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じゃぱにーずかるちゃーいずくーる6
しおりを挟む湿地帯をミーちゃんの背に乗って駆け抜ける。
湿地帯の中にいくつかの森があり、色々な生態系が共存するこのダンジョンは素直に凄いと思う。
モンスターを見つけては討伐しながら進み続け、ようやくゴールらしき物が見えてきた。
「明らかにあの洋館がゴールだよな……」
森の中に隠すように館が建てられており、明らかに他とは違う人造物が目の前にあった。
「とにかく、降りて近付くぞ」
「まぁこれで、知性ある者の存在はほぼ確だな」
「千尋ちゃん、用心してね」
「あぁ」
ミーちゃんの背から降りて、洋館に近付く。
見た目は白を基調とした綺麗な外壁、庭に植えられた数々の花、良く分からない近代アートのような置物達。
「館が白くて綺麗だから、あのヘンテコアート達が不気味に感じるな……俺には分からんセンスだ」
「私もああいうゴチャゴチャした色の無駄遣いみたいなアートは好きじゃないなぁ……」
「アート的にはこういうアンバランスが良いんじゃないか?私は意外と面白いと思う」
庭に飾られた様々なアートっぽい物を見物しながらも警戒は怠らない、ここは敵地で本拠地の可能性が高い。
敷地に侵入しても何の反応もないまま、大きな玄関へとたどり着いた。
「罠も無いのか……てっきり、あの不気味なアートが動いて襲い掛かってくると思ってた」
「ふむ……とりあえずはノックするべきか?」
「ごめんくださーい!」
千尋がノックするか迷っている間に、純が大きな声でお伺いを立てる。
「誰か居ませんかー!ごめんくださーい!返事が無ければ勝手にお邪魔しますよー!…………入ろうか!」
ここまで先陣を切って、常に先頭に立っていた千尋が初めて出遅れた。
純のこういう図太さは多少は見習うべきなのだろうか。
返事が無かったので純は扉に手を掛け、扉を開く。
施錠はされていないようで、あっさりと中へと入る事が出来た。
「罠は無さそうだが……」
「意外と中は物が少ないな」
「生活感が無いねぇ……」
玄関ホールには物が殆ど無く、がらんとしていた。
二階建てのようで、玄関ホールの正面には大きな階段、ホールの左右に伸びた廊下、廊下には部屋になっているであろう扉。
「何処から調べる?」
「セオリーだと、一階の廊下の部屋とかじゃない?」
「二階は後回しだな、まずは部屋を見て回ろう」
再び千尋を先頭に右側の廊下にある部屋を調べていく。
一つ目の扉に手を掛け開く、ここも玄関同様に施錠は無くすんなりと扉が開いた。
「何も無い……」
「だな」
「不気味だね……外にはあんなに物が置いてあったのに」
一応罠を警戒しつつ部屋を調べるが何も無い。
備え付けのクローゼットを見ても何も無い。
ここまで何も無いと逆に怖いものがある。
「次に行こう」
その後も部屋を探索していく。
廊下には片側だけで5部屋、右側の廊下にある部屋を全て見たが、何も無かった。
「反対側を調べるぞ」
「うぃー」
「うん……」
反対側の廊下にある部屋も全て調べるが、何も無い。
拍子抜けも良いところだが、かなり不気味なのは間違いない。
「次は二階か……」
階段を上り、下と同様に右側の廊下の部屋から調べていく。
しかし、一階と同様に何も無い。
左側も何も無い。
階段まで戻って、一旦作戦会議。
「何も無いな……」
「無さすぎだよねぇ……流石に?」
そして違和感に気付く。
「……というか部屋しか無くないか、この館?」
「だねぇ……キッチンも無い、トイレも無い、風呂場も無い……そもそも必要が無いのかもね!」
「そんな事あるのか?」
「普通は無いだろう。そもそもとして、部屋の間取りが全て一緒なのもおかしい。普通ここまで大きな館だったら使用人用の狭い部屋があったり、倉庫があったり、用途毎に部屋の間取りを変えるのが一般的だと思うがな」
「それに物が何もないからねぇ……お庭はあんなにも主張が激しいのに」
むしろ違和感しか無かった。
「もうちょっと調べるか?」
「そうだねぇ……地下室とかありそうだけど、何も無かったんだよね」
「隠されてるのかも知れないな」
「とは言っても、隠せる所とか無くないか?」
部屋は全て探索したが何も無かった。
「お庭?」
「まぁその可能性はありそうだけど……ギミック的な?」
「一旦外に出て、庭を調べてみよう」
何も見つけられなかった洋館を出て、前衛的な庭を探索する。
人と人が絡み合って捻じれたような赤と黄色のオブジェ、馬のような胴とその胴から色々な生物の手が生えたカラフルなオブジェ、大きな瞳と鼻が合体したような意味不明なオブジェ、様々なアーティスティックな物を調べるが何も無い。
「マジでここはなんなんだ?」
「案外、ただの時間稼ぎようの思わせぶりな建物だったりしてね!」
「洋館自体が時間稼ぎの罠という事か……あり得るな」
「流石に無いと思いたいけどなぁ」
庭を見回してもオブジェと花しかない。
「……この花って誰が管理してるんだ?」
「綺麗に植えられてるし、かなり手入れしてるのは間違いないよね!」
「何か見落としがあるのか……」
「もう面倒だから、洋館事事吹き飛ばしちゃう?」
純の物騒な発言に驚くが、純が冗談で言ってるのは分かっている。
「おー!それ良いかもな!やっちまおうか!」
冗談には冗談で返すのが円滑な対人関係を生むのだ。
「止めろ!!!馬鹿か!お前らは!さっきから聞いておれば、余の作品を何だと思っておる!!!この侵略者共めが!!!」
「うわー……ヤバイの来たー……」
「すっごい服着てるね!」
「敵か?」
顔はイケメンに分類されるのであろうが、青白いので不健康そうに見える中世の貴族のような各所がヒラヒラした服装の男が洋館から出てきた。
「貴様ら!不当に我がダンジョンを荒らした上に何だ、その言い草は!!!良い加減にしろ!!!さっさと出ていけ!賊共が!!!」
「会話は出来るようだね!」
「貴様……!」
「外に迷惑を掛けた事は分かってんのか?」
「外だと?そんなものは知らん!余には関係無かろうが!」
こういうタイプは意外と面倒だ。
話し合いで解決出来れば良いが、最悪強硬手段で拉致でもしよう。
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