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じゃぱにーずかるちゃーいずくーる12
しおりを挟む大罪スキルを持った奴をベルが殺しているという確証は無いが、確信はある。
大罪スキルが強力で凶悪なスキルだというのは俺の怠惰と妹の色欲を見れば一目瞭然で悪用しようと思えばいくらでも出来る。
そしてそれだけの力を個人が有しているのであれば活用するのが人の性だとも思う。
けれど今日という日まで俺と妹以外に大罪スキルについての情報は全く出てきていない。
最初は俺もそれだけのスキルを持っているのであれば一般的に見てダンジョン側とか人類の敵と認識される可能性を考慮して大人しくしているのだと思っていた。
だからこそ俺は未知の大罪スキル保有者を恐れ、警戒していた。
俺でさえこういう考えに至るのに、俺よりも頭が良くて優秀なベルがそんな素振りも見せず話題にも出さないというのは俺の中で違和感としてずっとあった。
そして俺が、ベルが大罪スキル持ちを殺していると確信したのは妹の美奈がこの件について全く触れない事だ。
俺は世界中の誰よりも妹の事を理解しているという自負がある。
そして俺の妹がリスクと成り得る大罪スキル保有者について考えない筈も無いし、俺に言わない筈も無い。
だからこそ俺は大罪スキル持ちをベルが殺しているという結論に至ったのだ。
まぁベルが俺に隠れてそういう事をやっていたとしても俺は別に責めるつもりも無いし、むしろ感謝したいぐらいなのだがベルが俺に言わなかったという事は俺が知る必要の無い事柄だとは理解している。
だけど気にしなければ気にならないが、気にしてしまえば確かめたくなるのが人というものだろう。
『5人ですよ!なので、大罪スキルはマスターと美奈の怠惰と色欲しか現存していませんよ!』
「そんなあっさり薄情するんかーい!……美奈もこの事は知ってるんだろう?」
『はいマスター!美奈も知っていますよ!』
「なんで俺には言わなかったの?」
『言う必要が無いと思いました!マスターの怠惰は既に完璧で、完結しているので怠惰ダンジョンから出なければ何も恐れる者は居ないですから!ですがマスターには申し訳ないですが、マスターには常に外への警戒心を持ち続けて頂きたかったというのが真実です!マスターは良くも悪くも怠惰に強い憧れを持ちながらもとても勤勉な人ですから!警戒させていれば昔みたいに怠惰の居城が発動しなくなる事も無くなると思っていたのです!だからこそ私は他の大罪スキル保有者という危険因子を排除し、その事実をマスターには告げずに今日まで過ごしていました。マスター、私は私なりにマスターを想って行動しています。それが仮にマスターに反逆していると捉えられる結果になろうとも私はマスターの利益を最優先に考えてます、それだけはマスターにも理解して頂きたいです!』
長々と語られた事の顛末。
俺を想っての行動か。
俺が過去に軽率な行動をしたせいで怠惰の居城が解除された事が事の発端なのは間違いないので、俺が今更何かを言うのは違うのかもしれない。
それでも俺は一つだけ言いたい。
「……俺はそこまで馬鹿じゃないぞ?」
『……それは本気で言っていますか?』
「……いや、ちょっと嘘」
『ちょっと……?』
「いやいや!俺はそこまで馬鹿じゃないだろー!現に今までだって……」
ふと思う。
この半年で俺がしてきた事について。
レベルを上げて飯食ってゲームして寝てただけだった。
『マスター。マスターは馬鹿でも無ければ考え無しでもありませんが、優秀では無いというのは怠惰ダンジョンでの共通認識ですので!』
「なん……だと……」
俺はてっきり皆にはそれなりに出来る人だと思われていると思っていた。
確かに凡人ではあるが、それは周りの者が凄すぎるだけで俺自身は優秀に片足突っ込んだぐらいの感覚で過ごしていた。
『マスターのそういう所が可愛くて、愛おしいのです!愚可愛いみたいな!』
もはや俺は愚かで可愛いという存在になっていた。
馬鹿にされているのに怒りも悲しみも無いのは何故だろう。
俺にはそういうプライドが無いからなのか、これが信頼という絆の成せる技なのか。
「はぁ……まぁいいや。とりあえず、大罪スキル持ちはもう居ないって事で良いんだよな?」
『はいマスター!』
「それが分かっただけで安心したよ……これで大手を振って外を歩かせる事が出来るな……」
『はい』
俺が恐れていたのは怠惰ダンジョンが潰される事では無く、怠惰ダンジョンに属する他種族が狙われる事だ。
正直な話、慢心とも思われるかもしれないがベルの居る怠惰ダンジョンが大罪スキル如きにやられるとは思って無い。
俺の怠惰だって弱点は存在するし、完璧とは程遠い。
けれどベルが居れば完璧に近いのは間違いない。
というかベルがチート過ぎるだけで、大罪スキルは大概の壊れ性能だ。
でもベルには及ばない。
それでもダンジョンの外に一歩でも出れば俺やベルの手の届かない場所は存在していて、そこで大罪スキルという凶悪なスキルを保有している者が俺達の仲間や家族を攻撃する可能性はあった。
千尋達のように強ければ敵わないにしても逃げる事は出来るだろうが。
「これからは皆が安心して外に出て行けるようになるな……」
『むしろレベルを上げていない普通の人達の方が心配ですね!』
「それは俺の管轄外なんで……」
俺は俺の責任として俺が生み出している種族に関しては責任を持つが、普通の人の心配は俺がする事では無い。
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