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79、二回目のデート、のはず(19)後日談

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 太陽が二重に見える。青い空に目がチカチカする。
 激戦から一夜明けて。私は疲れた体のまま早朝鍛錬に出ていた。帰ってから薪窯の火が落ちた大浴場で冷水シャワーを浴びたのまでは覚えているけど、翌朝ユニに起こされるまでの記憶がなかった。ベッドには入っていたから、自動的に服を着て部屋には戻ったらしい。髪は爆発してたから、ちゃんと乾かさなかったみたいだけど。
 ちょっとでも気を抜くと瞼がくっついてしまう。完全に寝不足だ。
 ……それもこれも、あのポンコツ王子のせいだ。
 恨み言をあくびと一緒に噛み殺して柔軟体操をしていると、隣に並んだゴードンが話し掛けてきた。

「聞きましたよ。昨日は大活躍だったそうで」

 耳が早いですね。でも、昨日の件を知ってるってことは、ゴードンは私が王子とデートしたことを知ってるの? また風当たり強くなったら嫌だなぁ。と内心冷や汗を垂らしていると、

「でも、廃屋の見回りだけでなく密売絡みの魔獣討伐までしてしまうなんて、流石フィルアート殿下ですね」

 ……ん? なんか変だぞ。

「廃屋の見回りって?」

 聞き返す私に、ゴードンはキョトンとする。

「知らなかったんですか? 今回の罰則を」

「罰則?」

 私の反応に、副隊長は「まったくあの人は」と額に手を当てて首を振る。

「実は、先日のデスワーム討伐の際のスノーの単独行動が上層部で問題視されていまして。彼は軍規で懲罰を受けないことを約束された存在なので、代わりにエレノアさんをスノーの共犯者として処分しようという意見が出ていたんです」

「ちょっ。なんですか、そのとばっちり! 大体、『単独行動』なのに『共犯者』が罰せられるって矛盾してないですか!?」

 そんなの見せしめ刑じゃん。思わず叫んだ私に、ゴードンは神妙に頷く。

「だから、フィルアート殿下は異議を唱えました。その結果、殿下が監督官を勤めるのを条件に処罰を簡単な奉仕活動にしてもらったんです」

「その奉仕活動って?」

「街の美化。即ち、最近不穏な噂の立つ廃病院の調査。実際に怪奇現象が起こるなら、原因を究明しに戻すことが目的でした」

 なるほど、それがか。活動場所がお化け屋敷なんて、いかにも魔物討伐隊らしい罰則だ。

「今回はスノーも奉仕活動に参加させたことと、思いがけず凶悪な魔獣を討伐できたこととで、上層部にも文句の付け所のない成果を挙げることができました。この件であなたの評価が下がることはないでしょう。これからも頑張ってください」

 話が途切れたタイミングで、ゴードンは他の隊員に呼ばれて去っていく。残された私はというと、

「……あのやろうっ」

 頭を抱えて蹲る。
 なにがデートだ。全部フィルアートの手のひらで踊らされてたのか。ほんの少しでも浮かれた私がバカみたい。
 騙されて悔しい気持ちはある。
 でも……。

「ちょっと、嬉しい……かも?」

 見えないところで私を庇ってくれてたんだよね。
 私は火が灯ったように温かくなっていく胸を、ギュッと押さえた。
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