怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

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しふくの時と言われても20

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 美奈は無事にダンジョンを攻略して帰って来た。

 これで美奈もG-SHOPが使用可能になった。

 そして部屋で一人、美奈が来るのを待っている。

「兄さん、来たわ」

「おう!入ってくれ!」

 扉の向こうから美奈の声がして返事を返した。

 美奈が俺の声を聞いて部屋へと入って来た。

 俺はまだ詳しい事は聞いていない、美奈がどのような加護を取得出来るのか、どのようなスキルを獲出来るのかを。

「まぁ、座れよ」

「ありがと……」

 部屋にはベルと英美里と一緒にアニメを見るように用意した座椅子があるので美奈を座椅子へと誘った。

 美奈が座椅子に腰掛けた事を確認してから口を開く。

「それで、ダンジョンはどうだった?」

「千尋さん達も一緒だったから恐怖は無かった、でもスライム意外のモンスターに襲われて、倒して……良い気分とは言えない。そんな感じかな……でも思ってたよりも忌避観とか嫌悪感は感じなかった……でもそれが逆に怖い」

 生物をモンスターを恐らくゴブリンを殺した時に感じる嫌悪感というのは俺もそうだったがあまり感じなかったようだ。

 だがそれが逆に怖いと美奈は言った。

 生物の死にあまり慣れていない人ならば感じると思っていた筈の忌避観や嫌悪感があまりに希薄過ぎて自分自身が恐くなったのだろう。

「自分が思ってたよりも自分の心が冷たいと感じたからか?」

「……そんな感じ」

「まるで自分の方がモンスターになったみたいな感覚?」

「……うん、自分で自分が恐くなる。このままだといつか自分が化物にでもなってしまいそうで怖い……」

 生物を殺しても何も感じなくなるのが怖い、死に慣れるのが怖い、それは人として当たり前の感情だと思う。

 その想いが薄れない限りは大丈夫だと思うが、人は慣れる生き物だからいつか心をすり減らしてしまった時に自分が自分で無くなる事に怯えてしまう。

「それじゃぁ今後、もう何も殺さなければ良い。それで解決!」

 この先も自分が命を奪う事を前提で考えるから怖いし、立ち止まりたくなってしまう。

「……」

 掛ける言葉を間違えたのかもしれない。

 睨みつけられてしまった。

「兄さん……そういう冗談は辞めて、この先何が起こるか分からない状況で自分に戦える力と強くなる為に必要な環境が充分に整っている私が立ち止まれる訳が無いでしょ」

「えぇ……」

「こういう時は、一緒に頑張ろうとか、一緒に乗り越えようとか言って欲しいの!はぁ……兄さんがそんなじゃ千尋さん達が可哀そうよ」

 俺は何故、妹にダメ出しを食らっているのだろうか。

 そんなに悪い事を言ったつもりも無いのだが。

 大体が妹に掛ける言葉と、嫁に掛ける言葉では大きな違いがある。

「……千尋に何か言われたのか?」

「だとしたら何?」

「いや、別に……」

「はぁ……」

 何か言われたんだろうな。

 しかし、何を言われてこんな事を言いだしたのかは分からないが、美奈はそんなに悩んでないって事なのだろうか。

「えぇと……一緒に頑張ろうな?」

「もうその話は終わってる。そもそも私には不退転っていうスキルがあるんだから、そのスキルの影響で平気だったんだと思ってるわ。……ここからが本題、今日私も晴れてダンジョン攻略者になった訳だけど、私の加護について相談しようと思って来たの……千尋さんに相談したら兄さんかベルさんに相談した方が良いって言われたから」

 明らかに不機嫌な美奈、もしかしてだが美奈は俺に嫉妬しているのだろうか。

 美奈は昔から千尋の事が大好きで、本当の姉のように慕っていたからなぁ。

「なるほどねぇ……ベルも呼んだ方が良いか?」

「とりあえずは兄さんに相談して駄目だったらベルさんに相談するわ……」

「りょーかい……」

 俺が了承すると息を吸い込み意を決した顔で美奈は口を開いた。

「私が取得出来る加護は二つ。一つは服神、もう一つは福神。私はどっちの加護を得るべきか迷ってるの……加護の善し悪しがあるのかは分からないけど、出来る事なら有益な方を選択したい。兄さんはどう思う?」

 美奈が机の上にあった紙とペンで服神、福神と書きながら教えてくれた。

 客観的に見て、有益そうなのは福神っぽい。

 そもそも服神とは何だ。

 衣服を司る神なのか、それとも別の何かなのか。

 俺達が日常的に使っているのは衣服の<服>で身に着ける物という意味だ。

 だが他にも服従、感服、屈服、敬服、心服、征服、不服、等々服の付く単語は多くあって、従う或いは従わせるといった意味合いを持つ言葉でもある。

 判断が難しい所ではあるが、ただ何となく良い事が起きそうな福神の方が良いんじゃないかと俺は思う。

「福の神からの加護の方が良い事ありそうだから、福神で良いんじゃない?」

 俺は紙に書いてあった福神の方を指差しながら答えた。

「そんな適当に……」

「どうせどっちが良いかとか分かんないんだったら、良い事がありそうな方を選べば良いじゃん」

「まぁ……確かにね」

「だろ?難しく考え過ぎなんじゃないか?確かに加護は大事だし、選べるのならより良い方を選びたいけど、結局結果が出ないとどっちが良かったかなんて分からないんだから」

「ちょっと頭がすっきりした……ありがと。明日までには加護を取っておくから、もう少しだけ考えてから取るよ……おやすみ」

「おぅ!おやすみ!」

 美奈が部屋から出ていくのを黙って見送る。

 俺が美奈だったらどっちを選んだだろうか。






















 俺が美奈だったら、多分服神を選んだと思う。

 福神の加護を取っても運が良くなるとは思えないし、福の神何ていう存在を俺は恨まずには居られないから。

「止まってる車に車が突っ込んでくる確立ってどんくらいあるんだろうな……」

 偶々居眠りをしていた人が運転している車の側で止まっていただけ、運が悪かった。

 ただそれだけ。

 

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