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91、通算三回目のデート(4)
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「ちなみに、フィルアート殿下は私のどこが好……気に入ったんですか?」
恥ずかしいけど、いい機会だから訊いてみる。彼は顎に手を当てて思案して、
「頑丈そうなところかな」
……以前にも言ってましたね。
こっそりがっかりする私に、フィルアートは飄々と続ける。
「俺の理想は、一緒にいると楽しくて、一緒にいなくても安心できる人。俺がいない時にも美味しく飯を食って、自分でやりたいことを見つけて笑っていられる人。二人でいるととびきり幸せで、一人でも全力で幸せになれる人」
軍人は家を空けることが多いから、心配しないですむ人がいいってこと? でも、
「私がそれに当てはまるんですか?」
いまいち納得できない私に、彼は苦笑する。
「君の心は君にしか解らない。これはあくまで俺の理想で、君がそうでなくてもいい。ただ俺はエレノアといると楽しい。だから傍にいたい」
なんか抽象的なことを並べてはぐらかされた気がする。
「エレノアは? どんな人が好みだ?」
聞き返されて困る。一度は伯爵令息と婚約までした私だけど、
「私、相手の家柄や資産状況や家庭環境ばっか調べてて、恋愛する気がなかったんですよね」
思えばあの頃の私はサイテーだった。
「……けど」
「けど?」
首を傾げるフィルアートに、私は目を合わせる。
「今は……ちゃんと心がときめくかで決めたいです」
うぅ、恥ずかしい。
言い捨ててそっぽを向く私の頭を、フィルアートがニヤニヤしながらわしゃわしゃ撫でる。気安く触んなと暴れたくなるけど、とりあえずそのままにしとく。
――結局なにも進展してないんだけど……。
それでも確実に、私と彼の距離は縮まっている。
「ところで、今日はなんでこんな辺鄙な場所に来たんだ?」
不思議そうなフィルアート。カプリース邸で理由までは聞いてこなかったのか。
「魔鉱石を拾いに来たんですよ。魔剣の材料にするために」
私は王家の神剣を持ってませんからね。その答えに、王子は胸を叩く。
「よし、それなら俺も手伝おう」
「お断りします」
即答した私に、かくんと顎を外すフィルアート。
「何故だ? せっかくデートのチャンスなのに!」
「そこが問題なんですよ!」
喚く彼に私も負けない音量で怒鳴る。
「フィルアート殿下とデートすると、もれなく強大な魔物に遭遇するんですよ? 殿下が祟られてるとしか思えません!」
力説する私に、フィルアートは露骨に眉を顰めて、
「それはこっちの台詞だ」
…………自覚がないって恐ろしい。
恥ずかしいけど、いい機会だから訊いてみる。彼は顎に手を当てて思案して、
「頑丈そうなところかな」
……以前にも言ってましたね。
こっそりがっかりする私に、フィルアートは飄々と続ける。
「俺の理想は、一緒にいると楽しくて、一緒にいなくても安心できる人。俺がいない時にも美味しく飯を食って、自分でやりたいことを見つけて笑っていられる人。二人でいるととびきり幸せで、一人でも全力で幸せになれる人」
軍人は家を空けることが多いから、心配しないですむ人がいいってこと? でも、
「私がそれに当てはまるんですか?」
いまいち納得できない私に、彼は苦笑する。
「君の心は君にしか解らない。これはあくまで俺の理想で、君がそうでなくてもいい。ただ俺はエレノアといると楽しい。だから傍にいたい」
なんか抽象的なことを並べてはぐらかされた気がする。
「エレノアは? どんな人が好みだ?」
聞き返されて困る。一度は伯爵令息と婚約までした私だけど、
「私、相手の家柄や資産状況や家庭環境ばっか調べてて、恋愛する気がなかったんですよね」
思えばあの頃の私はサイテーだった。
「……けど」
「けど?」
首を傾げるフィルアートに、私は目を合わせる。
「今は……ちゃんと心がときめくかで決めたいです」
うぅ、恥ずかしい。
言い捨ててそっぽを向く私の頭を、フィルアートがニヤニヤしながらわしゃわしゃ撫でる。気安く触んなと暴れたくなるけど、とりあえずそのままにしとく。
――結局なにも進展してないんだけど……。
それでも確実に、私と彼の距離は縮まっている。
「ところで、今日はなんでこんな辺鄙な場所に来たんだ?」
不思議そうなフィルアート。カプリース邸で理由までは聞いてこなかったのか。
「魔鉱石を拾いに来たんですよ。魔剣の材料にするために」
私は王家の神剣を持ってませんからね。その答えに、王子は胸を叩く。
「よし、それなら俺も手伝おう」
「お断りします」
即答した私に、かくんと顎を外すフィルアート。
「何故だ? せっかくデートのチャンスなのに!」
「そこが問題なんですよ!」
喚く彼に私も負けない音量で怒鳴る。
「フィルアート殿下とデートすると、もれなく強大な魔物に遭遇するんですよ? 殿下が祟られてるとしか思えません!」
力説する私に、フィルアートは露骨に眉を顰めて、
「それはこっちの台詞だ」
…………自覚がないって恐ろしい。
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