かぶっていた猫が外れたら騎士団にスカウトされました!

灯倉日鈴(合歓鈴)

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92、通算三回目のデート(5)

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 ――そんなこんなで。
 若干の蟠りを残しつつ、私達は一緒に魔鉱石を探すことになった。

「当てはあるのか?」

「とりあえず近くの川を浚って、魔鉱石の欠片が見つかったら上流に進もうかと」

 情報が少ないので、手探り状態だ。雲を掴むような私の言葉に、フィルアートは顎に手を当てて「ふむ」と頷いた。

「それなら、俺が試していいか?」

 なにを? と聞き返す前に彼は腰の剣を抜いた。朝日を反射し煌めく白銀の刃は、息を呑むほど神々しい。その王家の秘宝を片手に持つと、フィルアートは何のてらいもなく剣身の平で側にあった岩をぺちっと叩いた。

 ……。

「違ったか」

 フィルアートは小さく独りごちると、他の岩や地面をぺちぺち叩いていく。

 ……えーと。

「何やってるんですか?」

 意味が解らず尋ねると、王子は振り返らず作業を続けながら言う。

「この神剣は魔鉱石の王、聖鉱石で造られている。だから神剣これで叩くと近くにある魔鉱石が共鳴するのだが……」

 もう一度地面を叩いた瞬間、地の底からコーンとか細い音が響いた。

「遠いな」

 微かに聞こえた硬い高音に、フィルアートは顔をしかめる。

「辿ってみよう」

 聞き耳を立てながら歩き始める彼に、私も忍び足でついていく。

「神剣にはこんな使い方もあるんですね」

 流石天下のチートアイテム。便利だけど、でもちょっと罰当たりな気もする。私の言葉に、フィルアートは振り返らずに苦笑する。

「大神官に見られたら、『神剣を粗末に扱うな』と怒られるだろうな」

 あ、やっぱ罰当たりなんだ。ペチペチ叩くの。

「この魔鉱石の鉱脈の探し方は叔父に教わったんだ」

「叔父様?」

「そう。俺の父の弟で、先代の神剣所持者」

 父の弟っていうと、王弟殿下か。日常会話がロイヤルだ。

「彼は王家の荘園の一つを管理していて、俺は幼い頃そこで暮らしていたんだ。よく魔鉱石が産出される土地で、暇な時は魔石掘りに連れて行ってもらっていた」

 懐かしそうに語る彼に、私は首を傾げる。

「フィルアート殿下はずっと王宮に住んでいたんじゃないんですか?」

 てっきり王都育ちだと思っていたのだけど、

「生まれは王宮だが、三歳の頃荘園に預けられて、王立学園の初等部に入学する為王都に戻ってきた。学園では寄宿舎に入ったから、王宮で暮らし始めたのは卒業後からだな。最近は公務以外で実家に帰ることは少ないが、部屋はあるぞ」

 ……なんか、勝手に泥臭さとは無縁の生活を送ってきたイメージ持ってたから、意外だ。

「あれ? でもスノーとは王宮で仲良くなったんじゃ?」

「スノーが王宮に来たのは六年前だったかな? 俺が王宮に入ったのはその二年前くらい。新参者同士だから、気には掛けていた。スノーを軍に誘ったのも俺だ」

 ええと、学園の高等部卒業の年齢は十八。フィルアートは二年飛び級したって兄達が言ってたから、十六歳で王宮で暮らし始めて、二年後に十歳のスノーと知り合ったわけか。
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