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63、二回目のデート、のはず(3)

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 は い びょ う い ん

 頭の中でリピートしてみる。

「え? なんでデートで廃病院??」


 混乱する私に、フィルアートは自信満々に言い放つ。
「最近、若者の間では心霊スポットが流行っているのだろう? ここならエレノアも喜ぶかと思って」

「……」

 ああああああ! やっぱポンコツだったよ、この王子っ!!
 毎日魔物相手に仕事してるってのに、何が悲しくて休日にお化け屋敷に来なきゃなんないのよ?
 誰? 王子に偏った流行教えてる奴は!?
 頭を抱えて蹲る私を余所に、スノーが外柵を掴んで飛び跳ねながら敷地内を覗き込む。

「すごーい! あの建物、エグいオーラ放ってる。エレノア、ここよ!」

 大はしゃぎなスノー。魔法使い的にはアミューズメントパークらしい。
 でも! 一般人の私には全然楽しくないんだけど!

「では、入ってみようか」

「錠が掛かってますが」

 私は鉄扉の鎖を指差しフィルアートのやる気に水を差すが、彼は折れない。

「向こうの柵が壊れていて、屈めば通り抜けられそうだ」

「ホントだ、入れた」

 勝手に入るな、スノー。
 さっきの疲れはどこへやら。「早く早く!」と手招きするスノーに、フィルアートも柵の隙間をくぐる。それから、まだ槍柵の向こう側で二の足を踏む私を振り返った。

「エレノアは来ないのか?」

「でも……他人の土地じゃないんですか?」

 倫理観に訴えかける私に、フィルアートはしれっと、

「この病院は廃業になってから買い手がつかず、王国政府が土地建物を管理している。王子の俺が入っても怒られないだろう」

 清々しい職権乱用だな!

「でも私、お出かけ用のこんな格好ですし、埃っぽい場所はちょっと……」

 もじもじと手を合わせて上目遣いに猫をかぶる私に、スノーが切り込む。

「エレノア、もしかして怖いの?」

「こここ怖くないしっ!!」

 全力で叫んでから、しまったと口を噤むけど、もう遅い。

「そうか、エレノアは幽霊が怖いのか。なら仕方がない」

「エレノア、可愛いね。そんなに怖いなら、僕が魔法で建物を消し飛ばしてあげようか?」

 憐憫の眼差しを向けてくる男性陣に、私の負けず嫌いが燃え上がる。

「怖くないって言ってるでしょ! ほら、行くわよ」

 柵を潜り抜け、ずんずん病院建物へと向かう私。

 ……うぅ、上手く乗せられた気がする……。

 背後から含み笑いが聞こえた気がするけど、私はそれを無視した。
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