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しふくの時と言われても21
しおりを挟む今日も朝食を食べて日課を熟す。
美奈は昨日遅くまで起きていたようで、朝食の席には居なかった。
自分の今後を左右するかもしれない加護を選ぶというのはそれだけ悩む必要がある事なのだろう。
俺は元から加護を持っていたので美奈の悩みは、俺には本当の意味では理解出来ない。
どちらを選んだにせよ、後悔の無い選択であって欲しい。
美奈が起きて来たら少し詳しい事を聞いてみよう。
☆ ☆ ☆
「おはよう……」
「おはよう、もう昼だけどな」
日課を熟して家に戻ると美奈が居間でコーヒーを飲んでいた。
まだ眠いのか瞼が開き切っていない。
いつもの席に座って英美里のご飯を待つ。
「加護は決めたのか?」
雑談的に加護の事を聞く。
「決めた、というか取った……福の神に肖る事にした」
「そうか」
「うん……」
「後で色々加護についてベルに話を聞いてみると良いよ、ベルなら分からない事でも調べてくれたりするから」
「分かった……」
「まだ自分でも良く分かって無い事もあるだろうから、色々と検証とかしてある程度加護について分かったら俺にも教えてくれ」
「そのつもり」
「うん」
その後はベルも合流して4人でお昼ご飯を食べた。
千尋と純は今日も忙しい。
ダンジョン攻略に後進の育成、冒険者協会の運営管理、PCHとの連絡相談交渉、嫁達の仕事は日に日に増えている気がする。
☆ ☆ ☆
英美里と美奈はレベリングに向かい、俺はベルと今日もスライム階層の制作に勤しんでいる。
俺がやる事はベルが傲慢ダンジョンで生成したスライムを箱に詰めてひたすらピストン輸送するだけ。
スライムの見回りと間引きに関しては俺はもう諦めた、何か起きたとしてもベルが最悪何とかしてくれるので俺は気楽で良い。
何度も運んで移動するスライムを眺めていると段々とスライムに愛着の様なものが芽生えてくる。
ベルが生成しているのは基本となるスライムで、属性や色の無い無色のスライム。
こいつらがあらゆる環境で進化や変化をする事で多種多様なスライムになる。
周辺温度が高い地域や火山付近ではレッドスライム、水が多い地域や水場ではブルースライム、草木が多い地域ではグリーンスライムという風な具合でスライムというのは環境に合わせて色々なスライムに進化、変化していく不思議生物でもある。
モンスターの中でも種類が豊富で環境次第では新たなスライムになる事もあるので、今後怠惰ダンジョンでもスライムの研究をしたいとベルが言っていた。
スライムには無限の可能性があるらしい。
俺には難しい事は分からないが、レベリングの為にかなりの種類のスライムと戦って来たので侮れない種族であるのは良く分かっている。
魔法を使うスライム、単純に固いスライム、特殊なスキルを持っているスライム、俊敏なスライム、挙げればキリが無い程に多くのスライムと戦って来た。
怠惰ダンジョンを支えてきた影の功労者であるスライム。
「元気に育てよ……」
そんなスライムを今日も大量に解き放ち、何処に向かうのかを何となく見つめて癒される。
「もしもスライムに知能が芽生えたらもう殺せないかもしれないな……」
スライムは知能を有しない。
あらゆる進化と変化をするスライムだが、共通しているのは知能が無い事だ。
あり得ないと思いつつもスライムが知性に目覚めてしまう事を想像してしまう。
もしもスライムと会話出来たら俺はもうスライム狩りが出来なくなりそうだ。
☆ ☆ ☆
スライムの運搬作業を定時まで行って、夕食まで暫しの自由時間。
アバターでしか動いてないので肉体的な疲労は皆無だが、同じ作業の繰り返しのせいで精神的に多少は疲労していたのかアバターの操作を解除した途端に眠気が襲って来た。
「飯まで寝るか……」
いつもなら夕食まではゲームやってる事が多いのだが、偶には眠気に身を委ねても罰は当たらないだろうと布団に寝転がり目を閉じる。
夢なのかそれとも思考が良く分からない所に飛んでいるのか分からない状態が続き、何時の間にか意識が遠のいた。
沢山のスライムに囲まれている夢を見ている。
その中で俺に必死に何かを伝えようとスライムが居た。
スライムには知能が無い筈なのに、意思を感じる。
これは夢。
あり得ない事もあり得る。
「ご主人様!」
体を揺さぶられる感触と英美里の声で目が覚める。
「ご飯の用意が出来ました!」
「あぁ……今行く」
何か夢を見ていた、でも思い出せない。
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