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しふくの時と言われても18
しおりを挟む妹が帰ってきてこっちで暮らすようになってから3日経った。
美奈は順調に自身のスキルである色欲についての理解を深め、中国に派遣されていた冒険者協会とPCHの面々も無事に日本に帰宅する事が出来た。
相変わらず世界中でリーダー達の事や中国ダンジョン、千尋の事で賑わっているが俺達の暮らしは変わらず平和そのものだ。
千尋達は交代制でダンジョン攻略とガッシュ所での指導を行ってくれている。
今は地元である大分を中心にダンジョン攻略をしていっているが、もうそろそろ九州全土のダンジョン攻略もして行こうと思っている。
「兄さん、私もそろそろダンジョン攻略者になりたいんだけど」
「レベルも大分上がったし、そろそろ良いかもな……明日にでも千尋に着いて行ってダンジョン攻略してこいよ」
部屋でまったり午後の自由時間を謳歌しながら美奈の要望を聞き入れた。
美奈が自主的に動いているのならば俺はなるべく美奈に賛同してやりたい。
美奈に対する俺の信頼もあるが、何よりも色欲というスキルの凶悪さに対する信頼が高いから許せる事でもある。
「ありがとう。今晩千尋さんが帰ってきたら明日の事を聞いてみる」
はっきり言って色欲はヤバイ。
俺の怠惰も大概ヤバイ代物だけど、色欲も大概だ。
大罪に関するスキルはヤバイ物しかないという認識で間違いないと思う。
怠惰と色欲は俺と美奈が所持しているが、残りの大罪は少なくとも5つある計算になる。
ベル曰く、大罪スキルはユニークスキルに該当するらしく所持できるのは限定1名様の特別仕様らしいが実際の所はまだ分からない。
もしかしたら俺達以外にも同一の大罪スキルを持った者が居るかもしれないという風に考えておいた方が良いだろう。
そして残りの大罪スキルが傲慢、憤怒、強欲、嫉妬、暴食の5つだが、何れにせよ大罪スキル持ちとは出来るだけ敵対はしたく無い。
敵対した場合の被害や損害はどれ程のものになるか考えたくも無いが、考慮しておくべきなのは間違いない。
大罪スキル持ちの俺達兄妹が協力出来る関係だったのは本当に幸運としか言いようが無い。
「スキルに頼らない戦闘方法もある程度固まって来たみたいだから大丈夫だとは思うけど、ダンジョンでは千尋の言う事には従って動けよ?」
「分かってる!」
美奈の戦闘方法は今の所高い魔力量を活かしての魔法銃と色欲のスキル頼みではあるが、この二つがあれば大抵の敵には後れを取る事は無いだろう。
色欲による思考誘導、幻惑、触れた相手に刻印を刻めば相手の能力を自身に上乗せ、これだけでもかなり凶悪だが色欲の解放と色欲の魔眼のコンボがマジでヤバイ。
発動さえしてしまえば石化して相手を無力化出来るという理不尽使用なので色欲がある生物に対しては無類の強さを発揮する。
スキルの使用範囲もかなり広く、美奈が対象を認識さえ出来ていれば範囲は怠惰ダンジョン内であれば可能だった。
カメラ越しでもスキルの使用が可能だったと分かった時は戦慄した。
ただし、欠点が無いという訳でも無い。
色欲のスキルは1つの能力につき、一回の発動で対象を一つしか指定出来ないので多人数で来られるとどうしてもタイムラグが起こってしまう。
次から次に能力の対象を変えて複数の対象に同一の能力を発動する事は出来るが、戦闘中は対象の切り替えの間の一瞬のラグが致命的にも成り得る。
後は俺の怠惰と違って色欲にはデメリットが無い、だからかは分からないが怠惰と違って所謂パッシブ系の能力が絶倫しかない
、つまり基本的にアクティブ系の能力しかないという事だ。
「強力なスキルも結局は使う本人の資質次第だから油断だけはするなよ?」
「大丈夫、兄さんとは出来が違うから」
「そうだったな……」
「……休憩終了。またレベリングに戻るから、また後でね」
「おぅ、頑張れよ」
美奈が俺の部屋から出て行った、家に帰ってきてからの美奈は毎日楽しそうで何よりだ。
レベルのおかげで確実に成長を実感出来るので、楽しくて仕方が無いと言っていたので兄としては喜ばしい限りだ。
☆ ☆ ☆
人が増えて大分手狭になって来た我が家の食卓、食後のコーヒーを飲みながら千尋と美奈が明日の予定の話をしているのを横で黙って聞いている。
「ダンジョンまでは車で移動、出発は明日の朝道場から。ダンジョン攻略に向かうメンバーは私、リーダー、番長、美奈の4人だ。ダンジョン攻略中は私達の支持には絶対に従う事、モンスターを見つけても一人で突っ走らない事。良いね?」
「はい!」
「まぁ、残りは明日のダンジョン攻略の合間にでも色々と教えていくからあんまり身構えないようにね」
「明日はよろしくお願いします!」
明日は妹の初ダンジョン攻略だ。
心配で明日は色々と集中できそうに無い。
「サブキャラでこっそり着いて行くか……」
「バレない訳が無いだろう……」
別にバレても問題は無いのでいっその事堂々と着いて行った方が良いかもしれない。
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