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86、魔剣を作ろう(2)
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「魔剣、ですか?」
「そう。頻繁に魔力を通すなら、普通の金属剣より魔剣がオススメ。最初から剣が魔力を帯びていれば自分の魔力を使わなくて済むし、自分の魔力を上乗せして威力を増すこともできる」
ほほぅ、それはいい事ずくめだ。
「でも、お高いんでしょう?」
セリ二を抱きしめ警戒する私に、ザックは苦笑する。
「ピンキリだね」
それから剣を研ぐ手を止めて、指折り説明する。
「『魔剣』と呼ばれる剣は、大まかに分けて三種類。一つ目は『純魔剣』。これは魔界や暗晦の森で発生した剣のこと。人ならざる者の手で造られ、剣自体が魔物なこともある。入手は非常に困難。王都の大聖堂に何本か封印されているって噂だけど、真偽は不明。人が持つともれなく狂い、歴史に名が出る時はいつも大量の血が流された」
……めちゃくちゃ呪いのアイテムじゃん……。
ドン引きする私をよそに、ザックは続ける。
「二つ目は『魔法付与剣』。これは魔法使いにあらかじめ魔法を掛けてもらった武器のことだね。敵との相性によって火や水など属性を変えて付与できるし、聖水を振りかければアンデッドへの攻撃力が増す。難点は魔力耐性の弱い金属はすぐへたることと、魔法付与できる者がいないと使えないってこと」
ちなみに、私の『剣に魔力を乗せる技』は魔法付与剣に分類されるそうだ。
「そして、三つ目は『魔力含有剣』だ」
ザックは不敵に笑って三本の指を突き出した。
「これは、剣を造る工程で材料に魔力のある物質を加えるということ。魔物の血肉や大魔導士の骨を使うこともあるけど、それらは呪われやすい。安全面と強度を考えたら魔鉱石が無難だね。王家の神剣は剣を打つ用に神様から鉱石を賜ったっていうから、純魔剣と魔力含有剣の間だね。『魔剣』いうより『聖剣』だけど」
なるほど、武器の世界も奥深いのね。
「エレノアちゃんはそんなに魔力高くないみたいだから、レイピアより魔力含有剣の方が効率よく戦えるんじゃないかな?」
確かに、今でさえ苦労しているのに、これから激戦区の砦でもっと強い敵と戦ったら、私の魔力などあっという間に枯渇してしまう。得物を弱さの言い訳にしたくはないけれど、性能の違いは否めない。
「ちなみに、私に合いそうな魔剣はどれですか?」
恐る恐る訊いてみると、ザックは右の壁を指差した。
「そこに掛かっている品は大体使えると思う」
私は壁に陳列された剣を順に見ていくが、
「たっかっ!」
現在の得物の五倍の価格の値札に悲鳴を上げる。
「こんなの買えませんよ」
「月賦払いも利くよ?」
「借金はしない主義なんです!」
それは死んだ母にもきつく言われてきた。
「とにかく、今日はレイピアのメンテだけでいいです。あとは自力でなんとかしますから」
「お。なんとかする気、あるんだ」
語気を強めた私の言葉尻を捕らえ、ザックは商売人の笑顔でこう返した。
「そんな君にとびきりお得な情報があるんだけど、聞く?」
「そう。頻繁に魔力を通すなら、普通の金属剣より魔剣がオススメ。最初から剣が魔力を帯びていれば自分の魔力を使わなくて済むし、自分の魔力を上乗せして威力を増すこともできる」
ほほぅ、それはいい事ずくめだ。
「でも、お高いんでしょう?」
セリ二を抱きしめ警戒する私に、ザックは苦笑する。
「ピンキリだね」
それから剣を研ぐ手を止めて、指折り説明する。
「『魔剣』と呼ばれる剣は、大まかに分けて三種類。一つ目は『純魔剣』。これは魔界や暗晦の森で発生した剣のこと。人ならざる者の手で造られ、剣自体が魔物なこともある。入手は非常に困難。王都の大聖堂に何本か封印されているって噂だけど、真偽は不明。人が持つともれなく狂い、歴史に名が出る時はいつも大量の血が流された」
……めちゃくちゃ呪いのアイテムじゃん……。
ドン引きする私をよそに、ザックは続ける。
「二つ目は『魔法付与剣』。これは魔法使いにあらかじめ魔法を掛けてもらった武器のことだね。敵との相性によって火や水など属性を変えて付与できるし、聖水を振りかければアンデッドへの攻撃力が増す。難点は魔力耐性の弱い金属はすぐへたることと、魔法付与できる者がいないと使えないってこと」
ちなみに、私の『剣に魔力を乗せる技』は魔法付与剣に分類されるそうだ。
「そして、三つ目は『魔力含有剣』だ」
ザックは不敵に笑って三本の指を突き出した。
「これは、剣を造る工程で材料に魔力のある物質を加えるということ。魔物の血肉や大魔導士の骨を使うこともあるけど、それらは呪われやすい。安全面と強度を考えたら魔鉱石が無難だね。王家の神剣は剣を打つ用に神様から鉱石を賜ったっていうから、純魔剣と魔力含有剣の間だね。『魔剣』いうより『聖剣』だけど」
なるほど、武器の世界も奥深いのね。
「エレノアちゃんはそんなに魔力高くないみたいだから、レイピアより魔力含有剣の方が効率よく戦えるんじゃないかな?」
確かに、今でさえ苦労しているのに、これから激戦区の砦でもっと強い敵と戦ったら、私の魔力などあっという間に枯渇してしまう。得物を弱さの言い訳にしたくはないけれど、性能の違いは否めない。
「ちなみに、私に合いそうな魔剣はどれですか?」
恐る恐る訊いてみると、ザックは右の壁を指差した。
「そこに掛かっている品は大体使えると思う」
私は壁に陳列された剣を順に見ていくが、
「たっかっ!」
現在の得物の五倍の価格の値札に悲鳴を上げる。
「こんなの買えませんよ」
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それは死んだ母にもきつく言われてきた。
「とにかく、今日はレイピアのメンテだけでいいです。あとは自力でなんとかしますから」
「お。なんとかする気、あるんだ」
語気を強めた私の言葉尻を捕らえ、ザックは商売人の笑顔でこう返した。
「そんな君にとびきりお得な情報があるんだけど、聞く?」
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