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24、武器屋(2)

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 店内の隅では白い虎が矢羽をちょいちょい猫パンチして遊んでいる。

「これにします」

 私は何本か似た剣を素振りして、最初のレイピアを選んだ。この店員さん、若いのに見立てが上手いな。

「へい、毎度。サービスで帯剣ベルトつけちゃうよ」

 いそいそと剣を鞘にしまいながら、店員はほくほく顔だ。

「おいくらですか?」

「金貨十枚」

 お、結構いいお値段。

「……と、言いたいところだけど」

 彼はにこやかに顔を近づけてくる。

「君、可愛いから、デートしてくれたら大おまけで金貨七枚にしてあげる! どう?」

 うわ、見た目通りチャラいぞ、こいつ。
 勿論お断り! ……といいたいところだけど、お茶一杯くらいで三割引になるなら安いもんかな? まあ、最初に提示したのが値切りを想定した価格なんだろうけど。
 ボッタクリというほどではないけど、少々吹っ掛けた代金から値段交渉させてお得感を出すのが、上手い商売人の手口よね。
 それならこちらも有利な値段交渉の材料を……と考えて、ふと思い至る。

「あの、店員さんって、フィルアート殿下と同級生って言ってましたよね?」

「俺の名前はザックだよ。そうだよ、一緒に勉強してたんだ。すごいだろ!」

 自慢するザックに、私は何気なく、

「では、兄を知ってますか? 私、エレノア・カプリースといいます。兄はグロウスとクラインで……」

 言っているそばから、ザックの顔がみるみる青くなっていく。

「あ……あのカプリース兄弟の……妹!?」

 片眼鏡を床に落とし、ガタガタと震えながら奥の壁まで後退る。
 え? なに、その反応?

「あの……?」

「ひぃ! そ、その剣、半額でいいよ! だから、今日俺が君をナンパしたってことはお兄様達には言わないでくれ!」

「え?」

「あの兄弟が学園祭で発表した共作、『暗晦の展覧会』がどれだけの同窓生にトラウマを植え付けたことか……!」

 ガチガチと奥歯を鳴らしながら涙声で訴えるザック。
 ……お兄ちゃんズ、何したのよ……?

「えっと。じゃあ、お金、ここに置いていきますね」

 半額って言われたけど、私はカウンターに金貨六枚を置いて店を出た。
 足元では、セレニが頭を擦り付けながら纏わりついている。
 怖くて詳細は訊けないけど……。
 お兄ちゃん達のお陰で、お得な買い物ができました。
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