怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

文字の大きさ
上 下
82 / 155

夢を追うもの笑うもの9

しおりを挟む

 我が家へと戻り美味しい晩御飯を堪能してから、お嫁ーずから報告を受ける。

「今日は超常現象対策本部からやっと連絡が来てさ、近いうちに会ってお話しませんかって感じだったんだけど……良いよね、会っても?」

 純からの突然の報告。
 PCHからの連絡は思っていたよりも遅かったが、これで彼方様も本腰を入れてくる事だろう。俺達が世間に流した情報の真偽をどうにか確かめようとしたが上手くいかなかったんだとは思うが、それにしても腰が重かったと感じる。日本のトップである、あの男がここまで慎重な動きをしたというのが俺的にはどうも気掛かりだ。

「勿論。当初の目的を果たす為にもPCHとの繋がりは出来るだけ強くしときたいし。にしても予想とは裏腹にPCH側の動きが遅かったのが気掛かりだけど……何か知ってる?」

 気になった事は情報を共有するという意味でも聞いておいた方が良い。俺よりも優秀な頭脳を持った嫁なのだ、頼る事に対して何の抵抗も無い。

「んー、知ってる事は特に無いけど……私の予想としては、内部分裂かコッチに話しを聞く前に情報の真偽を確かめていたのかって所かな。何にしても多分くだらない理由で初動が遅れたんじゃないかと思うよ!冒険者協会とかいう訳の分からないニュービーに後れを取ってたら、国営団体としての威厳も何も無いしね!」

 それでも俺達の齎した情報の凄さや大事さは向こうも理解している筈だ、その上で遅れを取るというのがどれ程馬鹿げているかは安相さんなら分かっていると思うのだが。

「まぁ多少想定とは違ったけど、これで本格的にダンジョンの情報をPCHに流す事が出来るな」

 俺達だけが知っているダンジョンの情報は多岐に渡る。
 この情報を渡すだけでも生活には困らない程度にはお金を得られるのかもしれないが俺達には必要無い。お金自体は必要だが、情報をお金に換えるよりも情報を世間に広める事の方が大事というだけなのだ。

「それで、今日も面接したんだろ?良さそうな人居た?」

「うーん……一人だけ面白そうな人は居たかな!まぁ千尋ちゃんの推しなんだけど!私的にはどうかなぁって感じ!」

 今日の冒険者協会の面接は千尋も参加したそうだ。
 ダンジョンの攻略は進めていきたいのだが、新人をダンジョン攻略者にする為にも候補地は確保したままにする方が望ましい。

「彼女には何か光る物があると感じた!まぁこれは私の直感でしかないがな。彼女の家庭環境的にも私は冒険者協会へ迎え入れたいと思うんだ」

「千尋の直感の事は置いといて……家庭環境に何か問題を抱えてる感じか?」

「あぁ。彼女に聞いただけの話しだから、まだ確定はしていないが……義理の父親に少し問題があるらしい、彼女自身は今年大学に入学したのをきっかけに家から出る為に家を借りようとしたらしいんだが義父に保証人を断られたらしくてな……母親も義父の言う事には異論は無いという話しだ。彼女は大学入学を期に一人で暮らす為に数々のバイトをしてお金を貯めていたらしいんだが、親以外では保証人に宛が無いという話しだし、出来れば協力してやりたいと思うんだ」

 又聞きでしかないので何とも言えないが、自立して自活出来るだけの能力があるのなら親御さんの元を離れるのは良い事だと思う。
 ただこの話で問題なのはこの義理の父親から彼女が逃げたいと思っている所だろう。義父に何か問題があるという事は聞いたが具体的な事は聞いてないので何とも言えない。

「義父に何か問題があるって話だけど、具体的に聞いても良いか?」

「彼女曰く、性的な虐待を受けているという事だ。母親が再婚したのが彼女が高校2年生の時らしくてな、その時から色々されているらしい、まだレイプには至って無いが時間の問題だと彼女は言っていた。実際、母親が居ない時には執拗に体を触られたりしているみたいだ。家庭内が一番危険といいうのはどれだけのストレスなのか……私はどうにか彼女を救いたい」

 彼女は身の危険に怯えながら毎日過ごしている。
 家庭という本来であれば一番安らげる場所で。

「聞いた話だけで判断するなら、俺は賛成だな。どうにかして助けてやりたい」

「私も話が本当なら助けてあげたいけど……冒険者にするのは違う気がする!彼女なら冒険者にならなくても、住む所さえ用意してあげられたら普通に生活出来ると思うしね」

「私は彼女を冒険者にしたいと思ってる。直感の事もあるが、彼女自身が強くなれば義父に怯える事も無くなる。これまで受けた恐怖やトラウマを払拭出来る機会を与えてあげたい」

 どちらの意見も正しいと思う。
 俺達三人の票が割れているのなら、結局最後は本人の意思次第だろう。


「まぁ……身辺調査と最終面接するって事で良いんじゃないか?出来るだけ早めに」

「あぁ」「そうだね!」


 ダンジョンを攻略する為の存在である冒険者というのは危険が付き纏う職業だ。出来るだけ危険を排除し、俺達も全力でサポートはするが、それでも確率はゼロにはならない。

 俺達自身もまた、死の危険を伴うのだ。
 覚悟と信念が無ければ務まらないと思う。

 けれど、今のこの状況では最初から覚悟と信念がある人なんて極僅かなのも事実だ。
 だとすれば覚悟と信念を持つように俺達で育てる方が効率が良い。後進を育てる事が出来なければ日本はダンジョンとモンスターによって埋め尽くされるのは間違いないのだから。

 若者を死地へ向かわせるというのは気分の良いものじゃない、若者に覚悟と信念植え付けるのもそうだ。けれど誰かがやらなくてはならない、嫌でも多少の犠牲の上でこの世界は成り立っているという事を再認識させられてしまう。







「そういえば、彼女の名前は?」

 ふと気付く、今まで誰も彼女の名前を呼んでいない事に。

「彼女の名前は……」

「名前は?」




































「岩藤幸子だ」
「いわふじさちこ……なるほど、ありがとう」

 こう言っては失礼かもしれないが、幸子という名前の人はどうにも幸が薄い人のイメージがある。
「幸子って人は幸が薄いイメージあるよね!」
「それ、本人に言うなよ?」
 念の為釘を刺しておく、純は意外と良識やデリカシーというものが無かったりするから



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...