怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

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世界が変わっても人間そんなに変わらない9

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 悲しそうな顔でこちらを見つめる君の姿を見て心が痛む。
 だけど分かって欲しい、こればっかりはしょうがないんだ。
 俺の力ではどうにも出来ない事がある。
 出来る事なら一緒にやりたい、でも無理なんだ。
 


「俺が持ってるパソコンは一台しか無いんだ……」


 ☆ ☆ ☆

 英美里のお願いを無慈悲にも断る。
「すまないな……俺も一緒にネトゲしたいんだが、そもそも物理的に不可能なんだよ」
「ですがもう一台別の部屋にもありますよね?」
 恐らく俺が以前仕事で使用していたノートパソコンの事を言っているのだろうがあれではスペック的に無理があるし、今は妹の所有物だ。
「あのパソコンじゃネトゲするにはスペック不足だし、妹にあげちゃったから俺が触って良いものでも無いから。ごめんな」

「それでは致し方ありませんね、ベル様になんとか出来ないか聞いてみます!」
 英美里にネトゲが一緒に出来ない事を説明するが諦める気は無いようで、もはやお助けキャラと化しているベルに相談するらしい。
「ベルに言ってもどうしようも無い気がするんだが……」

 暫く黙っていると念話が終わったのか懇願するようにこちらを見つめてくる。
「……ご主人様、ベル様にパソコンをお貸しすることは出来ませんか?」
「嫌だけど……理由は?」
「ベル様がパソコンを解析すればDPを使ってパソコンを作れるかもしれないと……駄目ですか?」
 まさかのパソコン作れる発言に驚くがもしも壊れてしまえば俺は発狂しかねないので詳しい話をベルに聞いてみることにした。
「ベルに念話するからちょっと待ってて」

『ベルー!』
『はい、マスター。パソコンの件ですよね?』
『そうそう、作れるかもしれないって本当か?壊れたりしない?』
『はい、マスター。可能性は大いにあります!ですが壊れる可能性も十分にあります、ですのでマスターが使用している物で無くても良いので壊れても良いパソコンが欲しいのですが……無理ですか?』
 壊れる可能性があるのならパソコンは渡せない、ましてや壊れても良いパソコンなんかうちにあるはずもない。
『残念だが無いな』
『ですがマスター』
 食い気味にベルが喋りかけてくる。
『成功すれば科学と魔法の融合した世界初のハイスペックマシンが出来るかもしれませんよ!』
 科学と魔法の融合という言葉に俺の中の何かが刺激されていた。
『詳しく聞こうか』
『はい!マスター!現段階では不可能ですが、物作りの達人であるドワーフを生成すれば魔法のエキスパートのエルフと協力して開発出来る可能性はあります!』
 ドワーフ、イメージではずんぐりむっくりで毛むくじゃらな鍛冶の得意な種族ではあるが外見は似たものは作れるかも知れないが中身に関しては無理そうな気がする。
『見た目が似ている物が作れても意味は無いぞ?』
 その言葉を待っていたと言わんばかりにベルが再び喋り出す。
『そこで!中身の問題を解決するべくドワーフともう一体生成したい者が居るのです!それが知識特化型悪魔<ラーニングデビル>です!ラーニングデビルに習得させたいものを指定すればその分野に特化した者を育成できます!』
『ラーニングデビルってどんな奴なの?語感から察するに何かを学習する悪魔って事なんだろうけど』
 聞いたことも無い悪魔について詳しく問いただす。
『ラーニングデビルは知識特化の悪魔で、指定した分野のみを探求する大分変った悪魔です!ですがその探求心はどんな悪魔よりも貪欲ですよ!欠点としては1つの分野以外の事には無力な事と戦闘力は皆無な事、完全上位互換にインテリジェントデビルが居ることですね!どうでしょう?』
 ラーニングデビルの説明を聞いて良さそうだと思っていたらまさかの上位互換の悪魔が存在すると聞いてむしろインテリジェントデビルの方が気になってしまった。
『インテリ悪魔の方が良いんじゃ無いの?』
『いいえ、マスター。ラーニングデビルは小型で安価ですがインテリジェントデビルは人型で高価ですから!』
 なぜか頑なにラーニングデビルを推してくるベルに違和感を覚えた。
『何故わざわざ下位互換を生成するんだ?DPはこれからもっと効率良く稼げるようになるんだから、DPに余裕が出来てからインテリ悪魔を生成した方が良くないか?別に今すぐパソコンが必要な訳でも無いし』
 バツが悪そうにベルが返答する。
『……確かにマスターの言う事は正しいかもしれませんが、インテリジェントデビルは危険も孕んでいます。頭が良いという事はそれだけで危険な存在でもあります!なによりも……女性しか存在しないのが問題です!これ以上女性ばかり増やしてどうするのですか!女を侍らせてハーレムでも形成するつもりですか!それはそれで良いですけど……私はラーニングデビルで良いと思います!ラーニングデビルであれば今日から学習を開始させて明日にはドワーフを生成すれば早ければ明後日にはパソコンが出来るかもしれませんからね!それでもマスターはインテリ悪魔風情の方が良いですか?選んでください!』
 途中ボルテージが上がってきたのか早口で捲し立てるように言葉を紡ぐベルにどちらを選ぶのかと問われ俺は悩む。
 確かに今の状況を早急に解決するならラーニングだが、今後を見据えるならばインテリに軍配が上がるだろう。
 ベルの気持ちも分かっているつもりだ、あれだけ英美里に釘を刺されたのだから、俺ももうすぐ三十路を迎える年齢だしそのぐらい察する事はできる、ベルの気持ちも考慮に入れて俺は決断してベルに伝える。

『先に誤解の無いように言っておく、俺は別にハーレムを形成したいなんて1ミリも考えて無いしそのつもりも今の所は無い、でも今後を考えたらやっぱりインテリの方が良いと思うんだ。これから先この<怠惰ダンジョン>はベル主導で大きくなっていくと思う、でもその場合ベルの片腕というか秘書みたいな存在は必ず必要だと思う。俺には英美里が居るけどベルには英美里のような存在が居ない、これはとても危険だ。リスク回避も兼ねてインテリをベルの側近としても徴用するのが最善だと俺は考えてる、俺は<怠惰ダンジョン>と家族を失いたく無い!だからインテリにしようベル!』

 俺の考えをベルに伝えた、俺は家族が居なくなるのが嫌だ。
 家族を守る為の決断を俺は下せたと思う。
 別にインテリ悪魔が気になるとか見てみたいとかそんな邪な思いなど俺には全く無い。
 純粋に<怠惰ダンジョン>の事を考えての事だ、女性型の悪魔なら色っぽいだろうとかエッチな服が似合いそうとかそんな事は考えても居なかった、ただベルがハーレムがどうだとか言うからちょっと妄想してしまっただけで俺は最初から最後まで皆の事を考えてインテリ悪魔が良いと判断した。
 この決断に間違いは無いと確信している。

『はい、マスター。わかりました……DPに余裕が出来次第インテリジェントデビルを生成して、ドワーフとエルフの協力のもと科学と魔法の融合したパソコンを作らせます!マスターがこんなにも私達の事を考えているのに……私は少し恥ずかしいです、でもこれからは気持ちを入れ替えて私情を抜きにして<怠惰ダンジョン>が良くなるように最善を尽くしていきます!ではまた、マスター期待していて下さい!』

 少しの罪悪感を感じつつも俺は俺の出来る最善を尽くしたと今後に期待しながら念話を終えた。




「期待は膨らむばかりだな……フフフ!」

「ご主人様!それで……どうなりましたか?」
 急に話しかけられて驚きつつも不安そうな顔でこちらを見てくる英美里に返事を返す。
「今すぐには無理だけど、DPに余裕が出来たらパソコン作ってもらう事にしたよ!」
「……パソコンはお貸し頂けるという事ですか?」
「……忘れてた」
 英美里の言葉で本来の目的を思い出す、この手は使いたく無かったがしょうがないと思い携帯電話に手を伸ばしメッセージを送る。

(俺が上げたノートPCまだ使う?要らないなら貰って良い?)
 妹に上げたものを貰うのは気が引けるが現状取れる手段は限られているので恥を忍んで妹に頼んだ。

 すぐに既読になり返事が返ってくる。
(良いよ)
 我が妹ながら相変わらず簡素なメッセージで安心するもいつもこんなに早い返信で仕事は大丈夫なのかとも思う、だがこれで壊れても良いPCは準備できた。

「良し!妹の部屋にあるノートパソコンを貰ったから、あれをベルに渡そう!」
「では!あのパソコンをベル様の所へ持っていきますね!」
 明るい笑顔で妹の部屋に行こうとする英美里を引き留める。
「今すぐ持って行ってもまだ必要無いと思うから必要になるまで英美里が預かっててくれれば良いから」
「承知しました!ではベル様に連絡しておきますね!」
 とても嬉しそうに部屋を出る英美里の後ろ姿を見送り、今日もネトゲを起動する。




「インテリ悪魔……むふふふ」


 ☆ ☆ ☆

 気が付けば昼を過ぎていた、そろそろお腹も空いてきたのでご飯でも食べようと居間へと向かう。

「はぁ……癒されますね……」
 居間にはうっとり顔でノートPCを見つめる英美里が居て、こちらに気付いたのか声を掛けてきた。
「お昼にしますか?」
「うん、もう作ってあるの?」
 何を見ていたのか気になって何気ない感じで隣の席に向かうがパタンとノートPCを閉じられてしまう。
「すぐに用意しますね!」
 言いながらノートPCを影に仕舞う。

「なに見てたの?」
 どうしても気になり英美里に問いかけた。
「何も見ていませんよ!」
 とても良い笑顔であまりにも平然と嘘をつかれて困惑するがこういう時は引き下がった方が良いと勘が囁いてくる。
「そっか……今日は何を作ってくれたんだ?」
 すかさず話題を変えた、何も聞いてはいけないと追及するなと無言の圧を俺の体は確かに感じていた。

「今日はドリアにしました!沢山召し上がってくださいね!」

 ドリアと聞いてそういえば最近ファミレス行って無いなと思いながら、感謝の言葉を口にする。
「楽しみだよありがとう!」





 女性は案外怖いという事を不意に思い出し、インテリ悪魔で本当に良かったのかと若干後悔しながらドリアの到着を待った。


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