冒険者たちには事情があって

灯倉日鈴(合歓鈴)

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5、二人の苦労

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 赤い焚き火を眺めながら、テントに耳澄ます。

「……寝たかな?」

「多分な」

 静まり返った三角布の向こうに、セルヴァンははぁっと脱力した。

「今日もお疲れさん。てか、デリック、さっきのジャンケン後出しっぽかったぞ?」

 射手の軽口に、剣士は露骨に眉を顰める。

「上手くいったのだからいいだろう。毎回負けるのだって苦労するんだ」

「それは仕方ないよ。女の子を屋根のない場所で寝かせるなんて非道な真似できないしさ」

 セルヴァンは苦笑しながら首を竦める。
 ……そう、アレンの男装はとっくにバレていた。
 毎回彼女を安全な寝床へと誘導するため、仲間の青年二人は四苦八苦しているのだ。

「もう、いっそアレンに指摘したらどうだ? お前の変装は変装ではないと」

「可愛いオーラがダダ漏れてるって? ダメダメ! 何か事情があるんだろうし、本人は本気で男のフリしてるんだから」

 身も蓋もないデリックの提案を、セルヴァンはあっさり却下する。
 出会った時から、彼らにはアレンは『ショートカットの美少女』にしか見えていない。年長者の二人は、ただただ仲間の茶番に付き合っているだけだ。

「アレンは世間知らずの天然だけど、すっごくいい子だからさ。聖鞘帝国に着くまで俺たちで守ってやらないと」

「まあな」

 デリックは頷いてから、ぼそっと、

「でも、守るほどアレンは弱くない。あいつの魔法はセルヴァンより役に立つ」

「うわっ! ひどっ!」

 セルヴァンがゲラゲラ笑いながら抗議する。
 二人は道中でたまたま知り合った、旅の仲間。それでも今は、棘のある冗談を言い合えるくらいは仲がいい。まるで気のおけない幼馴染のように。

「んじゃ、俺、ちょっと見回り行ってくるから、火の番よろしくな。くれぐれもテントに入ってアレンの寝込みを襲わないように!」

「するかバカ」

 闇夜に消えるセルヴァンをシッシと手を振る仕草で追い払って、デリックは焚き火の前に残った。
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