても思い出深い、大切な家門だ。 だが、それとこれとは別だろう? 罪は罪。 きちんと裁かなくては。
そして、リュカが屋敷にいたという唯一の証人はお前しかいない。 だが、城内の警備の者が何人も城でリュカを見たと言っているのだ。 証拠も本人のマジックバッグから出てきた」
「誰がそんなことを!?」
エロアが怒鳴る。
リュカ自身も戸惑った。自分によく似た人物が他にもいるのだろうか?それに絵本はもらったものなのに。
「しかも被告はまだヴェルマンドの者だ。 お前の家門に迷惑がかかることもないから安心しろ」
「そういうことではないっ!! 絶対にっ!! 絶対にあり得ないっ!! 屋敷からでられたはずがないっ!!」
「おや、奇妙なことを言う。 それではまるでヴェルマンドの人間をお前が監禁していたみたいではないか。 病気で寝ていたのではないのか? そして、病気だと言って、お前が連れてこなかったリュカ=ヴェルマンドはここにいる。 その日だってお前の目を盗んで忍びこんでいたのかもしれないぞ?」
「絶対にありえない!! どうやって……? はっ、もしかしてリュカ、貴様……」
冷たい汗が背を伝わった。命令されれば、リュカはすべてを話してしまう。
「エロア、もうよい。 そこまでにしろ。 始めろ」
フレデリック王はエロアの言葉を遮り、右手を上げて大臣に合図をした。
「こほん……では、陛下、エロア師団長、始めさせていただきます」
大臣の一人、リュカの尋問をした人物が一歩前にでた。
そこからはリュカの記憶ない罪が述べられていく。王城に侵入してその絵画集を盗んだというもの。
「それは…もらったもので…あ、その本の作者さん、チェイスさんを探して下さい! そうすれば……」
「僕もリュカを見ました」
リュカの声に被せて、ギーの明るい声が広間に響いた。
「貴様! 魔塔勤務のくせに、貴様まで謀る気か!?」
エロアの怒鳴り声がギーに向けられた。
「ふむ、ギーよ。 述べよ」
「僕の部屋はリュカの部屋の隣ですしね。 盗難があった日、僕はリュカを城と寮で見ました」
「そんな……ギー、なんでそんな嘘を? 僕は何も知らない……」
か細い声は却下された。そんなことはありえないのに。自分はずっとエロアの屋敷に監禁され、一人で苦しんでいた。だがそれすらも口にすることはできない。
外堀を固められ、本人が認めないままリュカの罪が確定された。
「リュカ=ヴェルマンド、窃盗の罪で北の森で3年間の奉仕活動を命ずる。 虚偽の報告をして、リュカの罪を隠蔽しようとしたエロア=エティエンヌは、一ヶ月の謹慎。 あと家門から罪人を出した罰だが、バージルよ。 どう落とし前をつける? リュカを家門から追い出すか?」
もともと養子縁組が解消されるのは時間の問題だったのだ。聞かなくてもわかる答えにリュカは目をつむった。わかっていても耳にしたくない言葉がある。
だがバージルは、意外なことを言った。
「ふむ…そうですな。 リュカの刑については陛下のご意見に賛同いたしますのでこれ以上は不要でしょう。 あと、もう一人の愚息の方ですが、先日エロア殿に不躾な振る舞いをした件といい、今回謹慎中にもかかわらず出廷し、かつ、なんの根拠もなく罪人をかばい、法廷を混乱させた罪がありますね。 こちらの馬鹿息子についても、しばらく北方の奉仕活動にあたらせましょう」
「ふむ…そうなると、お前の下の息子の名誉も傷つくがかまわないのか? この間首席で騎士団に入団したばかりだろう?」
「そんな! それはだめです!」
思わず叫ぶが誰もリュカの言葉になど耳を傾けない。
「浅慮な者が家門を率いても、周りが不幸になる。 息子にはよい反省の機会となるでしょう。 それに今、北の方は魔獣被害がひどい。 息子は考えなしではあるが、多少腕はたつ。 実践で揉まれてくるのも良い経験となるでしょう」
「ふむ……では、それで決まりだな」
フレデリック王はあごひげをなでながら言った。
リュカは驚きのあまり、不躾にも王の顔をまじまじと見つめた。
北の森は王都からは遠い。3年間とはいえ、エロアから完全に離れられる。
エロアが「そんなの許さない! もう一度ちゃんと調査しろ! 私とリュカを離すための策略だ」と怒鳴りながら兵士に連れて行かれるエロアの言葉も耳に入ってはこなかった。
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