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78、二回目のデート、のはず(18)
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ガタゴトと車輪から伝わる振動が眠気を誘う。
取り調べの後、馬車で軍総司令部までの道を行く。深夜なんて絶対辻馬車の捕まらない時間だけど、自国の王子が怪我をしたとのことで、憲兵隊が厚意で所有の馬車を出してくれたのだ。国家権力ありがたい。
狭い客車には進行方向の座席にフィルアートとスノーが並んで座り、私は対面に一人だ。
乗った瞬間から魔法使いは王子の肩に寄りかかって爆睡している。それを当然のように支えているフィルアートは案外大物かも。
「今日は色々あったな」
窓を眺めながら言う彼に、私は膝の上で丸くなったセリニを撫でてため息を返す。
「ありすぎです。まさかデートに出掛けて幽霊と魔獣と乱闘するとは思いませんでした」
二回目のデートにしてはイベント内容が激しすぎだろ。
「だが、以前と比べて君はとても強くなった。正直、感心した」
「そりゃあ、毎日副長にしごかれてますから」
ふてくされた私に、
「知ってる。君はいつかすごい騎士になるよ」
フィルアートはふっと小さく笑って、
「エレノアといると、いつも予想外のことが起こって想像以上の結果に繋がるから楽しい」
「私は平凡な人生が望みなんですけど」
ぼそっと呟くと、彼はまた笑う。
「君となら、平凡も楽しそうだ」
……それは、どういう意味?
顔を上げると至近距離のフィルアートと目が合って、私は慌てて逸してしまう。忘れがちだけど、この人って息が止まるほどの美形なんだよね。
なんとなく気まずくなって無言でいる間に、馬車は司令部に着く。
「む~、おやすみぃ……」
セリニの前足を握って挨拶してから、スノーがフラフラと官舎へ去っていく。フィルアートはこれからミカを起こして診察してもらうそうだ。
「おやすみ、エレノア。また誘っていいか?」
「おやすみなさい、フィルアート殿下。今度は椅子に座ってご飯が食べれる場所なら」
私の返事に、彼は眉尻を下げて苦笑した。
「努力する」
努力しなきゃいけないほど難しい問題なんだ? どんだけデートが下手なの、この人。
ポンコツ王子に一礼して、私は自室に向かう。
今回のフィルアートの壊滅的なデートプラン。その真意が知れるのは……あと数時間後のこと。
取り調べの後、馬車で軍総司令部までの道を行く。深夜なんて絶対辻馬車の捕まらない時間だけど、自国の王子が怪我をしたとのことで、憲兵隊が厚意で所有の馬車を出してくれたのだ。国家権力ありがたい。
狭い客車には進行方向の座席にフィルアートとスノーが並んで座り、私は対面に一人だ。
乗った瞬間から魔法使いは王子の肩に寄りかかって爆睡している。それを当然のように支えているフィルアートは案外大物かも。
「今日は色々あったな」
窓を眺めながら言う彼に、私は膝の上で丸くなったセリニを撫でてため息を返す。
「ありすぎです。まさかデートに出掛けて幽霊と魔獣と乱闘するとは思いませんでした」
二回目のデートにしてはイベント内容が激しすぎだろ。
「だが、以前と比べて君はとても強くなった。正直、感心した」
「そりゃあ、毎日副長にしごかれてますから」
ふてくされた私に、
「知ってる。君はいつかすごい騎士になるよ」
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「エレノアといると、いつも予想外のことが起こって想像以上の結果に繋がるから楽しい」
「私は平凡な人生が望みなんですけど」
ぼそっと呟くと、彼はまた笑う。
「君となら、平凡も楽しそうだ」
……それは、どういう意味?
顔を上げると至近距離のフィルアートと目が合って、私は慌てて逸してしまう。忘れがちだけど、この人って息が止まるほどの美形なんだよね。
なんとなく気まずくなって無言でいる間に、馬車は司令部に着く。
「む~、おやすみぃ……」
セリニの前足を握って挨拶してから、スノーがフラフラと官舎へ去っていく。フィルアートはこれからミカを起こして診察してもらうそうだ。
「おやすみ、エレノア。また誘っていいか?」
「おやすみなさい、フィルアート殿下。今度は椅子に座ってご飯が食べれる場所なら」
私の返事に、彼は眉尻を下げて苦笑した。
「努力する」
努力しなきゃいけないほど難しい問題なんだ? どんだけデートが下手なの、この人。
ポンコツ王子に一礼して、私は自室に向かう。
今回のフィルアートの壊滅的なデートプラン。その真意が知れるのは……あと数時間後のこと。
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