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じゃぱにーずかるちゃーいずくーる5

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 やってきました第4階層。

 洞窟、森、草原と続いて今度は何だと思ったら再びの森。

 森で草原を挟むぐらいなら連続した方が良いんじゃないかと思いつつも千尋の後を必死に追いかける。

「千尋!早い早い!ちょっとペース落としてくれ!」

「むぅ……すまない。少し、焦っていたみたいだ……」

 身体能力はレベルが上がれば少しづつではあるが上昇する。

 俺と千尋のレベル差は今は10ぐらいあって俺の方が高いのだがレベルアップ時の上昇幅には個人差があるらしく、千尋の方が身体能力はかなり高い。

 一般的に身体能力は男の方が高い傾向にあるが、レベルアップの恩恵は男女という性別の差による身体能力の違いという壁をも超える事が可能だ。

「ハァ……ハァ…………ごめんねぇ……ふぅ……拓美君は何とか着いて行けそうなんだけど、私にはこの速度は無理だね……ここからはミーちゃんに乗って移動するよ!」

 純のレベルは千尋と変わらないが、身体能力は俺よりも低い。

 代わりに、魔法関連の能力はずば抜けて高い。

 魔法が得意なエルフのリーダーですら認める魔法の才能を持っているので、恐らく総合的なポテンシャルは俺や千尋よりも高いと思う。

 ミズチナナと名付けた水龍は純の足であり、鎧であり、盾でもあり、矛でもある。

 純の水龍は何でも万能に熟せるが、特に防御面が優れていて、龍の鱗は物理にも魔法にも強く、自身で乗り手を守る術をいくつも備えている。

 移動速度も速く、千尋にも負けない速度で移動が可能であり、宙に浮いているので地形にも左右され辛い。

 大きさも最大値から最小値の間なら変更可能な万能過ぎる純の相棒だ。

「森の中だとあんまり大きく成れないから、千尋ちゃんと拓美君は申し訳無いけど乗せられないけど……これでもう少し速度上げれるよ!」

「あぁ」

「りょーかい……」

 純が乗れるギリギリのサイズになったミーちゃんの背中に乗って、ミーちゃんの立派な角を握りしめながら速度上げを提案した。

 正直こうなると俺がキツイ。

 体力的には疲労する事が無いので、良いのだが速度的に置いて行かれる可能性がある。

 だがそんな事も言ってられない状況なので何とか了承する。

「では、行くぞ!」

 千尋の合図と共に再び走り出す。

 優雅に水龍に乗りながら移動砲台よろしく、遠くに居るモンスターを魔法で討伐しながら移動する純の後を必死に追いかける俺。

 千尋も本気を出せば剣精に乗りながら移動出来るので、俺も何か乗り物か騎乗出来る生き物が欲しい。


 ☆ ☆ ☆


 森をサクッと抜けると今度は湿地帯のような場所に変わった。

 今までとは違って単一の環境ではなく、複数の環境が再現されているようで、広さも上の階層よりも広いと見て良いだろう。

「……これはミーちゃんの出番かな?」

「頼む」

「剣精に乗って進めない事も無いが、かなり疲れるのでな……私もミーちゃんに乗せてくれ」

「おっけー!ミーちゃん、お願いね!」

 純がお願いすると大きくなるミーちゃん。

 森とは違って邪魔な木々が無いのでミーちゃんに乗れば湿地帯で足を取られる事も無いので安全に進むことが出来そうだ。

 ミーちゃんに乗って、移動開始。

 下に居るカエル型や様々な虫型のモンスターを純が魔法で倒しながら、こちらに向かって飛んでくる鳥型のモンスターは千尋が剣精で切り刻むので俺は本当に何もする事が無いまま広い湿地帯ゾーンを進んで行く。

「暇だな……しかし、この湿地帯は何処まで続いてるんだ?流石に広すぎるだろ……」

 ミーちゃんの背中の最後尾で千尋の腰に手を回しながら愚痴る俺、最高にニートですありがとうございます。

「確かに……逆を言えばここはそれ程重要な階層という事なのかもしれないがな」

「この湿地帯がか?」

「湿地帯というのは生き物にとっては楽園のような場所だろう。肥えた土地、豊富な水、餌に困る事も無く繁殖するには丁度良い環境なんだろう」

「なるほどなぁ……」

 実際このフィールドはモンスターも多い。

 主に虫型と鳥型のモンスターばかりだが、こういうタイプのモンスターを育てるには適しているのだろう。

「湿地帯の前にあった森も、鳥型や獣型の為に作ってるのかもしれないな。この階層だけでもここのダンジョンに知性ある者が居る可能性は高くなったな……気を引き締めた方が良さそうだ」

 ダンジョンの環境作りは非常に難しいというのはベルを見ていれば分かる。

 怠惰ダンジョンはベルの手によって各種生物が生息、繁殖しやすいように考えられて作られているが、他のダンジョンではあまりそういう作りのダンジョンには出会った事が無い。

 あっても森オンリーだったり、単一の環境は再現しているがここのダンジョンのように複数の環境を再現しているのは見たことが無い。

 森の中に小さな泉があったりはするが、ここ程広大な複数の環境が揃っているダンジョンは無い。

 より多くの環境を用意すればより多くの種類の生物、モンスターを育てることが可能となり食物連鎖が正常に働くというものだ。

 ここのダンジョンは普通じゃない。

 



















「知性ある者が居たら千尋ならどうする?」

「無論、まずは対話を試みるさ。対話が出来なければ斬るし、対話が可能でもこちらと意見が違えば斬る……既に被害が出た後だ、情け容赦はしない」

 何とも恰好良いお言葉が帰ってきて、更に惚れ直した。

 確かに千尋の意見は間違ってはいないと思う。

 それでも俺は千尋の意見には賛同できない。

 どんな手を使ってでも知性ある者を救いたい。

 世の中に俺みたいな考えを持った馬鹿が一人ぐらい居ても良いんじゃないかと思ってるから。

「エルフだったら良いなぁ……」






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